始まり
職場帰り、俺は弁当を開きながら健康診断の結果を確認した。
「なんだ?どうして俺がメタボ予備軍なんじゃ〜!?」
(いや待て、別人かも…)
「相沢海斗、25歳…やっぱ俺か…なんでだ?歩いてるし食事も普通なのに…」
まあ、考えても仕方ないか。
診断結果をゴミ箱に捨て、弁当を2個食べ、飴を舐めて横になる。
朝、目を開けた瞬間ハッとして飛び起きた。
「……飴舐めながら寝て、朝まで行く? マジか俺」
寝たはずなのに全然スッキリしてなくて、なんか時間を損した気分。
バタバタと支度して職場へ向かうと、休憩スペースがちょっと騒がしい。
「俺、内臓脂肪ひっかかった」
「うちの部署ほぼ全滅だぞ」
そんな声が飛び交っている。
(なんだ、みんな同じじゃん)
海斗はほっと胸を撫で下ろす。自分だけじゃない。だから気にしなくていい。
“安心できる理由”を無意識のうちに必死で探していた。
午前の仕事を終え、弁当を買いにコンビニへ。
気づけば手には弁当2つ。
そして、つい口から出たひと言。
「今日は気分いいからデザートも買っちゃる」
シュークリームもカゴへ吸い込まれた。
空き部屋にこもり、弁当をかき込み、ラテを流し込み、シュークリームで締め。
早食いし終えた瞬間——
意識が、ぷつりと途切れた。
次に目を覚ましたとき、外は夕焼け。
背中に冷や汗が流れる。
「嘘だろ……昼休みに寝落ちして夕方って……!」
震える手でスマホを開くと、画面に上司からの着信履歴がずらりと並んでいた。
心臓が変な音を立てる。
「……うわ、どうしよう」
――その時の海斗はまだ知らない。
“本当にやばいのは眠った時間じゃなく、眠ってしまう理由のほうだってことを。”




