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替え玉の替え玉令嬢は、更に替え玉を立てました! 「お前を愛することはない!」 それ替え玉の人形ですよ?

作者: 月野槐樹
掲載日:2025/12/01

私は、リリア。実家は没落した男爵家。かろうじて爵位は残ってるけど、領地なし。


爵位が残されたのは、私のおかげ! なんて調子良い事言ってるけど、内心、本当にそうだと思ってる。


私は今、国家組織の要請で、とある子爵家で侍女として働いている。所謂潜入捜査だ。


私のスキルに「幻術使い」というものがあって、それが潜入捜査に役立つのだ。実家の爵位が残っているのも、平民よりは一応貴族の方が、侍女の仕事を得やすいからなんだよね。


今回のターゲットは、ランブル子爵家。どうやら税金を誤魔化して居るらしいというので、その証拠集めをしてるんだ。


でも、問題発生。


ランブル子爵家には、前妻との子であるケイト様と、後妻の連れ子のアマンダ様がいるんだけど、後妻と連れ子が、ケイト様を虐待してるんだよね。


食事を抜かれるのはしょっちゅうで、気に入らないて水をかけたりしてる。子爵様は気づいているのか、今のところ不明だけど、流石に娘がガリガリになってたら気が付かない?


ケイト様は、没落貴族出身の私にも笑顔を向けてくれるし、何とかしてあげたいところ。


そんな時、アマンダ様に縁談話が持ち上がった。相手は、ドゥーブル伯爵。28歳。顔はまあまあだけど、愛人を囲って、婚約者に婚約破棄を告げたという逸話があって、社交会では評判が良くない男だ。


予想だけど、男爵令嬢だと結婚を許してもらえないから、お飾りの妻を求めたんだろね。


ケイト様でなくて、アマンダ様に縁談が来たのは、ランブル子爵の実の娘ではないからだと思う。

でも、アマンダ様と子爵夫人は納得しなかった。



「ケイトを嫁がせれば良いじゃない!」

「そうよ! ケイトに身代わりをさせましょう!」


思いつきで何言ってんだと、思うけど、なんとランブル子爵もこの案に乗ってしまったらしい。


それを陰から聞いていたケイト様はショックを受けて、一晩中泣き明かしてた。


私の目的であるランブル子爵家の不正の証拠は集め終わったので、そろそろトンズラするし、ケイト様もこの屋敷から逃がしてあげる事にした。


「頼むわね! ジェイク!」

「……」


ジェイクは、一緒に潜入してる仲間で、ランブル子爵家には御者として潜入してる。相変わらず無愛想だ。


「よ、宜しいんですの?」

「大丈夫ですよ。ダメって言ってないから」


不安そうにするケイト様をジェイクが操縦する馬車に押し込んだ。

後はジェイクが戻ってきたら、私も馬車に乗ってトンズラする予定。

でも、想定外の事が起きてしまった。


「ケイトは何処?」

「ケイトが何処にもいないってどう言う事? 明日にはドゥーブル伯爵家に来いと言われてるのに」


ケイト様が家を出た事が早々にバレた。マズイ。遠くに逃げるまで何か時間稼ぎすべきか……。


あれこれ考えていたら、突然指を差された。


「ケイト付きの侍女は貴女だったわね」

「はい……。そうですが……」

「責任とって、貴女が身代わりで嫁ぎなさい!」

「はあ?」


訳わからない事を言われて思わず幻術を発動して逃げ出そうと思ったよ。でも、良く考えでみると、ドゥーブル伯爵家も、潜入先候補に入ってるんだった。これ、一石二鳥じゃない?


子爵家の後妻の考えでは、嫁いでも愛人に夢中な伯爵は近づきもしないだろうから、接触がないうちに、ケイト様を見つけ出して入れ替えればOK!

って考えらしい。ザル過ぎない?


