第五十六話 「подарок(贈答)」
「(・・・・・)」
"カタ、カタタタタタタ...."
「(....中根の記事は、また
エレーナに頼むとして....)」
深夜、藻須区輪亜部新聞第四編集局。
【どうも、この間見た所によると、
あのレベデワはスサケフスキと
連絡取ってるみたいですね...】
【・・・一体あの二人は何の話をしてるんだ?】
【いやー そこまでは分らんスけど....
でも、この間レベデワがスサケフスキと
電話してる所を見たんですが、何か、
河野先輩の話とかも出てたような...】
「(・・・電話で俺の話が出たからって
別段不思議な事じゃ無いが....
それより、かなりの頻度で
あのレベデワとか言う新人社員と
スサケフスキがやり取りしてるってのが
気になるな...)」
河野は、明かりを消したままの暗い部屋の中で
目の前のパソコンに向かい、
キーボードを叩きながら隆和から聞かされた
"レベデワとスサケフスキの電話でのやり取り"
に考えを及ばせる....
【まあ、俺の名前が出たからって
特に考える事でも無いが...
お前、そのレベデワに何か詳しく話とか
聞いたりできないのか?】
【いやー ちょっとそれは無理じゃないですかね
なにせ、私はあのレベデワにはどうも
いい年をして少女アニメに
現を抜かしてる
気持ち悪い親父みたいに
思われてるみたいなんですわ】
【そうか・・・】
「(この所....
上手くは言えないが....何か....)」
"11:05"
「------もうこんな時間か」
"ガタッ"
「・・・そろそろ、向こうに行かないと
間に合わないな」
"カタッ"
「・・・・」
"バサッ"
「(・・・・)」
椅子に掛けていたスーツの上着を手に取り
防寒具を着込むと、そのままパソコンの電源を落とし
部屋の外へと向かう--------
「(...確か、約束は12時だったな)」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
"ギイ....
「(・・・・っ)」
「Kono,are you...?
(-----"コウノ"か....)」
「Minister. Foedsy...
(フォエドシー大臣...)」
会社からタクシーを使い、20分程時間を掛け
チェルノゴロフカと呼ばれる、
モスクワの中心部からやや外れた場所にある
名前すら無い様なうらぶれた教会の
古い、木造りの扉を開けると、
その教会の中に並べられた長椅子の一つに
ぽつりと両手を組んで、まるで何か
祈りを捧げる様な姿勢で座っていた男が、
ドアの側にいる河野に向かって振り返る
「....I didn't expect you to come later than me.
You seem to be a man with
a lot of time on your hands.
(....私より、後に来るとはな。
君も、ずい分時間に余裕がある人間の様だ)」
"コッ コッ コッ コッ コッ--------
「(かなり早めの時間に来た筈だが....)
No, the streets of Moscow were
more corowded than I expemted------
(いえ、思ったよりモスクワの道が
混んでいたもので------)」
「・・・・」
"ザッ"
「(・・・・)」
自分の返事を聞いているのか、聞いていないのか
この深夜にこの場所で待ち合わせの約束をしていた
フォエドシーが、教会の中程で
再び自分に背を向け、席に着いたのを見て
河野は教会の中程へと足を進ませて行く
「Minister Foedsy...
(....フォエドシー大臣...)」
「----------」
「....Minister...?
(....大臣...?)」
「・・・・」
「(・・・・)」
"ガタッ"
時間が止まった人形の様に一言も発さず
少しの間を開けると、フォエドシーは突然
隣に立っている河野に向き直り
無表情のまま挑発する様な目付きで見上げる
「Cut it out,did you "bring" it?
(------それより....
"持ってきた"のかね?)」
「...! Oh, sir,
(・・・! え、ええ------)」
「Yes....
(そうか....)」
「・・・・」
"催促"された事に慌てて
河野は鞄の中に入れていた箱を取り出す
「...How many do you have today?
(・・・今日は、何本だ?)」
「...No, today is one more than last time,
how about eleven?
(・・・いえ、今日は前回より一つ多い、
11でどうかと...)」
「...! 11....
(・・・"!!"
"11"か....っ!)」
"ガタッ"
鞄から取り出された"箱"、そして
河野が口から出した"11"と言う数字を聞いて、
普段無表情を貫いているフォエドシーの顔が
子供の様に喜びを露わにする
「(どうやら、ロシア人でも、
"ソーセージ"は好きって事だな....!)」
【伊藤のソーセージ】
"ガサッ!
「....Oh... Russia------,
Russia,Russia Russia...!
(....おお... ロシア------
ロシア、ロシアロシア....っ!)」
「Apparently, Minister Foedsy liked
the ausages a lot this time,
(どうやら、フォエドシー大臣も、
今回のソーセージは大分
お気に召されたご様子--------、)」
「------hmm....
(------フン。)」
"ガサッ"
河野の言葉に、やや不機嫌な様な、それとも
それを見せたく無いのか
表情を押し隠している様な素振りを見せると、
フォエドシーはソーセージの箱に詰まった
"中身"をまるで大事なサブリナ人形をいたわる様に
自分の手の内へと滑り込ませる....
「I see. It seems you can
still do the "job"....!
(....なるほどな。どうやら、君は
やはり"仕事"が出来る様だ....!)」
「No------
(いえ-------)」
"ガサッ"
「"Marc" again?
(・・・今回も、"マルク"か?)」
「...Yes, I thought it would be a
good idea not to bother
Minister Foedsy too much------,
(・・・ええ、あまりフォエドシー大臣の
お手を煩わせるのも
宜しく無いのかと------)」
"ガサッ ガササッ"
「(・・・・)」
「....Wow,,, O,ohhhh,,,
(....おお... おおおぉぉぉ....)」
箱に詰まっていたソーセージを取り、
箱の中身が露わになると、そこには
すでにユーロ圏では殆ど使われなくなった
"マルク紙幣"が輪ゴムで留められ、
箱からはみ出す程詰まっているのが見える....
「...Marc,,,Marc,,,,!
(....マルク...マルクか....!)」
「So, See you,sir------
(では、これで--------)」
「・・・・」




