抑えきれない感情
《サイド:深海優奈》
「なっ!悠理と武藤君まで!?」
信じたくない出来事に驚く様子の御堂先輩でした。
ですがそんな先輩とは対照的に、
私は静かに現実を受け入れました。
「やっぱり…そうなんですね。」
すでに気付いていたからです。
力に覚醒したことで、
総魔さんの調査の前に気付いていたからです。
だから…驚きませんでした。
分かっていることを確認しただけだから、
だから私は泣きませんでした。
最後まで立ち向かうと決めたから、
今はまだ泣きたくなかったんです。
絶望して泣くことはいつでも出来ます。
だけど今はまだその時じゃないんです。
全てが終わってから。
戦争が終わってから。
自分の役目が終わってから…それから泣こうと決めました。
だから私は泣きません。
泣けばまた立ち止まってしまうから。
またここから動けなくなってしまうから。
だから我慢することを選びました。
…ごめんね、悠理ちゃん。
本当は今すぐにでも泣きたいけれど。
今はまだ出来ないの。
ここで泣いてしまったら私はもう立ち上がれないから。
悠理ちゃんの死を受け入れてしまったら私はもう立ち直れないから。
だから…もう少しだけ待っててね。
私が立ち止まっても、
誰にも迷惑がかからないようになるまで。
独りきりで泣けるようになるまで。
それまで…もう少しだけ…待ってね。
…悠理ちゃん。
心の中で悠理ちゃんを想いながら顔を上げました。
「総魔さん。」
呼び掛ける私の表情に悲しみはありません。
「みんなの為に…悠理ちゃんの為に…。私は…戦争を止めます。」
迷いのない瞳で、
まっすぐに総魔さんと見つめ合いました。
そして私の想いを告げようと思いました。
「この戦いが終わるまで…。私は足を止めません。だから…だから戦争を…止めに…」
涙を堪えながら、
懸命に想いを告げようとしたのです。
…ですが、この想いは。
…この悲しみは。
止まりませんでした。
「…悠理ちゃんの…為に…っ。」
静かにこぼれ落ちる涙。
どれだけ心を強く保とうとしても抑え切れない感情。
とめどなく溢れる感情が私の心を支配してしまうんです。
「…悠理ちゃんの…悠理ちゃんの…為にも…っ。」
泣かないと決めても止まらない涙。
そんな私の涙を見た総魔さんは、
悲しみで震える私の体を…そっと優しく抱きしめてくれました。




