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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
1026/1032

この世の果てで愛を唄う少女

『まだ…諦めないで…』



その声ははっきりと俺の心に届いた。



何故だろうか?



理由は分からないが、

幻聴ではないはずだ。



とても懐かしくて、

決して忘れてはいけない声。



心の中に直接届いた声を聞いた瞬間に、

止めどなく涙が溢れ出てしまっていた。



「この声は…翔子なのか…っ!?」



必死に呼び掛けてみたからだろうか?



心に届く声が俺に応えてくれた。



『ねえ、総魔。総魔は最後まで諦めたりしないよね?だって…だって総魔はとっても強いから…。力だけじゃなくて、心もとっても強いから…。だから総魔は諦めないよね?』



………。



何かを伝えようとする翔子の声に、

俺はどう応えるべきなのだろうか?



何が正解かは分からない。


だが答えるべき言葉は分かっているつもりだ。



「もちろん諦めるつもりはない。」



最期まで諦めはしない。



例えどれほど困難だとしても。


ここまで来て簡単に諦めてしまえるような立場ではないからだ。



現に不可能と思えるような現状でも、

手を止めるような行動はしていないからな。



「諦められるわけがない。最後の最後で無理だったとは言えないだろう?」



ここへ来るまでに多くの犠牲を出してきたのだ。



それなのに。


何も出来なかったなどと言えるわけがない。



…そうは思うのだが。



俺がどう思うかに関係なく、

目の前の現実は変えられない。



最後まで死力を尽くしても叶わない願いは在る。



「翔子…お前を守れなかったように、俺にも出来ないことがある。」



諦めるつもりはない。


最後まで足掻くつもりではいる。



…それでも。



出来ないことは出来ないと答えるしかなかった。



そんな俺に…翔子は優しく囁いてくれていた。



『大丈夫だよ、総魔。信じてさえいれば願いは必ず叶うから…。だから大丈夫。だって…だって総魔には沢山の仲間がいるんだから…。だから、ね。大丈夫なんだよ。』



…仲間?



それがどういう意味なのかを問いかけるよりも先に…別の声が俺に届いてきた。



『ったく…情けねえな、総魔。お前がやらねえで誰が共和国を守るんだ?せっかく俺が命懸けでお前達を守ってやったってのに、ここまで来て弱気なことを言ってんじゃねえぜ!』



…この声は?



新たに話しかけてきたのは…?



「北条…なのか?」



『ああ?当然だろ?ったく、不甲斐ないお前に俺達が力を貸してやるって言ってんだ。だから最後まで諦めるんじゃねえぜ?』



…力を貸す?



その意味さえ理解できない俺に更なる想いが届く。



『…天城君…。』



今度は沙織の声だった。



「沙織か…?」


『ええ…そうよ。ありがとう、天城君。龍馬を守ってくれてありがとう。」



…いや。



「俺にはその程度のことしか出来なかっただけだ。」


「ううん。そんなことはないわ。私には何も出来なかったけれど、あなたのおかげでもう思い残すことはないって思えるの。だから…だからね。私達が…最後にもう一度だけ、あなたに力を…』



沙織は感謝の言葉を告げてきた。



そして何かを託そうとする沙織に続いて、

かけがえのない友の声が心に届いてきた。



『…天城さん。』



呼び掛けてきたのは…?



「徹か…っ!」



必死に呼び掛ける俺に、

徹も感謝の言葉を告げてくる。



『ありがとうございました。天城さん。あなたのおかげで僕は悔いを残すことなく、精一杯生き抜ることが出来ました。あなたがいてくれたから、あなたと出会えたから、僕は全力で生きることが出来たのです。あなたの存在が僕を立ち直らせてくれたのです。その恩だけは…決して忘れることは出来ません。ですから、今度は僕達が恩を返す番です。』



…ち、違うっ!!



俺は…俺は何もできなかった!



徹を守ることも、

仲間を守ることもできなかった!



だからこそ受けた恩を返すべきなのは…俺のほうだっ!



