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実技開始2

 実技のあとの座学は眠い。

 ジェーンは、つい集中力を欠いてしまいそうになる。


 これが捜査会議ならアドレナリンがドバドバ流れていて神経を尖らせるところだ。事件が発生すれば、日中にどれだけ動き回っても、各捜査官が持ち寄る情報を聞き洩らすことなどない。


 それがお勉強となると気が抜けてしまうようだ。

 だが、ひとつの単語に眠気が一気に吹き飛んだ。


「来月には、遠征実習に向かいます」

 メアリーに聞かされた、命に関わるという話と重なり、息が詰まる。


「遠征といっても、初年度は近場から始めますし、宿も手配します。

 ただ、一般市民向けの宿のため、慣れない者には不自由でしょう。

 そこは社会学習だと思ってください」


 教室中が、不安と不満のない交ぜになった空気に包まれる。


「平民向けの宿ってことよね。どんな造りなのかしら」

「安全だといいのだけど」

「そもそもなんで遠征なんか」


 口々に発せられるのは、上等な暮らししか味わったことのない者の言葉だ。

 なるほど、だからこその演習なのか、とジェーンは納得した。

 魔法学園に通う生徒のほとんどは、支配階級の子女なのだ。被支配者たちの暮らしを知るという方針なのだろう。


(意外とちゃんとしてるのね)


 それでも、歓楽街や治安の悪いところには行かないだろう。

 学園が手配するのだから、安心・安全は確保されているはず。


「それと、遠征までに特別授業を受けてもらう方がいます」

 教員の声に、ひそひそとした話し声が静まる。

「――さん、――さん、ニーナさん、ジェーンさん。以上」


 チラチラと名前の挙がった人へ目配せする生徒たち。

 ジェーンも視線を感じて、スッと顔を伏せた。

 呼ばれたのは、女生徒の名前ばかりだ。


 特別授業の内容は知らされていないが、ジェーンは察した。

 もしかすると「聖女候補生」への光魔法の授業なのかもしれない。


「ジェーン……」

 アルフレッドが心配そうに声をかける。

 ジェーンはどう反応していいかわからず、あいまいに視線を揺らした。


 光魔法のことなんてよく知らないが、命に関わる聖女なんて、自分に務まるとは思えない。

 そもそも、光魔法も聖女自体も未知なのだ。

 不安はある。

 むしろ、不安しかない。

 実技で見せた力が、今のジェーンの精いっぱいだ。

 何をするかも示されずに、勝手に特別授業に放り込まれるなんて……。


「いや、待てよ」

 ジェーンは独り言ちた。


 わからないから不安なのだ。

 呪いの水だって、ジェーンにとっては「毒物」だった。

 理論さえ見えれば、不安は不安ではなくなるかもしれない。


 だとしたら、これはチャンスだ。

 知ったうえで対策を取ればいい。

 ジェーンはフンッと鼻を鳴らし、アルフレッドに向かって顔を上げた。


「アルフレッド様、私、頑張りますね!」

「……」


 とはいえ、本当に光魔法の授業かどうかの確証はないのだけれど。

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