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魔法学園の入学式

 確かにわかった。


 壇上で入学の挨拶をしているその人に、誰もが羨望と欲望の眼差しを向けている大物。


 ローデンベルク王国の第三王子――セドリック・ローデンベルク王太子殿下ではないか。


 青みがかった黒髪はサラリとしていて、鼻梁(びりょう)も高く堂々とした佇まい。

 手足が長くて均整が取れているが、遠目でも背が高くて肩幅の広さが感じられる。

 あれは骨格ゆえの肩幅ではなく、鍛えているからこその筋肉だ。


 王子として、国を守る者として、鍛錬しているのがうかがえる。


 メアリーがアルフレッドに近づかないほうがいいと忠告したのも納得だ。

 二人には親交があったはず。

 アルフレッドと親しくなれば、王太子殿下との接点になりかねない。


 〝目立ちたくない〟という性分と相反する状態になってしまう。


()けよう。何としても避けて無難な学園生活を送ろう)


 だが、ジェーンの願いを聞いてくれる神様はいなかった。



「アルフレッドから聞いているよ。君がジェーン嬢だね」


 教室に入るなり、セドリックのほうから親し気に声をかけられてしまった。

 想像通り、柔和な顔立ちと相反して体格がいい。

 同い年だが、頼れるお兄さん感が出ている。


「呪いを前に勇敢に立ち振る舞ったのだとか。

 ミドルトン公爵は我が国の要人だ。私からも礼を言わせてほしい」


「あ、あの、その……」

 ジェーンは完全にしゃちほこばってしまった。


 教室中が遠巻きにジロジロと様子をうかがってくるのも精神をえぐる。


「殿下、ジェーン嬢が困っています」

「あぁ、すまない。

 寡黙なアルがいつもジェーン嬢の話ばかりするから、つい気が()いてしまって」


 アル、という呼び方からもその親密さが察せられる。


(というか、いつもとはなんだ、いつもとは)


「改めて、セドリック・ローデンベルクという。

 学園では、セドリックと呼んでほしい」


「わ、わたくしのほうから名乗らず申し訳ございません。

 ジェーン・マクファーレンです」


「この学園内は平等だ。気にすることではない。

 君もな、アル」


 アルフレッドは返事をする代わりに目を伏せた。


「それでジェーン嬢に聞きたいことがあるんだ」

「私で答えられることでしょうか?」


 セドリックはじっとジェーンの瞳を見つめ、うなずいた。


「呪いを前にして、どうしてすぐに動けたんだ?」

「…………」


 これは、なんと答えるのが正解なのだろうか。

 レイヴンに話したら、聖女としての覚醒云々と言われてしまったが、聖女かどうか疑われているのか。

 だとしたら、違う回答のほうが無難かもしれない。


「あ、あれは、呪いではないと思ったからです」


 セドリックとアルフレッドが顔を見合わせる。


「どういうことだい?」

「……えぇっと」

「セドリック殿下、教室で話すことではないかもしれません」


 アルフレッドが硬い声で制する。


「それもそうだな」


 身を引いてくれた。そのことにホッと胸を撫で下ろした。

 だが、次の一撃が、ジェーンの胃を完膚なきまで握りつぶした。


「放課後、私の応接室に来てほしい」

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