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人助けをしたら美少女に惚れられて偉い人に褒められるんですけど!  作者: マノイ
第三章

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12. 美少女達が下着姿で迫って来るんですけど

「僕、教室に戻るよ」

「良いのデースか?」

「うん、椿さんを信じるから」


 奏はレイリーを連れて空き部屋から離れ、元居た教室へと戻ることにした。

 その途中で瀧川女学院の生徒達に遭遇する。


「あれ、君達は?」

「きゃあ!奏様ですわ!」

「奏様ともお話したかったのです」

「芹那さん達との馴れ初めをお聞かせください!」

「ぴええええええ!」


 生徒達に囲まれて困惑する奏は、そのままレイリーごと近くの教室に押し込まれてしまった。


「ええ、でも君達は確か矢野くんとお話してたんじゃ」

「少し休憩中ですの」

「ふ~ん?」


 今回は正式な交流会では無いため、ずっと同じ人と話をし続けるというルールは無い。話し相手を入れ替えようとしていたのか、それともお手洗いなどで短時間の休憩をしている途中なのか、そんなところだろうと奏は推測した。


 だが、奏はすぐに、彼女達の様子がおかしいことを察する。


「奏様、是非私達とも仲良くしてください!」

「ずっと奏様に触れてみたかったんです!」

「奏様のことを想うと夜も眠れないんです!」

「(あれ?)」


 奏は彼女達に何処となく異常な雰囲気を感じ、後ずさり距離を取ろうとする。


「奏様、御寵愛を下さい」

「奏様、御寵愛を下さい」

「奏様、御寵愛を下さい」

「ぴええええええ!」


 だが彼女達は奏を決して逃がそうとしない。

 狂気を孕んだ目つきで、奏を囲んでじわじわと壁際に追い詰めようとする。

 そしてあろうことか彼女達は自らの制服に手をかけた。


「ぴええええええ!何やってるの!?」


 彼女達のスカートは床に落ち、下着姿になってしまったのだ。

 しかもそのまま上も脱ごうとするではないか。


「(何がどうなってるの!?)」


 このままでは奏は彼女達のあられもない姿を目にしてしまう。

 いや、もしかしたらその程度では済まないかもしれない。

 芹那達の顔が脳裏に浮かぶが、そもそも想い人が居なくても問題だ。


「(に、逃げなきゃ!)」


 彼女達の包囲はまだ甘い。

 奏は目を瞑り強引に突破して教室を脱出した。


『かなでさまぁ~!』


 背後から聞こえてくる甘い声をシャットアウトさせながら。


「はぁっはぁっはぁっはぁっ、今の何だったの!?」


 後ろを振り返るが、追ってくる気配はない。


「レイリーさん置いて来ちゃった。大丈夫かな?」


 彼女達の狙いは奏だったので大丈夫だとは思うが心配だ。

 とはいえ今からあの教室に引き返すことはもう出来ない。


「誰かに連絡しないと。ひとまず椿さんかお婆ちゃんに……」

「奏様?」

「こんなところでどうしたのですか?」

「ぴえ!」


 奏がスマホを取り出そうとした時、再度奏に声がかけられた。

 それは先程とは違う瀧川女学院の生徒達であった。


「君達は岡さんとペアの……」

「覚えて下さっていたのですね。光栄です」

「ふふ、流石真夜様達のお相手ですわね」

「ポイント高いね」


 先程の体験により瀧川女学院の生徒というだけで恐怖を感じそうになるが、ひとまず目の前の生徒達に今のところ違和感はない。


「さっき変な体験しちゃってね。誰かに相談しようと思ってたんだよ」

「変な体験ですか?」


 普通に受け答えしてくれる彼女達に奏は安心し、助けを求めようとするがどう説明したら良いか分からず悩んでしまう。生徒達が突然脱ぎだして奏を襲ったなどという突拍子も無いことを信じて貰えるはずがないからだ。


