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悪辣姫は前を向く!~底辺Web小説のポッと出ですぐ死ぬ敵キャラの弟に転生したので、彼女を救うため僕はスローライフを誓います~  作者: 高井うしお


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13話 かまどでの出会い

「で、どうでした?」


「売れたよ」


 三日後、僕は再び隠蔽魔法で姿を偽ってグレンの魔道具店を訪れていた。僕が売れ行きを尋ねると、グレンは苦虫を噛みつぶしたような顔で答えた。


「どんな人に売ったんです?」


「どんなって……研究馬鹿だな」


「ほう」


「とにかく珍しい物が手に入るなら出所は構わないってのが多いからな。単に金があるだけじゃ俺は売らねぇ」


 そんなお眼鏡にかなった客にだけ、グレンはマンドラゴラを売ったようだ。


「また持ってこようと思うんですが、どうです?」


「そんなホイホイ出せるようなもんなのかい? そっちのは」


「まあ、こっちじゃ食材ですから」


 そう答えて、これじゃ魔族だと自分で言っているようなものだ。と気づいて口を押さえたがもう遅かった。


「てめぇ……こっちが詮索しないようにしてやっているのに」


「あはは……」


 ぎろりと睨んでくるグレンに、僕は曖昧に微笑み返した。


「まあ、こちらも承知であれを買い取ったんだ。いちいち掘り返さねぇけどよ。なんでまたここに持って来たんだい」


「あなたならわきまえた客を知っていると思って」


「そうじゃない。魔族領の物をなんで売ろうと思ったのかってことよ」


 ああ、そういうことか。


「僕は人間と取引したいんです。魔族の中でも、話せる奴がいるって思えないかなって」


「ほう」


「話すと長くなるんですが……魔族と人間の関係を変えたいんです」


「そら大層な夢だな」


 グレンはそう言って鼻を鳴らしたが、僕を馬鹿にした感じはしなかった。


「と、いう訳でマンドラゴラを売ってます。次はいつ頃、どれくらいお持ちしますか?」


「すぐにはよしてくれ。最低三月は開けてくれ」


「二月くらいになりません?」


「駄目だ。すぐに手に入るって思うと客がつけあがる。代わりと言っちゃなんだが、別のもんがあれば見てやるよ」


「ありがとうございます」


「ま、気張りすぎんなよ」


 グレンにそう言われつつ、僕は魔道具店を後にした。








「おーい。順番来た?」


「あと十人ですね」


 魔道具店から僕は真っ直ぐに例のボンボンの店に向かった。そこにはシルハーンを順番待ちで待たせてある。ここに来る前にファラーシャに見つかった僕はまたボンボンを買ってくるように厳命されたのだ。なんだかんだハマったらしくて、あれから目玉を食わせろとか文句は言ってこない。


「例の商品はどうでした?」


 列に並びなから、シルハーンが小声で聞いてくる。


「ん、売れてたよ。ただ、しばらく供給はいいってさ。何か別の売り物を考えないと」


「ふーむ……。そうしたら城で資料をあたりますか。以前の貢ぎ物のリストがあるはずです。有力者がそれぞれの特産品を持ち寄っていましたから」


「それはいいヒントになりそうだね」


 そうこうしている間に順番が来て、僕はありったけの金でボンボンを買った。


 今度からは料金取らないと……僕の小遣いが全部ファラーシャのおやつになってしまう。








 城に帰った僕は、シルハーンから貰ったリストを書斎に持ち込んで、商売に使えそうなものをピックアップしていた。それを壁に貼った魔族領の地図にメモしていく。当時の有力魔族と今の勢力が違うので、それを付き合わせていくのが面倒だ。


 そんなことをしているうちに夜が更けていく。ああ、成長期はもう寝なきゃな。でも……。


「腹が、減った」


 ぐう。とお腹の虫が鳴く。このままだと空腹で眠れそうにない。かといってちょっとつまむようなお菓子もない。ファラーシャのボンボン、ちょっと貰っておけばよかった。


「よし、なんか作るか」


 この時間だと、厨房には誰も居ないだろう。食材をちょっと拝借して……これでも自炊はしていた方なんだ。ストレス解消がドカ食いと飲酒だったからね。自分で言ってて悲しくなってきた。








「何かあったかいものがいいな」


 基本魔族領はうっすら寒い。位置的にも北にあるしね。スープでも作って、体を温めて眠ろう。僕はそう考えながら、厨房へと向かった。


 半地下の厨房は真っ暗だ。わずかに月の光が入ってきている。


「何があるかな?」


 僕は手元に魔法で光を浮かべ、中に入っていった。ああ、でっかいベーコンがある。これを少々拝借して……あとは野菜か何か……っとその時だった。


「わあああああっ!」


「ひえっ!?」


 急に悲鳴が聞こえ、僕は飛び上がった。お化け! な訳ないか。どちらかというと化け物はこっちだよ。僕は手元灯りの光を大きくする。すると浮かび上がったのは――。


「……子供?」


 いや、僕も子供なんだけどさ。そうじゃなくて、小さな二人のオークの子供が、かまどの横で身を寄せ合って震えていた。


「こんばんは?」


 僕がそう声をかけると、子供たちは僕にしがみついて――いや、これは押さえつけられているな。


「ごめんなさい! ごめんなさい! どろぼーされると怒られるんです!」


 そう必死に僕に訴えている。


「えっと……僕を怒る人はそういないと思うよ」


 かわいそうだけど、僕は麻痺の魔法で二人の動きを封じた。


「……で、誰?」



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