ラジオでおはよう
ラジオの話。
「ううん」
鳴っているスマホを止める。
「朝、か」
中学生の少年は呟く。
そして、ベッドから出る。
いつもの朝。
スマホで起きる時間を設定して、自分で卵焼きみたいなものを簡単に作って、それを1人で食べて。
歯磨きは誰にも邪魔されないで。
「いってきます」
そう言って、彼は1人で家を出る。
今の言葉、部屋のお姉ちゃんに聞こえたらいいな、そんなことを思いながら。
原因はわからない。
『中学生になったら、すぐに不登校になった』
わからない。
本人にも、その弟にも。
もしかしたら、入りたかった部活に入れなかったのかもしれない。もしかしたら、勉強についていけなくなってしまったのかもしれない。
お姉ちゃん、どんな感じで僕と話していたんだっけ。
彼は、よく考える。
当たり前だと思っていた日常。
今はなき、日常。
学校には、お姉ちゃんの幼なじみがたくさんいる。
「お姉ちゃんの調子どう?」て、いつも聞かれる。
僕はまた、いつものように、笑顔で「元気だよ」て言わないといけない。
嘘なのに。
生きているかどうかも、わからない。
「ただいま」
そう言って、階段をのぼる。
そして、自分の部屋に入り、椅子に座り、スマホを取り出し、
『radikko』
2人で、よく聞いていたラジオ。
「さて、生存確認」
彼は、微笑んで呟く。
姉の投稿が読まれることを期待して。
もう、あの日常は戻らない。
だから、せめて、この日常を楽しんで生きたい。
ありがとうございました。