…それなのに。



徹に続いて、優しい声が届いてくる。



『…天城さん。』



その声は考えるまでもない。



「愛里…だな?」



『…はい、そうです。』



王都で倒れた愛里でさえも、

俺に想いを届けてくれるようだ。



『決して…決して悔やまないで下さい。私達は私達の意思で戦って精一杯生きることが出来ました。だから…だから私達は幸せです。最後まで…最期の瞬間まで大切な人を想うことが出来たから…。それだけでとても幸せだったんです。』



想いを伝えてくれる愛里。



その言葉に続いて、

更なる仲間達の声が次々と届き始める。



『天城さん。』


『総魔君。』



俺を呼ぶのは…?



「朱鷺田!三倉!」



兵器と共に消えたはずの二人も、

優しく語りかけてくれていた。



『兵器の破壊なら得意分野ですので、お任せ下さい。最期まで協力いたしますよ。』


『あはは…っ。まさかこんな形で再会するとは思わなかったけれど、これも運命なのかもね?だから私も…きみに協力してあげるわ。』



…朱鷺田。


…三倉。



協力を約束してくれた二人に続いて。


どこか戸惑うような声が俺に届いてきた。



『…あの、さ。どう言っていいのか分からないけれど…。優奈に…伝えてくれると嬉しいかな。』



控えめに話しかけてきたのは…?



