魂の保管
優奈の力に気付けたことで、
嘆き悲しむ優奈に話しかけることにした。
「おそらく、精霊に宿っていた『魂』とも呼ぶべき力が失われたのだろう。」
「…魂…ですか…?」
推測を告げる俺の言葉を聞いて、
優奈は涙を流しながら問い掛けてくる。
「ミルクには…魂があったのですか?」
「…だろうな。」
意思を失ったミルクを抱きしめたまま、
溢れる涙で言葉を詰まらせながら問い掛ける優奈に、
まずは説明しておくことにした。
「おそらく優奈の精霊には本物のミルクの魂が宿っていたのだろう。」
あくまでも推測でしかないが。
「本物のミルクが亡くなった時に、優奈は無意識の内にその魂を吸収した可能性が高い。」
具体的な理論は俺にもわからないが、
ミルクという存在を心に大切にしまっておきたいと願ったのだろう。
そしてその願いは吸収という形で優奈の中にミルクの魂を取り込んだと思われる。
『ソウルイーター』という力。
その力を無意識の内に発動してミルクの魂を保管した。
例えソウルイーターという力に覚醒したのは今だとしても、
能力に気付かなかっただけで力そのものは以前から優奈に宿っていたものだからな。
争いを避けて。
傷付けあうことを避けて。
自分でも気付かない内に本来の力を心で抑制していたとしても。
ミルクが亡くなった瞬間だけは、
自分でも気付かない間に能力を発動させていたと推測出来る。
そして魔術大会で偶然身につけた精霊という力。
優奈はその精霊に『ミルク』という存在を創造して、
無意識の内に保管していた『ミルクの魂』を精霊に注ぎ込んだのだろう。
その結果として魔力の塊でしかない精霊が『意思』を持った。
本物の『ミルク』の魂を受け継ぐ精霊の『ミルク』
それは幾つもの偶然が起こした小さな奇跡だ。
優奈に『ソウルイーター』という力があり。
ミルクという『魂』をその心に抱え。
精霊という形で実現された小さな奇跡。
本物の魂を持った精霊は、
優奈だからこそ起こせた奇跡と言えるだろう。
その存在は魔力という『偽りの存在』であっても、そこに宿る魂は本物だ。
精霊のミルクに宿る魂はミルクそのものであり。
その心に宿る『意思』は死してもなお主を想い続けた。
そしてミルクは優奈を守る為に最期まで必死に戦い続けた。
おそらくは自らを維持する為の魔力を使い果たしてでも優奈を守ろうとしたのだろう。
ミルクは自らの存在が消える最期の瞬間まで優奈を想い。
別れの言葉を残して消え去った。
それが答えだ。




