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ホメオスタシスは、今日も眠ってる  作者: 紅月ヨルカ


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8/12

食い溜め

急な休みになった(仕事だと思い込んでいただけ)の海斗は、普段着に着替えて一人で考え事をしていた。


(せっかくの休みだし、どこか行くかな〜?

夜中に食べるなってだけだし、今のうちに食い溜めでも……)


「あ!そうだ、いっそのこと食べ放題で夜まで食べるとか。

うんうん、いいアイデアだ。いっぱい食べて夜まで食い溜めしとくか!」


そう言って、海斗は一人でニヤついた。


その時、ドッペルは横になったまま、感情のない声で言った。


「その考えは捨てた方がいいと思うよ。

そもそも“食い溜め”なんてものはないんだ」


安易な考えを一蹴され、海斗はムッとして言い返す。


「うるさいな。人のことなんて興味ないくせに。

いいだろ、いっぱい食べたら満足して朝まで寝れる。

ルールも守れるし、最高じゃん」


ドッペルは興味なさそうに目を閉じた。


「はいはい。どうでもいいけど、お菓子が少ないから補充よろしく。

それぐらいしか価値がない存在なんだから」


「あのな……その価値がない存在から生まれたお前は何なんだよ」


吐き捨てるように言いながらも、海斗は靴を履く。


「まあいい。俺も食べるし、買ってくる。

勘違いするなよ、お前のためじゃないからな」


玄関が閉まる音を聞きながら、ドッペルは薄く笑った。


「……いつまで続くかな」


そして、ほとんど音にならない声で囁く。


「そうやって壊れていくんだよ、君は」



海斗が食べ放題の店に着いたのは、オープン前だった。


「……14時開店?」


10時前から周囲をうろつき、気づけばかなり歩かされていた。


(まあ、その分腹も減ったし悪くないか)


開店と同時に入店し、二時間コースを選ぶ。


「野菜は後回しだな。肉とカレーでいくか」


空腹のまま、考えるより先に皿を運び続けた。


時間が過ぎ、腹を押さえながら席を立つ。


「……さすがに食ったな」


デザートを済ませ、最後にソフトクリームを口に入れて店を出た。



帰りにコンビニへ寄り、袋を提げて帰宅する。


(これだけ食べたんだ。

夜中に腹が減ることはないだろ)


玄関を開ける。


「ただいま。腹一杯食ってきたぞ」


袋を見せると、ドッペルは珍しく身を起こした。


「おかえり。ちゃんと買ってきてくれたんだ」


両手を差し出す。


「ああ、仕方ないからな」


少し苛立ちを含んだ声で、お菓子を渡す。


「……ドッペルは拒否したはずだけど?」


そう言いながら、もう袋は開いていた。


「まあ言うだけ無駄なことだよねセンスないし」


チョコを齧りながら、ため息をつく。


「ちゃんとルールは守ってね。

本当に、大変なことになるから」


「はいはい」


海斗は適当に返事をし、手を振った。


「風呂入って寝る。

起きてても腹減るだけだし」


「まだ18時だけど?」


呆れたように背中を見送る。


ドッペルは何も言わず、ポテトチップスを噛み続けた。

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