「…悠理だな。」



『うん。そうだよ。ねえ…優奈はもう助からないのかな?もう…間に合わないのかな?』



命が尽きてもまだ優奈を思う悠理の想いが痛いほど伝わってくる。



…だが。



今の俺にはもうどうすることもできない。



優奈を捕獲して逃がすことも、

優奈を兵器から守ることも出来ないからだ。



だから今は…悠理に謝罪することしか出来なかった。



「…すまない。今からではもう間に合わない。」



『そう…そっか。』



素直に謝ったことで、

悠理は悲しそうに呟いていた。



『仕方がない…のかな?出来れば優奈には生き残って欲しかったんだけど…。ダメ…なんだね。』



「…すまない。」



『ううん。謝らなくて良いよ。ここまで来たのは優奈が自分で決めたことだから…だから謝らなくて良いよ。』



「それでも…」



『…良いの。どうしようもないことだから謝らないで…。ぁ…でもね。一つだけお願いしても良いかな?』



「ああ、俺に出来ることなら断りはしない。」



『…うん。ありがとう。簡単なことなんだけど…ね。』



落ち込みながらも、

悠理は願いを託してくれた。



『最期まで…最期の瞬間まで優奈を抱きしめてあげて欲しいな。一人きりで寂しい想いをしないように、最期まで優奈を離さないであげて…』



ただそれだけの、ささやかな願いだった。



優奈を孤独にさせないために。



傍にいて欲しいと願う悠理の想いだけは、

迷うことなく受け入れようと思う。



「ああ、約束する。」



『…ありがとう。優奈のこと。お願いね…。』



願いを遺した悠理。


その想いに続いて。



『もちろん僕も協力します!師匠の為にも共和国は守り抜きます!!』



武藤慎吾も話し掛けてきた。



…ふっ。



死んでも性格は変わらないようだな。



元気良く告げてくれた武藤慎吾にも感謝の気持ちは告げておこう。



「ああ、ありがとう。感謝する。」



武藤慎吾にも感謝の気持ちを告げたあとで、

さらなる想いが伝わってきた。



『…結局。最後まであなたには頼りっぱなしになったわね…。』



誰の声かは考えるまでもない。



「…美由紀か。」



『ええ、そうよ。最初はどうしようかと思っていたけれど、結局最後は貴方に共和国の未来を托すことが、とても不思議な運命だと思うわ。』



…運命か。



確かに美由紀とは運命的な出逢いを感じてしまうな。



「もしもあの日…フルームにお前達が訪れなかったら、俺も死んでいただろう。」



宗一郎と美由紀がいなければ、

俺も両親と共に死んでいたはずだ。



両親が囮となり、

宗一郎が敵の注意を引きつけてくれなければ今の俺は存在しなかっただろう。



「美由紀と宗一郎には感謝している。」



『ふふっ。そう言ってもらえると嬉しいわね。』



本当に嬉しそうな想いを残してから、

美由紀も願いを告げてきた。



『貴方で良かったわ。貴方がいたから、みんな懸命に戦うことが出来たのよ。そのことだけは忘れないでね。』



…ああ、忘れはしない。



忘れられるわけがない。



『ありがとう、天城君。今の私にはもう何もできないけれど、だけど最後に希望だけは残してみせるわ。共和国の代表として、共和国の滅亡だけは絶対に許せないから。』



想いを届けてくれた美由紀。



その声に続いて、

多くの想いが続々と俺の心に届いてきた。



『直接会うことはなかったが…悠理の為なら俺も力を貸そう。』



話しかけてきたのは近藤悠護か。



面識はないが、

優奈からおおよその人物像は聞いている。



悠理とは不仲だと聞いていたが、

どうやら仲直りできていたようだな。



悠理のためと告げた想いは、

確かに俺にも伝わってきた。



…そして。



『共和国の為ならば、ワシも共に戦わねばなるまい』。



おそらくは鞍馬宗久くらまむねひさだろう。



沙織と共に死んだ男だと思われる。



『私達も協力するわ!』



雨宮奈津か。



名前くらいは聞いている。



『僕も協力します』



木村泰輔だな。



『俺も手伝おう』



尾形久志だったか。



『及ばずながら…協力させて頂きます』



司令官、岸本克也か。



彼等は俺に会うことなく戦場に散っていった仲間達だが、

それでも共和国を守る為に想いを届けてくれたようだ。



…そして最後に。



『みゃ~♪』



聞き覚えのある鳴き声が聞こえた気がした。



優奈の為に。


死してもまだ想い続ける優奈の為に。



ミルクも俺に想いを届けてくれたようだ。



数え切れないほど多くの仲間を犠牲にしてたどり着いた最後の戦い。



その戦いにたどり着いたのは俺と優奈だけだったが、

遺された想いや多くの願いは俺達と共にあるようだ。



『…ねえ、総魔。気付いてくれたかな?こんなにも沢山の仲間が総魔の傍にはいるんだよ。だから…だからね。総魔は一人じゃないの。私が一人きりになんてさせないわ。何があっても、例え私の存在が消えたとしても、私の想いはずっと変わらないから…。だから忘れないで…。総魔は一人じゃないんだよ。』



「…すまない、翔子。俺はお前を…」



『いいの。だから泣かないで…。総魔が泣いたら私まで悲しくなるじゃない。だから総魔は微笑んでいて…。いつものように優しく微笑んでいて…。そしていつものように「問題ない」って言って…。それが…それが私の願いだから…だから、ね。』



ささやかな願いを込めながら、

翔子は俺に問い掛けてきた。



『…ねえ、総魔。私の想いは、ちゃんと総魔に届いたかな?私のこの気持ちは…総魔の心にちゃんと届いたのかな?』



「…ああ。」



お前の想いは俺の心に届いた。


お前の想いが俺を動かしたんだ。



「お前は…俺が初めて愛した女だ。」



『ふふっ。ありがとう、総魔。そう言ってくれるだけでとっても嬉しいよ。だからこれでね。もう悔いはないって思えるの。ありがとう、総魔。総魔と出会えて、総魔と一緒にいることが出来て、本当に…本当に良かったって思えるの。総魔と出逢えたことが私の奇跡で、総魔を愛せたことが私の幸せ。そして総魔と過ごした日々が私の大切な宝物なの。だから…だからね、総魔。私は…美袋翔子は…ずっとずっと、総魔の事が…大好きだよ。』



「…翔子っ。」


『…泣かないで。』



返す言葉の見付からない俺に、

翔子が別れを告げてきた。



『私達の想いを…願いを…ちゃんと叶えてね。』



想いを残して消えていく声。



多くの仲間達の声が…俺の心から消え去っていく。



「翔子…っ!!」



心の中で呼び掛ける声に返事は返って来ない。



だがその代わりに…俺の意識に光が届いた。



それは龍脈が目指す32の力の流れだ。



翔子達が最後の願いを込めて俺に届けてくれた、

ただ一つの奇跡なのだろう。



「…すまない。そして、ありがとう。」



多くの仲間達に謝罪して、

感謝の気持ちを込める。



「…この想いを決して無駄にはしない!必ず…共和国を守り抜いてみせる!!」



覚悟を決めた俺の力が、

ついに龍脈の流れを『反転』させた。



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