叶わない願い
《サイド:御堂龍馬》
階段を下りて地下へと降り立った直後に。
「くっ…!」
一直線に続く通路の先で、
僕達は更なる悲劇を目撃してしまった。
「またなのか…っ!」
悔しさを感じる僕の隣で、
総魔はただ静かに目を伏せている。
「…間に合わなかったか。」
そう。
間に合わなかったんだ。
僕と総魔が見た現実。
それは栗原さんの遺体だった。
総魔にとっては信頼すべき仲間だったと思う。
共に戦場を駆け抜けて、
共に悲しみを分かち合った戦友のはずだ。
その死を…僕達は見てしまった。
「徹…。」
小さく呻いた総魔は現実を受け入れて歩みを進めていく。
そのあとに続く僕の視線の先には、
倒れた栗原さんに泣きつく深海さんの姿があった。
「…栗原さん…っ。」
明らかに焼死したと思われる栗原さんの遺体にしがみついて歎き悲しむ深海さんに、
総魔がゆっくりと歩み寄っていく。
「…優奈。」
「…っ!?」
呼び掛ける総魔の声に気付いて、
深海さんは静かに顔を上げてくれた。
「そ、総魔…さん…っ!」
目を真っ赤にして涙を流している。
深海さんの絶望を感じさせる表情からは、
助けを求めるような祈りさえ感じられるほどだった。
…だけど。
どれほど総魔が凄いと言っても、
死者を蘇らせることは出来ないはずだ。
そんな魔術は存在しない。
万能と言える魔術だけれど。
それでも決して叶わないことはあるんだ。
『空間を操作すること』
『時間を操ること』
『命を蘇らせること』
それら3つだけは絶対に叶えられない。
あらゆる魔術を『創造』出来る総魔といえども、
それだけは叶えられないはずなんだ。
それらを可能にする理論が存在しない限り。
どの魔術も成立しない。
だから総魔に栗原さんを蘇らせることは出来なかった。
「徹は最期まで戦った。そうだな?」
「は、はい…っ。」
問い掛ける総魔に深海さんは頷いて答えていた。
「徹さんは…っ。私を、守って…私を庇って…っ。」
泣きながら告げる深海さんの悲しみを感じて黙り込む総魔と僕。
そんな僕達に深海さんは言葉を続けていく。
「栗原さんは…最期まで、愛里さんを想って、亡くなりました。最期まで、愛里さんを想い続けて…いたんです。」
そう言って黙り込んでしまう深海さんだけど。
その言葉を聞いた総魔は、
栗原さんの気持ちを察した様子だった。




