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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
1001/1032

俺達

《サイド:御堂龍馬》



「これで終わりだーっ!」



聖剣から放つ力が、

残存する陰陽師達を吹き飛ばす。



「ジ・ハード!!!」



鳴り響く衝撃音。



砂埃が舞い上がり。


風が吹いたあとには陰陽師達の亡きがらだけが残されていた。



「はぁっ…はぁっ…!!」



肩を上下させながら呼吸を整える。



さすがに砦での戦いとは違って、

仲間がいないというのは辛いね。



全方向から襲いかかってくる敵を警戒しなければいけないせいで疲労を蓄積させてしまっているんだ。



これではまだまだ総魔には追いつけそうにないかな。



そんなふうに考えながら疲れた表情を見せる僕に総魔が悠然と歩み寄ってくる。



「どうやら無事に終わったようだな。」


「あ、ああ…なんとかね。さすがにちょっと疲れたけど。」



空元気で微笑んでみる。


そんな僕を見た総魔は僕の成長を感じてくれていたようだ



「強くなったな、御堂。あの時とは比べものにならないほどに強くなった。」



…あ、あははは。



どうなのかな?



自分では自信がないけれど。


褒めてもらえるのは素直に嬉しいかな。



僕には分からないとしても、

僕の成長を感じてくれているらしい。



その不思議な感覚に喜びを感じてしまう。



総魔が認めてくれているんだ。



2度も敗北した僕を、

総魔はまだ見放していなかったんだ。



そのことが何よりも嬉しいと感じられた。



「きみを越えるその日まで、もう立ち止まらないって決めたんだよ。」


「…そうか。」



素直な気持ちを答える僕の言葉を聞いた総魔が微笑んでくれている。



「成長したな。力だけではなく、その心も…。」



ああ、そうだね。


だったら良いんだけどね。



だけど。



今はまだ自覚がないから、

ちょっぴり照れくさいかな?



もう少し自分に自信が持てるようになるべきかもしれないね。



そんなふうに考えていると、

総魔が右手を差し出してくれた。



「必ず追い掛けて来ると信じていた。御堂、お前ならいつか俺を越える日が来るだろう。だから…それまでは前を向いて歩き続けろ。」



ああ、分かっているよ。



その日が来るまで頑張るつもりだからね。



総魔の手をとってから、

しっかりと頷いて答えることにしたんだ。



「僕の目標はきみだ。きみがいる限り…きみが戦い続ける限り…僕も戦おうと思う。」



そしていつかもう一度、

総魔と戦って今度こそ越えてみせる。



その日がくるまで僕は生き続けると決めたんだ。



「だから僕はもう迷わない。戦争を止めて全てを終えるまで、僕はもうくじけない。そう決めたんだ。沙織にもね…そう誓ったんだ。」



精一杯の想いを告げる。


そんな僕の手をしっかりと握り締めながら、

総魔は優しく語りかけてくれた。



「死が終わりではない。意志が残る限り、決して終わることはない。命ではなく、想いが失われた時に全てが終わると俺は考えている。」



ああ、そうだね。


僕もそう思うよ。



例え死んでも意志は残る。


例え命が尽きても想いは残る。



受け継がれる意志が在る限り。


受け継がれる想いが在る限り。



決して終わりは訪れない。



決して、終わらせてはいけないんだ。



総魔の想いを感じ取り、

僕は瞳に涙を浮かべていた。



「僕は沙織の意志を受け継ぐって決めたんだ。だから僕はまだ生きて行けるし、まだ戦える。そして…きみを追うことが出来るんだ。」



それが僕の精一杯の気持ちになる。



それが沙織を失った悲しみを乗り越えた僕の願いなんだ。



そういう意味で考えれば、

確かに僕は成長したのかもしれない。



悲しみを乗り越えることで、

少しだけ成長したと思えるんだ。



「強くなったな、御堂。その強さが…お前の力だ。」



ああ、そうかもしれないね。



今なら分かる気がする。



少しだけかもしれないけれど。



成長できた気がするんだ。



「ありがとう、総魔。そう言ってもらえると嬉しいよ。」



握手を交わした手を離すと、

総魔は視線を逸らしてから施設の入口へと振り返った。



「行くぞ、御堂。あの場所に兵器があるはずだ。兵器を破壊して戦争を止める。それが残された俺達に出来る…せめてもの償いだ。」



…残された俺達?



その言葉に微かな疑問を感じてしまう。


何故かその言葉が心に引っ掛かったんだ。



「総魔…まさかまた誰かが死んだのか?」



そうでないことを願いながらも訊ねてみた。



出来れば気のせいであって欲しいと願いながら事実を確認してみると。



「…ああ。」



総魔は少し落ち込んだ様子を見せてからゆっくりと頷いてしまったんだ。



「まさか…本当に?」



誰かが死んでしまったのだろうか?



僕はまだ知らない。


足を止めている間に失われた命があることをまだ知らない。



だから尋ねたんだ。



真実を知る為に。



総魔に問い掛けた。



「誰が…死んだんだ?」



恐る恐る尋ねる僕に、

総魔は冷静に…淡々と答えてくれた。



「北条真哉と米倉美由紀だ。そして…美袋翔子も死んだ。」


「なっ!?」



真哉と理事長が!?


それに翔子まで!?



驚く僕に視線を向けた総魔がポケットから何かを取り出した。



「読んでみろ。」



手渡されたのは手紙だった。



桜色の封筒には差出人の名前も宛名さえも記されていない。



これは誰の手紙なんだろうか?



見た目だけではわからない。



そもそもどうして手紙を手渡されたのかもわからない。



「開けてもいいのかい?」



念の為に確認してみると、

総魔は無言で頷いている。



どうやら手紙を読めということらしい。



誰が書いた手紙なんだろうか?



よくわからないけれど。


ひとまず中身を取り出してみる。



封筒の中に入っているのは二枚の手紙。



それらを広げただけで誰が書いたものなのかはすぐにわかった。



…そして。



二枚の手紙を読んでから、

僕はようやく真実を知ったんだ。



「…翔子。」



翔子は総魔が好きだったんだ。



沙織が僕を好きだと言ってくれたように。


翔子も総魔が好きだったらしい。



今まで全く気がつかなかったけれど。


翔子の想いを知ったことで僕は再び涙を流していた。



「そうか、だからきみは『俺達』と言ったのか…。」



ようやく真実を知った気がした。


そして。


総魔の悲しみに気づけたんだ。



僕だけじゃなかった。


僕だけじゃなくて、

総魔も同じ苦しみを感じていたんだ。



「きみは…きみは愛する人を失ってもくじけなかったんだね。僕と違って…きみは立ち止まらずに、前に進むことを選んだんだ。やっぱり…きみは凄いよ。」



手紙を総魔に返しながら、

僕の想いを告げてみる。



真哉の死。


理事長の死。


そして…翔子の死。



その全てを知った僕は、

今更だけど総魔の心を少しだけ理解できた気がしたんだ。



同じ悲しみを持つ者として、

総魔の心を感じ取れたんだ。



「行こう、総魔。僕達は終わらせなければいけない。戦場に散っていったみんなの為にも…僕達は戦争を止める義務がある。」


「ああ、そうだな。」



僕の言葉に頷いてから、

総魔は静かに歩き始めた。



ポケットに翔子の想いを仕舞いながら、

総魔は歩みを進めていく。



戦争を止める為に…。


全てを終わらせる為に…。



総魔と共に僕も施設を目指したんだ。




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