最初のルール
「絶対に嫌だぁぁぁ〜!!」
ドッペルの叫びに、海斗は思わず肩を跳ねさせた。
「いや、今の流れ、受け入れて感謝した感じだったじゃん? 急にどうした?」
ドッペルはきょとんとした顔で首を傾げる。
「だって普通でしょ。ドッペルゲンガーから取った名前なんて。君のことだから、もう少しまともなのを考えると思ったんだ」
そう言いながら、落ちていたポテチを拾い上げる。
「……正直、握手する前からちょっと嫌だった」
「先に言えよ!」
海斗はため息をつき、お茶を一口飲んで気持ちを切り替えた。
「まあ名前はもうそれで決定でいいなもうタマとかクロしか思いつかんし…それよりさ。さっきの契約とかトレーナーは冗談として、実際どうやって痩せるんだ?」
ドッペルはチョコを口に含み、少し考える素振りを見せる。
「方法はあるよ。僕とルールを決めて、それを守るだけ」
「それで痩せるのか?不思議な力とかさそれとも秘密の道具で一瞬でとかか?」
と海斗は興奮して聞く。
「不思議な力、って言えば満足?」
ドッペルは曖昧に笑った。
海斗は半信半疑のまま、ポテチをつまむ。
「ああ不思議な力か最高だな!…で、そのルールって?」
ドッペルの表情が一瞬だけ真顔になる。
「まず最初は一つだけ。夜中は一切、何も食べない」
「……それだけ?」
思わず拍子抜けした。
「簡単でしょ」
海斗はテーブルのポテチに目を落とし、少しだけ黙った。
「最初ってことは、どうせ増えるんだろ。それに今これ食ってるし、簡単とは思えないな」
「嫌ならやめてもいいよ」
ドッペルは淡々と言う。
「メタボになろうが、変な死に方をしようが、君の自由だ」
「……死ぬとか言うなよ」
海斗は顔をしかめ、しばらく考えた末に笑顔を作った。
「わかった。そのルール、守る。死にたくないし」
「そっか。じゃあ契約だね」
ドッペルが手を差し出す。
海斗は少し面倒そうに、その手を握った。
「契約、完了しました」
海斗は冷静に考えて
「でもさ〜今ポテチ食べてるしルール破っちゃってる?」
海斗はポテチをポリポリしながら聞いた。
「全然大丈夫だよ。明日からだから」
ドッペルはそう言って、少しだけ口元を緩めた。
その笑い方が、なぜか気になった。
「……何だよ」
「いや。人間って面白いなって思っただけ」
ドッペルは、それ以上何も言わなかった。




