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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
1018/1032

優秀な回答

《サイド:天城総魔》



ゆっくりと開かれる扉。



その先に広がる空間は、

俺達が今いる部屋よりもさらに広大な地下室だった。



比較するならジェノスのルーン研究所にあった地下実験室に匹敵するほどの広さがあるように思える。



多くの機材や謎の設備のせいで窮屈に感じる部分もあるが、

部屋の規模そのものはかなりの大きさがあるだろう。



そしてここには予想通り、

『兵器』と思われるモノがあった。



「ここにある物が兵器なのかな…?」


「…不思議な形をしてますね。」



初めて兵器を見る御堂と優奈だが、

それは俺も同じだ。



王都では見ることのなかった兵器を、

ようやくこの目で確認したからな。



実物を見るのは俺も初めてだが、

徹からの事前情報で聞いていた報告と全く同じ形をした兵器がある。



巨大な『羅針盤』としか表現できない物体。



それこそが捜し求めていた物のはずだ。



…だが。



最後の部屋には俺達を驚かせる信じがたい光景が広がっていた。



…それは。


…その兵器は。



『一つ』ではなかった。



…さすがにこの状況は予測していなかったな。



『数十』もの兵器。



数多くの兵器を見た俺達は、

驚きを感じて立ち止まってしまっていた。



…一体、幾つある?



部屋が大き過ぎて把握できないということもあるのだが、

そもそもの設備が複雑すぎて兵器の数が数え切れない。



…それでも10や20ではないだろう。



もっと多くあるように思える。



完全に予想していなかった事態だ。



兵器が複数あるという事実に戸惑ってしまったのだが、

そんな俺達に一人の男が歩み寄ってきた。



「…やはり共和国の魔術師が来たか。」



歩み寄ってきた男は、

こちらから問いかける前に自らの名前を告げてきた。



「私は『龍脈研究所』所長の平松ひらまつだ。」



…龍脈研究所か。



だとすれば。


王都にあった研究所の関係者ということになる。



「すでに防衛部隊が全滅したことは知っている。…とは言え、軍隊を壊滅させたのがきみ達のような少年少女だとは思っていなかったのだが…やはり魔術師という存在は見た目では判断出来ないということなのだろうな。」



…少年少女か。



16歳になったばかりの優奈はともかく。


俺や御堂が少年と呼べる年齢かどうかは疑問を感じるが、

平松から見れば子供同然という判断なのだろう。



それ自体はどうでもいいと思うが、

肝心の平松は黒柳や宗一郎よりもさらに年上に見える。



おそらくは60代…いや70台か?


だとすれば子供扱いされるのも仕方がない。



「お前がここの責任者か?」


「…そうなるな。」



やはりこの男がこの地の責任者らしい。



所長と名乗っているからな。


兵器を管理する立場にいるのだろう。



実際に平松の周囲には数名の職員が控えている。


それなりの地位にいるのは間違いないだろう。



…それよりも問題は兵器だ。



室内に確認出来る各兵器には、

職員が一人ずつ配備されているようだ。



平松達も含めると、

ざっと40人を越える職員達の姿が確認出来る。



…そう言えば?



