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ラクダと再会

 何とかこの人間界で住所と身分証を手にしたグレモリーだったのだが、また卓袱台の前に座り日本茶を啜りながら悩んでいる。

 その原因というのが、あの自殺未遂騒動の後、秋葉原で格安パソコンとその付属品を購入してから意気揚々と自宅のアパートに戻った時に起こったのである!。



<前日の事>



(ほっ、ほっ、ほ♪あの店の者からパソコンなる知識をわらわの魔力で奪ってやったが、この小さき箱はかなり優秀じゃの♪部屋に居てこの世の動向が全て知ることが出来るとは♪まるで早くわらわに人間界を征服してもらいたいと懇願しているようじゃの♪)


 大きな紙袋を両手に提げ、ご機嫌でアパートの階段を上がろうとした時、何処からとも無く聞き覚えのある声がする。


<お~い、グレモリー!うちだよ、うち♪ねぇグレモリーったら!>


 誰かがグレモリーの本名を叫んでいる!。

 この世界で本名を呼ばれたのは初めてだったからか、グレモリーは用心の為、完全に自分の魔力を封印し、あくまで一般女性になりきりその声を無視する事にした!。


(しかし、何故わらわの名を?…一体誰じゃ?…まさか、もう悪魔祓いの手の者に嗅ぎ着かれたか!)


<もう、無視しないでよ!うちだよ、グレモリーに名付けられたラクダという名前の<ラ・ク・ダ!>やっとここに来れたんだから!>


(ラクダ?…おぉ、ようやく配達されたのじゃな♪)


 ラクダの声を久しぶりに聞いたグレモリーは目を輝かせ辺りを見渡したが、ラクダの姿は何処にも無い、あの大きな身体だからすぐに見付かるはずなのに、グレモリーの視界にはラクダの姿を見る事すら出来なかった。


「ラクダか?何処に居るのじゃ!早ようわらわの前に出て来い!」


<ここだよ、ここ!>


「だから何処なのじゃ?わらわをからかっておるのか!」


 グレモリーはずっと声が聞こえる方向に視線を向けているが、一向にラクダの姿は無く、その視界に入っているのは屋根付き駐輪場に置かれてある数台の自転車と1台の原付スクーターだけであった。

 ただ、そのスクーターからは何故か懐かしいオーラを漂わせている。


「ま、まさかの……」


 半信半疑のままグレモリーは駐輪場に停めてあるスクーターに近寄っていく。

 しかし、そのスクーターに寄れば寄るほどあの懐かしいラクダの存在感を肌で感じ始めた。


<やっと気が付いてくれたのね♪おひさぁ~、グレモリー♪>


「ラクダ?…なんでそうなっているのじゃ?…それに、お(ぬし)の身体には<Vino>と書かれておるではないか?…どうして原付スクーターに変化しておるのじゃ?…まぁ、何となくそのスタイルは在りし日のお(ぬし)に似てはおるが…」


 魔界では常に共にしていた相棒のラクダ、絢爛豪華な衣装を身に纏ったグレモリーに合わせ、ラクダも豪華な装飾品で全身を飾っていたのだが、今のラクダはかなり地味なスタイルになっていた。

 丸いライトにころりとしたスタイル、色はラクダの体色と同じく濃いベージュ…自慢の4本足は丸い2つのタイヤになっている。


<あのさ、うちをグレモリーの居る世界へ転送させる前に、事務次官さんがこの世界の事を調査してくれたの、それが原因でうちの到着が遅れたんだけど、本当のうちの姿ではあの世界では目立ちすぎるという事で、グレモリーの手軽な乗り物にしようとうちの魂をコレに憑依させたというわけ!>


「そうか、離れていても、あやつらはわらわの事を想ってくれていたのじゃな…しかしラクダ、お(ぬし)は本当にその姿でよいのか?」


<別にいいよ、またグレモリーと今度は人間界で行動できるんだから♪>


 そう言ってくれるラクダには嬉しいが、またここでグレモリーは吉岡達の知識を頭に浮かばせる、それは原付免許を取得しないと、せっかく転生までしてやって来たラクダに乗れないからである!。

 それに、これまでなら簡単にラクダの背に乗れば良かったのだが、今度はグレモリー自身でラクダを操らなくてはならない。


「じゃがの、この世界ではスクーターとやらに乗るにも運転免許なる物が必要なのじゃ…」


<そんなの気にしなくていいじゃない♪悪魔だし!うちがその運転方法を教えてあげるからさ、今からこの世界を案内してよ♪>


 まぁグレモリーにしてもこれまではずっと徒歩だったので、ラクダに乗れば移動も楽チンになると考えてはみたが、この世界に参上した矢先に警察官から声をかけられ、オマケに交番まで連れて行かれた情けない記憶がどうしても邪魔をし、仮に無免許運転がバレたらまた交番とやらで面倒な事になるはずなので、簡単にラクダの提案を受諾する事は出来なかった。


「ラクダよ、今のわらわは野望の為に世を忍ぶ仮の姿として人間の中に潜んでおる、時が熟すまでわらわは<暮森理莉子(くれもりりりす)>となっておるのじゃ、なので今はこの地の掟に従うが賢明なのじゃ!だから、わらわが運転免許を取るまでここで待機しておいてくれぬか?」


<何だか窮屈な世界だね、いいよ!でも早く運転免許?てのを取ってね♪>


「おっほっほ♪すでにわらわはこの世界に居る人間共の知識を我が物にしておる!運転免許などチョチョイのチョイじゃ♪」


 こうしてラクダとも再会したグレモリーは、初めて購入したパソコンでの作業[猿でも取れる原付免許]の検索から始まり、一から申請の手順とここから最寄の運転試験場を調べ、それから本屋で悪魔らしく[原付免許虎の巻]を立ち読みで全ての法規を暗記し、わずか1日で合格ラインの知識を身に着けた。


(おほほほ♪わらわにとって、こんな下等種族の問題を暗記するなど容易(たやす)いわ♪ん?…何々?[運転免許を申請するには以下のものが必要です]じゃと?)


 ♢原付免許を申請するには、次のものが必要です♢

 住民票の写し(本籍地記載のもの、発行後6ヶ月以内)

 顔写真(申請前6ヶ月以内、縦3.0cm×横2.4cm、無帽、正面、上三分身、無背景)

 筆記用具(鉛筆もしくはシャープペンシル、消しゴム)

 印鑑(認め印で可)

 メガネ、コンタクトレンズ(視力矯正が必要な人の場合)

 運転免許申請書(試験場で配布)

 受験票(写真(3 x 2.4cm)を貼ってください)

 手数料(試験手数料、交付手数料、原付講習手数料)

 本人確認書類(健康保険証、マイナンバーカード、パスポートなど)


(うっ…こっちを揃える方が面倒じゃ……それに、これにも金が必要なのか…じゃが、ラクダはわらわにとって必要な相棒、また金はかかるが免許を取るか…)



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