ランブル子爵もこの案に乗ったようだ。ダメ父だね。ランブル子爵が結婚申請書に保護者としてサインをする時、私は少々幻術を使った。


健気にも、ケイトお嬢様を案じながら、結婚申請書を握りしめる侍女を演じた。


翌朝、大した支度もさせてもらえず、ケイト様の古びたドレスを着込んで馬車に乗り込むと、御者のジェイクが不機嫌顔。


「……お前が代わりに嫁ぐとか聞いてない……」

「嫁がないよ。幻術で身代わり人形作るから」



普段のお仕着せ服に着替えて、ケイト様のドレスをベースに人形を作る。髪は、ケイト様のような麦藁色ではなく、アマンダ様の髪を真似てブルネット。何しろ、「アマンダ様」として、嫁ぐんだからね。


結婚申請書に、ランブル子爵が娘の名前を記入するとき、ちょっと幻術を見せてアマンダ様の名前を書かせたの。


元々アマンダ様に来た縁談だし、その方が自然だよね。


説明したらジェイクの機嫌が治った。わかりやすい奴!


ベールを被せた人形を操りながら、ドゥーブル伯爵家に潜入成功。


伯爵家では全然歓迎されたモードではなかった。使用人達は、侍女(私)が付いてきた事で、ホッとしている様子。お世話したくないんだろうな。


幻術を使って人形を動かして、伯爵の執務室へ。長いドレスだと、歩くときに足を動かさなくてよいから楽ちん。



執務室に入ると窓の方を向いていた伯爵が振り向き様に言った。




「お前を愛することはない! 妙な期待はするな。お前は形式的な妻でしかないのだ。勘違いするなよ」




キター!! 「お前を愛する事はない」いただきました! 伯爵、それ人形ですよ。最初、執務室入ったとき、わざわざ窓の方を向いてたのって、演出? 思わず笑いが溢れそうになってしまう。




「聞いているのか? アマンダ・ランブル」


『……承知しました』




幻術で少し腰を低くしてカーテシーを演出。声がちょっと震えてしまったのは笑いを堪えてたからだけど、バレてないよね。


嫁ぐ令嬢の名前は、「アマンダ」。ランブル子爵家の後妻の連れ子の方の名前だ。ランブル子爵が結婚申請書の書類を書く時、ケイト様の名前を書こうとするところを幻術を使って、「アマンダ」って書くように仕向けたのだ。




伯爵も目の前に立っているのが人形だとは全然気が付いてない。私の幻術は、結構強力なのよ。私を派遣してる組織も知らない事だけど。組織は、幻術は逃げる時とかに相手を困惑させるようなスキルとだけ、思ってるんだ。




伯爵の執務室をそそくさと出て、伯爵家の執事の案内で、「伯爵夫人」の部屋に移動。かなり歩いたよ。




辿り着いたのは、屋敷の隅っこの閑散とした部屋。家具は、ベッドとクローゼットだけ。ふうん。




執事はチラチラ「奥様」の顔色を伺うように見てるけど、ここは、無表情で! 潜入調査には放置される環境の方が動きやすいんだよね。




伯爵は「奥様」と食事を共にする気はなさそう。食事は、私が厨房まで行って受け取る。最初、誰かの指示だったのか、具の入ってないスープとパンが一つ用意されてたので、思わず言ってしまった。




「この家はこんなに困窮しているのでしょうか。社交会で噂にならないか心配ですわ」




厨房がザワっとして、すぐに、お肉が乗ったお皿などが用意された。




「申し訳ありません。手違いで……」




シェフらしき人が苦笑いしながら言った。出てくる速度からして、用意はしてたけど、直前に差し替えたようだ。




「まあ……、くれぐれもお気をつけになってくださいませ」




チクチクと念を押して、食事を「奥様」の部屋に運び込んだ。食事内容だけはちゃんとしてもらいたい。私が食べるのだから。




取り替えて貰った食事は少し冷めてたけど、なかなか美味しかった。




翌日から潜入捜査を開始。幻術を使い、その場にいない風に装って、あちこちで聞き込みを開始した。




伯爵の愛人の男爵令嬢は、部屋は伯爵の隣、実質屋敷の女主人のように振舞っているらしい。「奥様」に敵対意識があるのか、「奥様」の動向を気にしている。食事の指示を出したのは多分この人だろうな。




女主人のように振舞っていると言っても、使用人の人事の采配などをする訳ではない。ドレスや宝石の商人を呼んで散財し、着飾るのが仕事みたいだ。




気配を消して伯爵の後について、執務室に入る。しばらく執務の様子を眺めていたら、商人からのドレス代の請求書を手にとって溜息をついた。




「……また、税金を上げるか」




ボソリと伯爵が呟いた。伯爵? もしかして、愛人の散財を補填する為に、増税してる?