職員達が着ている『制服』を見たことで、

忘れかけていた事実を思い出した。



それは研究所の受付で手に入れた『職員名簿』だ。



愛里の魔術によって受付の女性が眠りについた間に手に入れた名簿。



その名簿には研究所に所属する職員の名前が並んでいたのだが、

番号が揃わない幾つもの欠番があった。



そして徹の報告でも聞いていることがある。



王都の研究所おいて『実験班の人手が足りていない』という話だ。



…つまり。



研究所の職員はこの施設に派遣されていたのだろう。



「王都の研究所で見つけた名簿には幾つもの欠番があると思っていたが、その全員がここに集まっていたということか…。」


「王都だと…?」



呟いた俺の言葉を聞いて、

平松が微かに動揺の表情を見せた。



「やはりそういうことだったか!研究所からの連絡が途絶えたと思ったら…やはりそういうことだったのかっ!!」



どうやら平松は気付いたようだな。



俺の発言から王都の研究所が潰されたことに気付いたのだろう。



「では、知っているのだなっ!?ここにある兵器の力をっ!!」



…ああ、知っている。



仲間の命と引き換えに、

兵器の威力を実証したのだからな。



滅びた王都をこの目で見ている。



「兵器を発動させて研究所もろとも王都を壊滅させた。」


「…くっ…!」



悔しそうに表情を歪める平松だが、

この男も研究所の関係者だとすれば

王都の状況は説明するまでもないだろう。



…兵器は確認できた。



あとは破壊するだけだ。



「ここにある兵器も全て破壊させてもらう。」



今回は王都のように自爆させる必要はないが、

アルテマ級の魔術を放てば兵器もろともこの部屋を吹き飛ばせる。



…それで終わりだ。



これで戦争が止まる。



そう考えていたのだが、

平松は俺を嘲笑うかのように笑い出した。



「ははははっ!!破壊…?破壊…か。残念だが、それはもう無理だな。」


「どういう意味だっ!?」



平然と答える平松に、御堂がつかみ掛かった。



「兵器を破壊すれば戦争の継続はもう不可能のはずだ!」



問い詰める御堂だが、平松は動じない。



むしろ焦りさえ感じさせる御堂の表情を見た平松は何かを確信した様子だった。



「ふはははっ…。その様子では兵器に関して何も知らないようだな。」



俺達の情報不足を認識した平松は『とある事実』を告げてきた。



「兵器と言っても、ここにある設備に力があるわけではない。これらはあくまでも制御用の装置でしかないからな。」



…制御用だと?



それはつまり兵器そのものには攻撃力がないということだろうか?



「ここで行えるのは『起動』のみ!つまり、ここにある物を破壊しても兵器の発動は止まらないという事だ!!」


「な…っ!?」



平松の発言によって戸惑う様子の御堂だが、

今ここで問題なのは兵器の情報だ。



…起動用であって停止は出来ない?



あくまでも制御用であって、

兵器そのものに力はないだと?



どういう意味だろうか?



兵器に関する情報が不足しているために、

平松の言葉の意味を理解することは難しい。



だがもしも言葉通りだとすれば、

今ここで兵器を破壊しても兵器の攻撃は止まらないという意味だろうか?



…いや、違う!



考えるべき問題はそこではない。



平松は兵器の発動は『止まらない』と言った。



…それはつまり。



すでに兵器が起動しているということだ。



「…すでに起動はしているのか?」


「ああ、そうだ!!」



勝ち誇り、笑い出した。



「もはや手遅れだ!!」


「…なっ!?」



戸惑う様子の御堂だが、

今は話し合っていられるような状況ではさそうだ。



…兵器の状態は!?


…どうなっている!?



急いで周囲の状況を確認してみた。



…兵器の数はいくつある?



一列に8台。合計4列か?



…だとすれば?



「32だ!!」



俺が数え終わる前に平松が答えた。



…32だと?



その数字を聞いた瞬間に。


俺だけではなく、

御堂と優奈も気が付いたようだな。



「まさか…っ!?」


「…もしかして?」



…ああ、おそらくそうだ。



『32』という数字。



それは聞き覚えのある数だった。



魔術大会で集まった学園の総数は『32』校。


当然その数は共和国に存在する『町の数』と同数になる。



「町の数…ですよね?」


「…ははははっ!!」



呟いた優奈の声を聞き取った平松は楽しそうに笑っていた。



「なかなかに優秀な回答だ。」



笑みを浮かべる平松は、

隠すこともなく真実を告げてくる。



「ここにある『全ての兵器』が、共和国の『全ての町』に狙いを定めている。そしてすでに兵器は起動しているのだっ!!」


「そん…なっ!?」



真実を告げる平松の言葉を聞いた瞬間に、

御堂の表情が真っ青に染まった。



「すでに兵器が起動しているなんて…っ!?」



言葉を詰まらせる龍馬だが、

それは優奈も同じだ。



「私達は間に合わなかったんですか…?」



兵器は起動されているという事実を知った二人は驚愕の表情を浮かべている。



だが俺まで戸惑っているわけにはいかないからな。


冷静に状況を確認してから、

平松に問い掛けることにした。



「すでに起動していると言ったな?だが、まだ地震は起きていない。つまり発動まではまだ時間があるということだな?」


「ふん。数が数だけに起動から発動までに時間がかかるのが欠点ではあるが、一度起動した兵器は決して止まりはしない。」


「ふざけるなっ!」



堂々と答える平松を見ていた御堂は激怒している。


今すぐにでも平松を殺しかねない雰囲気だ。



「答えろっ!どうすれば兵器は止まるんだ!?」


「兵器を止める方法だと?」



必死に問い詰める御堂だが、

平松は笑みを絶やすことなく平然と答えていた。



「…言ったはずだ。ここにある兵器は全て起動用だとな。止める方法など存在しない。研究所にあった試作品とはわけが違うのだ。停止などという機能は初めから備えてはいない!」


「く…っ!」



問い詰めるだけ時間の無駄だと判断したのだろうか。


はっきりと否定する平松から手を離した御堂は、

一番近くにある兵器に向かって駆け出した。



「うっ…うわぁぁ…っ!?」



兵器を管理していた職員が御堂から逃げだす。



そうして逃げた職員と入れ代わりに兵器にたどり着いた御堂は兵器に視線を向けて悩み始めた。



「どうすればいいんだっ!?」



初めて見る兵器だからな。


戸惑う気持ちは理解できるが、

現時点で出来ることは何もないだろう。



…もしも本当に破壊しても止まらないのであれば。



制御するしか方法がない。


だがその方法は御堂にも俺にも分からない。



…形状だけなら報告で聞いているが。



現時点では起動方法すら不明だ。



…朱鷺田はどうやって起動した?



