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ホメオスタシスは、今日も眠ってる  作者: 紅月ヨルカ


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5/12

契約

黒猫は急に真剣な顔になり、重い口を開いた。

「君はメタボ予備軍だって言われたのに、まだお菓子と弁当を食べ続けてる。このままじゃ本当に死ぬよ? わかってる?」


煎餅をかじったままの指摘に、海斗は少し動揺する。

「わかってるけど……っていうか、メタボ予備軍のことやけに詳しいな。何か見たのか?」


「君自身だって言ったでしょ。しつこいぞ」

黒猫は肩をすくめる。

「それより、変えたいと思うかい?」


海斗はポテチをつまみながら言い訳を挟んだ。

「まあ、変えたいけどさ。でも何から始めればいいんだ? それに俺、別に太ってないし。みんなも引っかかってるし……」


「うーん、まだそんな感じか。その考えじゃ危ないよ」


黒猫はごそごそと何かを探し、紙を一枚、海斗の前に置いた。

「とりあえず、これにサインしない?」


海斗は紙をまじまじと見る。

「なんだよ、急に怪しい紙出しやがって。……って、契約書?」


「うん。僕と契約してダイエットしよう」

黒猫はポテチを咥えたまま、ペンを差し出す。


海斗は少し躊躇しつつ、冗談めかして目を輝かせた。

「え? これにサインしたら簡単に痩せられるのか? お前の魔法とか?」


「サインしたら、後日トレーナーさんから連絡が来るよ」


次の瞬間、海斗はテーブルを両手で叩いた。

「それ、お前ほとんど関係ない契約じゃないか!」


契約書を放り投げ、何かを察したように言葉を吐く。

「……ああ、なるほど。

不安を煽って、高額契約にサインさせるタイプか。

最初からおかしいと思ったんだ。死ぬだの、死んでみろだのさ。

……信じかけた俺がバカだった」


そう言って、その場にごろりと横になる。


黒猫は冷静にポテチをもぐもぐしながら言った。

「そういう魂胆も何も、僕は君だよ。分身みたいなものさ。怪しい契約をさせるために出てきたわけじゃない」


寝転んだまま、海斗は鼻で笑う。

「まだ分身商法を続けるのか? じゃあその路線なら、お前はドッペルゲンガーだな。今日からドッペルだ」


「え……?」

黒猫は言葉に詰まり、手にしていたポテチをぽろりと落とした。

「それって……名前、付けてくれたってこと?」


瞳が潤む。


海斗はその反応に驚き、体を起こした。

「気に入ったのか? そうだぞ。今日からお前はドッペルだ。よろしくな」


そう言って手を差し出す。

ドッペルも潤んだ瞳のまま手を伸ばし、二人はがっちりと握手した。


「絶対に嫌だぁぁぁ〜!!」


ドッペルの叫びが、こたつ部屋の静寂をかき消した。


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