第五十二話 「шаги(足音)」
「(・・・・?)」
"ガサッ"
「(ずい分、キレイと言うか....)」
午後八時。
「(・・・・)」
"ガサッ"
残業を終え、現在モスクワで仮住まいとしている
社員寮へと戻ると、河野は
1階にある郵便ポストに入れられた
葉書や広告を見て、思わずその葉書に
伸ばし掛けた手を止める
「(大体、こっち(ロシア)の配達なんて
けっこう雑な仕事が多いんだがな....)」
"カッ カッ カッ カッ---------
「・・・・」
この所、微かではあるが、
「・・・・」
言葉に表せない様な...
「(傘立て・・・)」
五階にある自室の前まで階段を登り終えると、
自分の部屋の前にある
"傘立て"を見下ろす
「(管理人が掃除でもしたのか....?)」
部屋のドアの前にある傘立てに目を向けると
考え違いなのかも知れないが、
その傘立てが朝部屋を出た時より
上手く言葉に表す事はできないが
何か、"変わっている"様に感じる....
"コン コン"
「中根ー いるか」
"ガチャ"
「・・・何スか ....今日は中華食べたんです...」
向かいの部屋に住んでいる
巨漢社員、中根 学の部屋のドアを叩くと、
重力に抗う事ができないのか、中根は
重そうな体を揺らしながら
鈍い足取りで部屋の中から出て来る
「・・・お前、今日俺の部屋の前とか
歩いたりしたか?」
「何なんスか... いきなり...」
どうやら、すでにベッドに入っていたのか、中根は
まるで遠くの物を見る様な目付きで
自分の部屋のドアの前に立っている
上司に目を向ける
「・・・・」
「河野支局長?」
「・・・いや、何でも無い....」
「・・・・??」
「悪いな。 寝てる所だったか?」
「いや、昼は中華で、
夜は和食でしたからね....
-------全然平気ですよ」
「・・・・」
"ガチャ"
「(中根は、俺の部屋の前を
歩ったりしてないみたいだな....)」
自分の気のせいだったかと思い、河野は
中根の部屋の前から自分の部屋の扉を開ける
「(・・・・)」
"ピッ"
そのまま、パソコンの電源を点け
壁際のソファに両手を組みながら、
部屋の中を見渡す様に薄く目を見開く....
「・・・・」
"ヒュオオオオオオオォォォォ---------
「(・・・・)」