直接操作して自爆したのか?


それとも破壊の影響で暴発したのか?



それすら分からないが、

ますは確認してみるしかないだろう。



…見た目だけで判断するのは難しいが。



兵器は地面に直接はめ込むような形で埋められている。


おそらくこれは地中に向けて『何らかの存在』に接続されていると思われる。



それが水脈かマグマかは分からないが。


兵器が平松の宣言通りの制御用だとすれば、

当然制御すべき何かが存在しているはずだ。



…兵器は何を制御している?



優奈を保護しながら御堂が確認している兵器に歩み寄ってみる。



形は円形。


大きさは直径で1メートル程度か。



円盤状の土台の外周部分には東西南北が印されている。


そして中心から外側へと伸びる指針が方角を指し示しているのだろう。



指針の片側だけが赤く染められて、

反対側は色が塗られていない。



…兵器の形状。



目の前にある兵器の形状そのものは、

研究所で聞いた話と全く同じように思えた。



円形に作られた羅針盤は中心から外側に向けて5層に別れていて、

最も外周部分には方位が印されている。



その内側にも多くの文字が印されているのだが。


東西南北の方位を示す外周部を5層目と数えると。


内側の4層目には00~99の数字が並び、

更にその内側の3層目も同様に00~99の数字が並んでいた。



…単純に考えてこの数字は距離だろうな。



方角と距離。



…この場所から推測できる場所はどこだ?



ほぼ真っ直ぐ南に向けられているが、

僅かに西寄りに思える。



そして目標までの距離は1480。



…さすがに1000キロ先を目指しているわけではないだろう。



そうなると148キロメートル先と考えるべきか?


アストリア王国の中央からやや南寄りに位置するこの場所から、

最も近場のマールグリナの町は南東方向でおよそ60キロ先になる。



そうなると14,8キロという可能性もないだろうな。


それではアストリア国内になってしまう。



…だとすれば。



この兵器が目指しているのは148キロ先にある町だ。



…思い当たるのはグランバニアか?



もしもジェノスが標的なら目標地点は南南西ではなく南南東になるはず。


ジェノスは共和国でも最南東になるからな。


方角としては東寄りになる。



可能性としてはグランバニアだろうな。



…そうなると。



残り31の兵器がそれぞれに共和国の各町を標的にしているはずだ。



どの兵器がジェノスを狙っているのかは分からないが、

その一つだけを止めたところで共和国を守ることは出来ない。



国土の9割を失えば共和国の滅亡は確定だ。



それでは共和国を守れない。



…全ての兵器を止めるためには情報が必要だな。



兵器の操作方法か…もしくは停止方法を調べる必要がある。



…他に分かることは何だ?



中心に近い2層目には『弱⇒小⇒中⇒大⇒強⇒最』と、

印されている。



これはおそらく攻撃の威力だろう。



指針に重なる文字は『最』になっている。



…間違いなく最大威力での攻撃だろうな。



王都での破壊がどの程度の設定だったのかは分からないが、

同程度の破壊力があるとすればグランバニアの町は一撃で消し飛んでしまうだろう。



…グランバニアの大きさはアストリア王都の半分以下だからな。



王都が6割におよぶ被害を受けた以上。


その半分程度の規模しかないグランバニアは一撃で滅びるだろう。



…どうにかして停止させたいが。



残念ながら中央部分の1層目だけは改良されているらしい。



徹からの報告にあった発動や停止の文字はなく、

ただ起動とだけ印されているからだ。



…停止機能は除外されたということか。



そもそも共和国を攻撃するために作られた物だからな。



最初から止めるつもりはなかったのだろう。



…そして。



兵器はただ静かに振動しているように感じられる。


おそらくこの振動こそが起動の証だ。



「どうすれば良いんだ…っ!?」



悩みながらも兵器に手を伸ばす御堂だが、

起動された兵器の指針は全く動かず、

各層も固定されていて一切の操作が出来なくなっているようだ。



「こうなったら破壊するしかない…っ!!」



焦る御堂がその手にルーンを生み出したが。



「…待て。」



一旦、御堂を止めることにした。



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