「そうなんだけど、どう説明したら良いのか……」


 話の内容を考えていた奏は、いつの間にか彼女達に壁を背にして囲まれていた。


「奏様、その体験はもしかしてこのようなものでしょうか」

「え?」


 そして彼女達はその場でスカートを床に降ろしたのだった。


「奏様、御寵愛を下さい」

「奏様、御寵愛を下さい」

「奏様、御寵愛を下さい」

「ぴええええええ!」


 普通だったはずの彼女達の瞳は、いつの間にか狂気に染まっていた。

 そして上も脱いで奏に迫ろうとする。


「に、逃げっ……」


 だが今回は距離をある程度縮められており、彼女達に触れずに逃げるスペースが無い。


「……ごめん!」


 このままではとんでもないことになることが明白だったため、失礼を承知で彼女達の肩に触れて強引に間を突破した。


『ああん』

『かなでさまぁ~!』


 またしても後ろから色っぽい声が聞こえてくる。


「早く誰かに伝えないと!」


 だが奏が足を止め、連絡しようとするたびに生徒達に遭遇する。


「奏様、御寵愛を下さい」

「奏様、御寵愛を下さい」

「奏様、御寵愛を下さい」


 彼女達は奏を見つけるや否や距離を詰め、制服を脱いで奏に迫ろうとして来るのだ。


「なんでこんなことに……!」


 奏は部室棟まで辿り着き、適当な部屋に飛び込んだ。

 教室とは違い内鍵があったため、鍵をかけてようやく一息ついた。


 だがその部屋には奏以外の人物がすでに居たのだった。


「カナデさん見つけたデース!」

「!?」


 最初の部屋で別れてしまったレイリーだった。


「レイリーさん!?大丈夫でしたか!?」

「ノープロブレムデース。それよりカナデさんは大丈夫デースか?」

「あはは、あんまり大丈夫じゃないかな」


 レイリーは瀧川女学院の生徒枠では無く、さらに最初に奏が襲われた時に一緒になって襲ってはこなかった。ゆえに、彼女と一緒なら安全だろうと奏は安心した。


「一体何が起こったんだろうね」

「みんなカナデさんのことが大好きみたいデース」

「大好きってレベルじゃないよ!?」

「あはは、冗談デース。少しはリラックスするデース」

「あ、うん、ありがとう」


 レイリーは気が張っている奏を落ち着かせようとしてくれる。

 奏の元へと近づかないのも、女性に襲われている奏を気遣ったものなのだろう。


「ツバキならなんとかしてくれるデース」

「うん、だからツバキさんに電話してみるよ」

「待ってくださーい。ツバキはカナデのフレンズのために頑張ってるデース。邪魔するのは良くないデース」

「そっか……でも……うん、そうだね」


 それどころではない程の緊急事態なのだが、身を粉にして奏のために努力する姿を見てしまったため、電話をして助けを求めて椿の行動を阻害し、その努力を無にするのは抵抗感が大きかった。


「お婆ちゃんに連絡してみるよ」

「カナシロも大切なお話し中デースよ」

「そうなの?」

「そう聞いたデース。でもカナデのためならカナシロは抜け出しちゃうデース」

「お婆ちゃんならやりかねない」


 だが、そうなると助けを求める相手が思いつかない。

 他の教師達の連絡先は知らないのだ。


「どうしよう、誰に言えば良いのかな」

「簡単デース。ツバキにメッセージを送るデース」

「……そうだね。返事があるまでここで待ってようか」


 異変に巻き込まれているが緊急では無くて椿の為すべき事が終わってから来て欲しい、的な絶妙なニュアンスのメッセージを送ることにする。

 だが、そんなメッセージなど簡単には思いつかない。細心の注意を払って書かなければ、椿は慌てて奏の元へやってきてしまうだろう。


「う~ん……え~と……」


 奏はスマホに向かってメッセージを書いたり消したりしている。

 集中していて周囲の状況の変化に気付いていない。


 そう、衣擦れの音が聞こえてくるが、気付いていなかったのだ。


「やっぱり難しいなぁ。ねぇレイリーさん、これで分かってもらえ……ぴええええええ!な、何してるのおおおお!?」


 メッセージの内容をレビューしてもらおうかと奏がレイリーの方を向くと、なんと彼女は全ての衣服を脱ぎ去っていたのだ。


「ふ、ふふ、服を着てよおおおお!」


 レイリーは恥ずかしそうに照れて両手で恥部を隠そうとしているものの、豊満なボディのほぼ全てが奏に見えてしまっている。奏は慌てて目を閉じて逃げようとするが、いつの間にかレイリーは場所を移動し、唯一の逃げ道である出入り口を塞いでいた。


