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この地上界の種族に紛れることにした!

「さぁ、よ~くわらわの瞳を見ておるのじゃぞ!」


 大山と吉岡はグレモリーの黒真珠のような美しい瞳を見詰め、逆にグレモリーは2人の目の瞳孔に注目していく。

 それから10数秒後、大山と吉岡はまるで催眠術にかかったように、瞼が半開き状態のぼんやりとした表情に変わり始めた。


「ゲル・ガルサマイド・ダラマスクス・アラダサルキル・ガルマルタ・アラダカルア・ゲル・アラダスメルキヘル・カルマサキサリル(我に従いそなたらの培った知識を与えよ、そして我の存在は霧の如く記憶から消え去るのだ)」


 グレモリーが悪魔の能力を使い彼らの記憶の引き出しから知識をコピーするまで僅か1分ほどであった、この地で必要な生活に関する知識を手にしたグレモリーは、悪魔らしく警官達の財布から金をネコババし、堂々と交番から出て行った。


(さて、あの吉岡が言っていたように、この地では居城を構えるにしても身分証とやらが必要不可欠のようじゃ、それに…どうもこの衣装はこの地に相応しくないようじゃし…まずはこの奪った金でわらわの新しい衣装を手に入れるとしよう♪)


 こうして奪い取った警官達の知識を利用したグレモリーは、若者に人気のあるお洒落ストリートへと赴き、初めてブティックで買い物をした、最初グレモリーを見た店員は一瞬硬直したが、そこは悪魔である!適当に「舞台の稽古をしていたら自分の服を入れたバッグを盗まれて、仕方なくこの格好のまま来ちゃいました~!」と嘘を付き、ついでに拝借した警官のお金で、まんまとこの時代に合った衣装を手に入れる事が出来たのだ!。


(うぅむ、どうも人間共の衣装は窮屈でかなわぬ…にしても、あの姫の衣装を身に着けていた時はかなり視線を感じたが、何故か今も視線を感じるのは何故じゃ?)


 考えながらショッピングストリートを歩くグレモリーに、右手側の高級ブティックのショーウィンドウに映る自分の姿が偶然目に入った!。

 ウィンドウのガラスに映る自分の姿を見たグレモリーは、驚きと同時に息を呑んでしまう!。


(こ、これがわらわなのか?)


 肩まで伸ばしたストレートな髪に、ブランドロゴの刺繍が施されたホワイト色のベレー帽を被り、薄いイエロー生地で、襟が二重になっているレイヤード風のダブルカラースキッパーニットを着こなし、更に細やかな白のレースフリルが目を惹くミニスカート、明るい色の上半身を目立たせる為、足元は黒のロングブーツで全体を引き締めるようにコーディネートされた自分がガラスに映っていた!。


(ほう…あの女店員、ここまでわらわを美しく着飾ってくれるとはたいしたものじゃ、いずれこの地を第2地獄界にしても、あやつだけはわらわの側近に迎えてやろうぞ♪)


 何故人間の視線が気になっていたのかという原因を解明したグレモリーだったが、拝借したお金がもう小銭しかない事に気が付いた!悪魔といえども腹は減る、残金を確認してみると450円しかない…。


(うむ、衣装代にかなりかかってしまったようじゃ…これでは居城を構える事すら出来ぬではないか…いや、今日の食費すらヤバイのでは?)


「ねぇ?ねぇ?そこの可愛いお姉さん、一人で買い物中なら俺と何処かで食事でもしない?」


 ウィンドウを見詰めているグレモリーの背後に、黄色い頭髪と両耳に何箇所もピアスをした派手な男が声を掛けてきた。


(ここに来るまでにこんなオス共は無数に見たが、こう近くで見てもわらわに相応しくないほど下等な生き物じゃな…)


「わらわに何か用か?」


 男の方向に振り向いたグレモリーの容姿を目の当たりにした派手な男はその美貌に少し怯んだが、その後すぐに不敵な笑みを浮かべグレモリー言い寄ってくる。


「君暇そうだしさ、俺まだ食事をしていないんだよ、おごるからさ、俺と食事でも行かない?」


「お(ぬし)金は持っておるのか?…こう見えてわらわは大食漢じゃぞ!」


「へへ、昨日バイトの給料が出たばかりだから、13万円ほどあるぜ!付き合ってくれるなら全部俺が払ってやるよ♪最悪、クレジットカードも持ってるしよ!だからさ、一緒に行こうよ♪」


 これほどの美女に出逢ったチャンスを何が何でも手にしたくなった男は、必死でグレモリーを食事に誘う、しかし悪魔であるグレモリーにはこの男の無粋な魂胆を完全に見透かしていたのだ!。


(この下等な種族のオスが!高貴なわらわを午餐(ごさん)に誘い、あまつさえわらわと寝所を共にしようなど、1億7000万年早いが…ま、ちょうどよい!今度はこやつを利用しわらわの資金に充ててやるか♪)


「ならば、このわらわに相応しい店をあないいたせ!」


「は、はは~♪お姫様!」


(ふっ、馬鹿なオスじゃ!精々わらわを持て成すのじゃぞ♪)


 少々悪魔公爵のプライドが邪魔をしたのだが、空腹だったグレモリーは黄色頭の派手な男に付き合う事にし、とある高級フランス料理店とやらに案内された…しかし、ガラスケースの中にある品々の値段を見て(これでは後ほど手にするわらわの資金が減るではないか!)と危惧したグレモリーは、別の安くていい店を案内して欲しいと注文した。


「え?…そ、そう?…お、俺はここでも良かったけど……じ、じゃぁ、俺の行き付けの居酒屋があるけど、そこは昼からでも飲めるし、安くてメニューも豊富なんだ!味も俺が保証するぜ♪よし、そこに行こう!」


 少し男として格好を付けたかに見えるが、グレモリーには男の本心が見えていた、内心はあの値段を見て躊躇し財布の中身を思い出しながら焦っていた事を…。


「うむ、わらわも気兼ねなく食事を出来る所がいいと思ったのでな!」

(たわけ、たかが食い物にこの貧しそうな男の金を使わせてなるものか!奴の金はわらわのものじゃ!おほほほほ♪)


 大金を使わせる事を阻止したグレモリーは<居酒屋>という店に向かう事にした、果たしてそれがどんな店なのかは、いまだ彼女が知る由も無かった…ただ(食事が出来る♪)その言葉しかグレモリーの頭には浮かんでいない。


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