伯爵家は、愛人が我が物顔で、立ち回るようになって、使用人の統率が取りにくくなったのだろう。一応、家令が頑張っているみたいだけど。綻びがあちこちにあり、不正の証拠を見つけやすかった。




「アマンダ」が嫁いで10日。白い結婚が続いていた。放置してくれるの本当楽!


不正の証拠も集まったし、そろそろお暇の時期だ。




『ああ、あなたが伯爵様の愛人の方』




幻術で、「奥様」に愛人へ喧嘩を売るような一言を言わせる。




「何ですってぇ!」




パァンと「奥様」の頬が叩かれた。よし、暴力を振るわれた事を理由に屋敷を飛び出そう。人形は軽いから、吹っ飛ばされないように気をつけながら


そう考えていると、突然、人形の腕がグイっと掴まれた。




「何の真似だ」




伯爵だ。もの凄く冷酷な顔をして人形を睨んでる。




「お前は形式的な妻でしかないと、言ったはずだ」




ドンっと伯爵が人形を突き飛ばした。しかし、場所が悪かった。人形は軽かったので2階の手すりから一階のホールに落下してしまった。




「「キャァァ!!」」




愛人や使用人達から悲鳴が上がる。流石に、二階から一階に落下したらもう駄目だろう。ああ、首のとこ折れてるし。




幻術の出力をアップして、血がドクドク流れ出ていく様を演出。




「お嬢様!」




駆け寄って人形を抱き起こす。他の人に触られるとバレるかもしれないからね。


しかし、人形が軽かったせいだと言っても、人形じゃなかったら、手すりから落下しなかったとは言えない。


伯爵は、「奥様」を殺した事になる。




「お、お医者様を……」


「……いや……、もう手遅れだ」




家令が医者を呼ぶ事を進言したけど、伯爵は手遅れだからと断った。そして、秘密裏に「奥様」の葬儀を進めてしまった。




口止め料なのか、沢山お金を貰って私は暇を出された。今更口止めしても、もう遅いです。事件後すぐにジェイクを通じて組織に報告が行っているし、貴族間で「妻殺し」と噂になってるって事で調査に来るはず。




集まった不正の証拠も提出したし、丁度良かったわ。




伯爵家は「奥様」殺害容疑と不正の疑惑で今後大変な事になるだろうな。


ランブル子爵家は、不正の件もあるけど、アマンダ様が亡くなった事になっちゃったけど、大丈夫かしら。


「生きてる」って申し出たら替え玉の事を公表しないといけないだろうし、簡単には行かなそう。その前に、不正の件で、家が取り潰しになる可能性もあるかぁ。




徒歩で伯爵家の門から出ると、馬車が待っていた。馬車の隣でジェイクが難しい顔をしている。




「ジェイク!」


「さっさと乗れ」


「えへ。お疲れ様とか言って欲しい。私頑張ったんだよ」


「……お疲れ」




ジェイクの頬が赤く染まる。




「ふふ、ジェイクもお迎えありがと!」


「さっさと乗れ」




耳まで真っ赤になっているジェイクの後ろ姿を見てニマニマしながら、場所に乗り込んだ。




「……次の潜入先も、替え玉が必要かしらね……」


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― 新着の感想 ―
嫁いで殺されたはずのアマンダは実家で元気に生きてるし 死体はどこか行ってわかんなくなるしで 事態がややこしくなってて笑っちゃう 子爵家と伯爵家は困るだろうけど因果応報だしオーライ
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