「カナデサマ、ゴチョーアイを下さい」


 そして女生徒達と同じセリフを口にして、ゆっくりと奏に迫ろうとする。


 レイリーは椿を越える怪力の持ち主だ。

 もしこのまま捕まったら間違いなく逃げられない。


「悪い冗談は止めてよ!レイリーさんは正気でしょ!」

「!?」


 奏は動揺しつつも、レイリーの雰囲気が他の生徒達と違うことを見抜いていた。


「ミーも、みんなと同じでカナデサマのゴチョウアイを」

「違うよ!だってレイリーさんは普通に恥ずかしそうにしているじゃない!」


 狂ってしまった瀧川女学院の生徒達は顔を赤らめてはいたが、それは羞恥によるものではなく高熱が出てぼぉっとしているかのような雰囲気だった。

 だがレイリーは真っ当に恥ずかしがっているのだ。目の奥にも狂気は潜んでいない。


「それでもお願いデース。ミーを抱いて下さい……」

「そんな悲しそうに言われても困るよ。何があったのさ」


 目を閉じているからか、聴覚に集中することでレイリーの言葉に含まれた悲しい想いに奏は気付いてしまった。


「お願いデース。お願いデース……」


 レイリーの言葉は徐々に尻すぼみになり、消えてしまう。


「ううっ……ううっ……」


 そして嗚咽だけが残された。




 奏は意を決して目を開き、床に散らばったレイリーの服を拾って座り込んで泣く彼女に被せてあげた。


「レイリーさん。大丈夫?」

「カナデさん、お願いデース。ミーを、ミーを見捨てないでください」

「……うん、見捨てないから」


 レイリーの言葉の意味を奏は全く理解出来なかったが、一度こうして知り合った相手を見捨てるなど奏にはあり得ない事だった。


「(何があればレイリーさんがこんなことをするんだろう)」


 想いを寄せているわけでも無い相手に迫ろうとする理由は、奏には思いつかない。

 奏は自分が強力なスキルを保有していることに気付いていないのだから。


「(流石に椿さんに連絡しよう)」


 瀧川女学院の生徒達の変貌に加え、レイリーまでもが暴走したとなっては、幼馴染のケンカ仲裁をしている状況では無い。仕方なく奏は椿に連絡を取った。


「奏様!椿です。開けて下さい!」


 事情を聞いた椿はすぐに奏とレイリーが居る部屋にやってきた。


「椿さん、来てくれたんですね!」


 これで何とかなると安心して部屋の鍵を開け、椿を迎え入れようと扉を開ける。


「……え?」


 そこには椿だけではなく、多くの瀧川女学院の生徒達も揃っていた。

 しかも椿以外は下着姿である。


「ぴええええええ!」


 慌てて扉を閉めようとするが、怪力の椿によって防がれてしまう。


「そ、そんな椿さんまで!」


 奏の逃げ道は完全に塞がれてしまった。

 椿と下着姿のお嬢様達が目をとろんとさせて、ゆっくりとゆっくりと近づいて来る。


「だ、だめ……こないで!」


 狭い室内、すぐに壁際に追い詰められる。

 今度は人が多く、強引に突破するのは難しい。


 お嬢様達がついに下着にも手をかけて取り払おうとする。


「ぴええええええ!」


 絶体絶命の大ピンチ。

 奏を救ったのは、未だ一枚も脱いでいない椿であった。


「奏……様っ……!」

「つ、つばきさん?」


 制服の胸元をきつく握りしめ、苦しそうな表情で奏に何かを訴えようとする。


「皆を……想って……」

「え?え?」

「私達を……想って……」

「どういうこと!?」

「間違いを……起こさないように……強く……願って!」


 それが何を意味しているのか、奏には分からない。

 だが椿は他の生徒達とは違い、必死で何かに耐えながらも奏のために行動してくれているように見える。


「うん、分かったよ」


 瀧川女学院の生徒達を想う。

 彼女達が暴走して奏を襲い、悲しまないようにと強く想う。


 ほとんどの生徒は奏と直接話をしたことすらない。

 だが心優しい奏であれば、見ず知らずの人のために命をかけられる奏であれば、その程度の事は造作も無いことだった。


「みんな、元に戻って!」


 奏が両手を組んで神に祈るかのように必死で全員のことを想った瞬間、全裸になり今にも奏に襲い掛かろうとしていた生徒達はその場に崩れ落ちた。


「た……助かったの?」


 肌色だらけで見ていられない死屍累々の状況の中、唯一異変を耐えきった椿だけは意識を保っていた。


「奏様、無事で良かった」

「椿さん、助けてくれてありがとう」


 一体何が起きたのか、奏には分からない。

 だが一つだけ言えることは、椿の必死の行動が奏の心に爪痕を残したと言うことだ。

 椿が芹那達と同じステージに立てる日は近いのかもしれない。

何だこの話は。


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