3人だけ
《サイド:天城総魔》
「…それで良い。」
「僕もそう思うよ。」
優奈の頭を撫でると、
横に並ぶ御堂も優奈に話し掛けた。
「深海さんの決断は正しいと思う。死んでいったみんなの為に。みんなの想いを受け継いで立ち向かおう。そして…僕達で戦争を止めるんだ。」
「はいっ。最後まで頑張ります!」
誰かの後ろに隠れるだけの優奈はもういない。
失ったものは多いが、
それでもはっきりと自分の意志を言えるようになった。
それこそが優奈の成長と言えるだろう。
まだ心の迷いが消え去ることはなくとも、
最後まで前を向いて歩き続けることは選べたからだ。
「私も最後まで戦います!」
戦場に散っていった多くの仲間達の想いを受け継いで立ち向かう道を選んだ。
…となればもう。
話し合うことは何もない。
「先を急ぐぞ。」
先頭を歩きだす俺の後に続いて、
御堂と優奈も歩きだす。
死体だらけの地下室。
その室内に歩みを進めるのは3人のみ。
『天城総魔』
『御堂龍馬』
『深海優奈』
…ここへ。
…この場所へ。
最後の決戦となるこの場所まで辿り着けたのは3人だけだった。
…守るべき仲間を失いすぎた。
ここへたどり着くまでに数万に及ぶ魔術師を失い。
かけがえのない大切な仲間を失った。
琴平愛里から始まり。
朱鷺田秀明。
三倉純。
常盤沙織。
北条真哉。
米倉美由紀。
美袋翔子。
栗原徹。
そして…ミルクが力尽きた。
だが、それだけではなかった。
俺達を襲う絶望はまだそれだけではなかったようだ。
失われた命は…それだけではなかったらしい。
その事実に優奈が気付いた。
「あ、あの…総魔さん。」
背後から優奈が呼びかけてきた。
「…どうした?」
振り返って問い掛ける。
足を止めた俺に合わせて御堂も立ち止まった。
そうして見つめる俺と御堂の視線を受けながらも、
優奈は何かに迷っている様子だった。
「あの…間違ってたらすみません。でも、その…」
僅かに言葉に迷ってから問い掛けてきた。
「総魔さんの魔力の探知って…もしかして吸収の特性を使っていますか?」
…魔力の探知の技法か。
確かにそこには吸収の特性が関わっている。
対象の魔力の波動を調整する技術と吸収の能力は関わりがあるからな。
吸収の能力の派生として魔力感知があるといってもいい。
「ああ、俺の場合は魔力の波動に関して吸収の特性が深く関わっている。もちろんそれだけではないが…。それがどうかしたのか?」
問い返す俺に優奈は辛そうな表情を見せてから呟いた。
「魔力の波動が…ないんです。どこにも見つからないんです。悠理ちゃんの魔力が…どこにも見つからないんです…っ!」
…悠理の?
助けを求めるような表情で俺を見上げる優奈の言葉を聞いて、
即座に意識を集中させることにした。
ある程度の範囲内なら無意識でも感知できるが、
遠距離となれば意識的に探らなければ探知できないからだ。
…近藤悠理の魔力の波動はどこだ?
前回調べた時はこの地から見て、
ほぼ東方向にいたはず。
…多くの魔力に囲まれていたはずだ。
共和国軍と共に行動していたからな。
探索は難しくないだろう。
おおよその位置を想定しながら意識を向けてみる。
…だが。
優奈の指摘通り、
悠理の波動は感じられなかった。
共に行動していたはずの武藤慎吾の波動も途絶えている。
前回感知した周辺一帯。
およびアストリア全土。
共和国近辺まで捜索しても、
近藤悠理と武藤慎吾の波動はどこにも存在しなかった。
…だとすれば?
考えられる理由は一つしかない。
「近藤悠理と武藤慎吾も倒れたか…。」
「な…っ!?」
小さな声で呟く俺の言葉に反応したのは御堂だった。




