女傑王VS機械女王~互いの身体に宿れる使命【肉フェス&改造企画同時参加作品】
長岡更紗様主催企画『肉フェス3』並びに、黒森冬炎様主催企画『改造企画』参加作品です。
冒頭の戦闘描写を挿入しました。
橙の世界『ロードガルド』のメインヘイム『シーマヘイム』に本拠を置く国境なき騎士団『歯車騎士団』最奥部で、『レッドガルド』の国境なき騎士団『鉄騎士団』直属部隊『白き女傑』と歯車騎士団直属部隊『ロードレンジャー』の合同訓練の終わりに、歯車騎士団団長で首から下が機械の女性『機械女王サターナ』と鉄騎士団団長のブリジット族の屈強な女性『女傑王メフレックス』はサターナの相棒の土属性QG『巨人女王ガイア』の立会いの下、互いの拳を交える運びとなった。
「ELアビリティ『バトルフィールド・エクササイズ』展開!始め!」
ガイアはメフレックスとサターナの周りに半球状の訓練用バトルフィールドを展開し、二人に開始の合図をした。
「行くわよ、サターナ!奥義、『紅蓮万烈拳』!!」
先手を取ったのはメフレックスで、拳打型火属性ELアーツ『紅蓮万烈拳』をサターナに繰り出した。
メフレックスから繰り出される炎を帯びた無数の突きをサターナは機械ならではの読みと鋼鉄の両腕で全てパリィした。
「ふふっ……、身体だけでなく、技も鍛え上げられているわね……。でも……、手数だけではこの機械の身体は穿てないわ!ELアーツ、ソイル、ダイヤモンド、インパクト!!」
サターナは拳打型土属性ELアーツ『ソイルダイヤモンドインパクト』を繰り出して反撃した。
サターナの橙色の光を帯びた突きはメフレックスとは対照的に単発だが、重みのある一撃だ。
メフレックスは両腕の籠手で防ぐも、あまりの重さにやや遠くに弾き飛ばされた。
(何て強さなのかしら……。まるで全身凶器ね……。)
メフレックスは膝を着き、肩で息をしている状態だ。
サターナの機械の身体の前ではいかに屈強な肉体も物の数ではないと言えよう。
サターナは表情一つ変えずにメフレックスに歩み寄った。
(これでもわたしは……、鉄騎士団団長にてホワイトアマゾン隊長でもあるの!これしきの事で……、負けるわけにはいかないわ!)
メフレックスは再び籠手を構え起ち上がると同時に……
「奥義、爆裂強襲拳!!」
メフレックスは続け様にサターナの金属質の腹部めがけて拳打型火属性ELアーツ『爆裂強襲拳』を繰り出した。
(!!……さっきより猛々しい技……!いえ……、それ以上に美しく感じる……。……ふふっ……、その美しい技で儚げにされるならそれも悪くないわ……。)
彼女は避ける素振りも見せず直に技を受け……
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
メフレックスの拳がサターナの腹部を捉えると同時に爆発が発生し、サターナは悲鳴を上げながら遠くへ吹き飛び倒れた。
(……これで……、決まったかしら……。!……えっ……!?)
メフレックスは渾身の一撃がサターナに通じたのかと思ったが、暫くしてサターナが静かに起ち上がる様に驚いた。
そう、サターナは自分の身体に搭載されているEL防御機能『ELシールド』でフィジカルダメージを防いでいたのだ。
もしもELシールドが機能していなかったらその上位機能『エマージェンシーフィールド』が機能し、あらゆるダメージを無効化する代わりに仮死状態に陥っていただろう。
「ふふっ……、あなたもとっても強いのね……。でも……、そろそろ終わりにしましょう……。ELアーツ!イワオぉ、コークスクリュゥー、ブロォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
サターナは全身を七色に光らせながら、両足のローラーでメフレックスに突進すると同時に、右の拳を高速回転させ、筋肉がくっきりとした彼女の腹部めがけて拳打型土属性ELアーツ『イワオコークスクリューブロー』を繰り出した。
(!!……本気で倒しにかかってる……!でも……、わたしも抗わせて貰うわ!)
