第五十三話 「Варлеевский собор(聖ワルレイエフ大聖堂)」
「Вы действительно
думаете что ваша
верность нации
является вашей
причиной?
(・・・お前は、国家に対する
"忠誠"が本当に自分の行動原理、
"理由"だと思っているのかね....?)」
「・・・・!」
「Слепо очарованные
лояльностью к
организации вы не
видите правды!
(組織に対する忠誠に盲目的に心を奪われ、
お前には、"真実"が見えて
いないんじゃあないか・・・!)」
「Это!
(そ、それは・・・!)」
「В конце концов это
довольно забавно.
(やっぱり、かなりおかしいわね....)」
Абсолютная-Ø、トレーニングルーム。
"ダンッ!"
「Давай мой друг!
Настало время
освободиться от нации
Мы это Россия!
Нет я буду стремиться
к идеалу в мире далеко
за пределами России!
(さあ、友よ! 今こそ国家から解き放たれ
我々は、このロシア------っ!
いや、そのロシアよりも遥かな世界にある
"理想"に向かって突き進むのだ-------!)」
「П-идеально...!
(り、理想・・・!)」
「(・・・・)」
レベデワが、暗い室内で今日も講習と称して
何か政治的な思想を仮想空間の中で再現している、
テーブルの周りにいる二人の男性作業員を見て、
何か"別の意図"の様な物を感じながら
部屋の隅にいる二人の作業員に目を向ける....
♬ トゥー トゥー トゥトゥトゥー
「(Сусаковский...)
(スサケフスキ・・・)
Директор Цвефов.
(ツベフォフ所長。)」
「Лебедева
(・・・レベデワ)」
「Я позвоню тебе
ненадолго так что могу
я выйти на улицу?
(少し、電話をするから、外に出ていいかしら)」
「телефон, да
(・・・電話、か)」
「Интересно не
годится ли это
(------ダメかしら)」
「・・・・」
"スッ"
トレーニングルーム内の教壇に座っているツベフォフに
レベデワが電話の許可を求めると、ツベフォフは
椅子から立ち上がり穏やかな足取りで
ゆっくりと近づいて来る....
「Телефон, говоришь,
(・・・電話、とアナタは言うが....)」
「・・・」
「Этот душераздирающий
курс пока является
добровольным но здесь
он также является
частью работы.
(この、心和の講習は、一応は
自由参加の形になっているが、れっきとした
ここでの労働の一部にもなっている...)」
「Нет мне нужно
позвонить из-за
очередного отчета
компании.
(いえ------、会社の定時報告で
電話をしなければならないのだけど...)」
「(・・・・)
Идти.
(------行きなさい)」
「Ну тогда,
(・・・それじゃあ....)」
"ザッ ザッ ザッ ザッ--------
「(Лебедева--------)
(レベデワ--------)」
「Этот мир - нация...
Нет ориентироваться
надо больше на тех
кто знает Сибирь.
(この世界は、国家...
いや、それ以上の、"シベリアを知る者"の
"存在"によって導かれなければならない...)」
「Вот так,
(そ、その通りだ------)」
"ザッ ザッ ザッ ザッ....
「(Лебедева--------)
(レベデワ--------)」
部屋から出て行くレベデワの後姿を
ツベフォフは、後ろからただ見つめる-------
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「Вы Сусаковски?
(・・・お前が、スサケフスキか?)」
"ヒュウウウウウウゥゥゥゥ.....
「Вау! Ах ты--------!
(・・・おっ! あ、アンタは------っ!)」
"バサッ バササッ!"
モスクワ、聖ワルレイエフ大聖堂。
「Нет нет Лебедев сказал
что если я подожду
здесь то придет
партийное завещание
вот я и дождался.
Слишком поздно
не так ли?
(い、いや、レベデワが、ここで待ってりゃ
"党志"が来るとか言ってたから待ってたが....
ずいぶん遅かったじゃねえか?)」
「Сусаковский?
(・・・"スサケフスキ"...?)」
「...! Ах да да!
(・・・・! あ、ああ、そう、そうだ!)」
「・・・・」
モスクワの主要部、赤の広場と呼ばれる
赤い煉瓦が敷かれた場所の一角にある、
この広場の建設とほぼ同時期に建てられた
聖ワルレイエフ大聖堂内の、あまり人気が無い
庇のある回廊の様な場所でスサケフスキが、
吹き付ける雪の寒気に耐えながら
じっと雪景色を眺めていると、
まばらに見える観光客の人並みをかき分けて、
シャプカ(毛皮付きのロシア帽)
を目深に帽ったサングラスをした男が
地面に残る雪を踏みしめながら、目の前に
やってくる....
「Хе-хе. Несмотря на то
что сейчас так холодно
тебе тоже не тяжело?
(------ヘヘッ。
こんなにずい分寒いってのに、
アンタも大変だねえ?)」
「・・・・」
"ザッ"
「・・・?」
目の前に現れた、自分よりも長身の
サングラスを掛けた男は、
一言も喋らず辺りを見回すと
再びスサケフスキの方に向き直る
「Я слышал что есть о
чем поговорить,
(・・・何か、話があると聞いたが....)」
「хехехе нечего сказать.
Ты тоже это знаешь да?
(・・・へへっ 話も何も...
アンタも分かってるだろ?)」
「・・・」
"ビュオオオオオオオ----------
男の機嫌を取ろうと愛想良く
卑屈な笑顔を浮かべながら、スサケフスキが
男の様子を伺うが、どうやら親しくする気など
微塵も無いのか、男はまるで反応を見せず
ただ、自分の体に吹き付けて来る雪を
冷たい目で見下ろしながらその場で
立ち尽くす--------
「есть о чем поговорить?
(・・・話があるんだろう?)」
「Ах ах,
(・・・あ、ああ------)」




