慎吾との思い出
《サイド:御堂龍馬》
…武藤君まで死んだ?
それはもう信じたくないというか、
信じられないと思う気持ちが大きかった。
真面目で。
一生懸命で。
どれだけの攻撃を受けてもめげなくて。
どれほどの逆境でも突き進もうとする。
そんな武藤君が死ぬなんて。
そんなことがあるんだろうか?
いや…もちろん誰だって死ぬときは死ぬんだけど。
武藤君だけは何があっても絶対に死なないような…そんな気がしていたんだ。
「武藤君…。」
誰よりも武藤君と関わっていたことで、
僕の中の思い出が蘇ってくる。
『師匠はどうしたいんですか?』
かつて武藤君に問い掛けられたことがあった。
その時に僕は全てを越える力が欲しいと答えた。
『だったら僕と同じですね!』
そう言って武藤君は笑顔を見せてくれた。
だけど、その後で。
『師匠は好きにして下さい!』
突然、僕に告げた武藤君は別れを選んだんだ。
『僕ならもう大丈夫です!色々なことを師匠から教わりましたからっ!!だから師匠は先へ進んでくださいっ!』
『無理言ってばかりですみませんでしたっ!でも僕、楽しかったんです!誰にも相手にされなかった僕に、優しくしてくれたのは師匠だけだったから!!だから、だからこれ以上、師匠に迷惑をかけることは出来ませんっ!!!』
想いの全てを僕に打ち明けて。
『師匠!ありがとうございますっ!!そして、お世話になりましたっ!!!』
たった一人で姿を消したんだ。
…それから数日後。
武藤君は再び僕の前に姿を見せた。
以前と変わらないままで。
嬉しそうに。
そして楽しそうに笑っていたんだ。
…忘れるなんて出来ない。
武藤君の笑顔を見て僕も笑うことが出来たから。
どんな状況であったとしても楽しいと思えたから。
だから僕は…どんな時でも素直に喜んでくれる武藤君と約束をしたんだ。
この戦争が終わったら、
また一緒に検定を頑張ろう…と、約束したんだ。
…忘れられるはずがないっ!
武藤君は最高の笑顔で、
僕の旅立ちを見送ってくれていた。
『師匠!またご一緒できる日を楽しみに待ってます!!』
全力で頭を下げて、
僕を見送ってくれたんだ。
それが…それが武藤君との最後の思い出だった。
ホンの数日しか関わっていないけれど。
それでも僕は誰よりも武藤君を理解して、
誰よりも深く接していたと思う。
だから、かな。
僕にとっては武藤君の死も…辛く重い現実だったんだ。
「武藤君。きっときみは…最後まで悠理を守って戦ったんだね…。」
呟く僕の言葉を聞いて、
深海さんは小さく頷いていた。
「はい、私もそうだと思います。」
武藤君との関わりは多くはないようだけど。
それでも深海さんは僕の意見が正しいと思ってくれたようだ。
ずっとずっと悠理を想い続けていた武藤君なら、
絶対に悠理を置いて逃げたりはしないと…深海さんも考えたんだろうね。
「二人ともきっと…一生懸命に戦ったんだと思います。」
そう言って深海さんは総魔から離れた。