メフレックスも籠手でサターナと刺し違える形で突きを繰り出し……
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
今度はメフレックスが悲鳴を上げた。
サターナの拳がメフレックスの精悍な腹部を捉え、一方メフレックスの拳はサターナの腹部に僅かに届かなかった。
メフレックスは腹の底から破裂するような痛みのあまりサターナの腕の中で昏倒した。
メフレックスの表情はさっきまでの戦闘が嘘だったように安らかだ。
もしも、訓練用バトルフィールドが展開されていなかったら間違いなく死亡しただろう。
何故なら、機械の力は人を超えた力なのだから。
サターナはそのままメフレックスをお姫様抱っこして歯車騎士団の医療棟に運んだ。
「う……、ん……。はっ……!ここは……。」
「ふふっ……、目覚めたのね。良かったわ。」
一日明けてメフレックスが医務室のベッドから目覚めると、首から下がローブ等で隠れたサターナがいた。
「そういえばわたし……、あなたの拳を受けて……。」
「わたしもあなたの拳を腹部に喰らって感じたの。機械の身体故に痛みは感じないけど、衝撃を通じてあなたの信念の強さをね。精悍な身体から無限に湧き上がる信念……、火口より噴出する溶岩のようで惚れ惚れしたわ。」
「……わたしも……、あなたの技を喰らって感じたわ……。やはり鍛え上げた身体でも機械には敵わない……、いえ……、それ以上にあなたなりの哀しみにも似た感情を……。違う……、哀しみを超えた信念を感じたの……。機械の身体になったのも……、何らかの信念があっての事かしら……?」
「……わたしは……、この身体に望んでなった訳じゃないわ。」
「ならばどんな経緯で……?」
「成り行きよ……。わたしはあらゆる人種の始祖である『マプロディ族』の生き残りなの。」
「マプロディ族……、確か乳房と陰茎を同時に持った種族で現在は希少種の種族の一つね……。」
「ええ、このロードガルドがミドルガルドの『グラン地方』と呼ばれていた頃、わたしはその地方の機械系EL技術が発達した『シーマ王国』の王家に生まれたの。国中の技師達はその技術で挙ってゴーレムと呼ばれる人型カムクリを建造していった。ゴーレムは物々しくて無表情だけど、重い物を造作もなく運べて、何より健気で可愛くて惚れ惚れするわ。でも……、宮廷お抱えの最も腕の立つ技術士官『ドリー=ハミング』、そう、死の商人で知られる現在の『UD商会』の会頭の祖先である彼はシーマ王国の属国『ルール候国』の当主『カレック=チャペル=ルール候爵』に独立を煽った挙げ句取り入ったの。あれから国中のゴーレムが一斉に手当たり次第破壊の限りを尽くすようになった……、そう、暴走したの。わたしは唯一暴走しなかった相棒のゴーレムであるガイアと共に、王国を守るために戦った末にルール軍のゴーレムに跳ね飛ばされて……。」
「致命傷を負ったという事ね。」
「ええ、目覚めた時には辺り一面が廃墟と化したの。自分の身体を見てみるとまるで鉄の魄という感じだったわ。致命傷を負ったわたしの身体を機械化したのは虹属性のQG『戦女王』と彼女によってゴーレム型カムイと化したガイアだったの。わたしの身体には今は滅びし『古代機械王国シーマ』の機械技術と戦女王の住まう虹の世界『ゴッドガルド』のEL技術がふんだんに詰まっているの。グラン地方のゴーレムの中で唯一残存したガイアはこう言ったわ。わたしの身体に宿るEL技術で弱きを護り心ある者の支えになれと……。彼女が初めて発したこの言葉がわたしの今の使命よ。」
サターナはメフレックスに自分の過去について語った。
「わかったわ……。今の話を聞いて……、わたし……、あなたの事をもっと支えたくなったわ。」
「ふふっ……、ありがとう……。今度はわたしからもいいかしら?」
「ええ、いいわ。」
「あなたは何故身体を鍛えるの?」
「わたしは……、ブリジット族の女性として生まれた以上、来るべき刻に備えて身体を鍛える掟に従ってきたわ。初めは何故毎日こんなきつい事をしなければならないのかって思ったの。でも……、鍛え上げた身体で弱きを護り心ある者を支える事こそブリジット族女性の真の美しさだと聞かされて……、鍛える事が苦にならなくなったわね。」
メフレックスは自分が身体を鍛える理由をサターナに語った。
「その教え、ガイアの考えと同じね。わたしも、もっとあなたの力になりたいと思ったわ。」
「ありがとう、サターナ。」
「わたしの方こそありがとう、メフレックス。今はゆっくり休んでて。」
「ええ、ではあなたにも炎の加護を。」
「あなたにも土の加護を。」
サターナは医務室を後にした。
(!……腹が疼く……。……けど……、その痛みすら心地よく感じるわ……。)
メフレックスはサターナの技を受けた腹が疼くも、心地よく感じ、穏やかな笑顔を浮かべた。
暫く休んだ後、メフレックスは自分の身体を改造するかの如く再び身体を鍛え始めた。
サターナに敗れた悔しさ以上に、友として彼女の力になりたいという想いが勝ったのだった。
それから数日後、メフレックス率いる白き女傑は本拠のあるレッドガルドに戻り、治安やAUの育成等に務める傍ら、鍛錬に勤しむ日々を送り、サターナは歯車騎士団団長として直属部隊LRと共にゴーレムをはじめとするカムクリの管理やロードガルドの治安等に奔走する日々を送っていった。
< 完 >