四宮すずとタイムリーパー俺。
「有名人と友達になりたいなあ。」
俺はそんなことを思いながらPCの前に座っていた。
俺の名前は「佐藤 栞」
3年前高校を卒業して割と良さそうなところに就職したが、上司とあまり上手くいかず半年で退職した。そこからはバイトを転々としていた。
実家暮らしで親や兄妹からは「いつまでそんな仕事してんの?いい加減ちゃんとした職につけ!」と耳にたんこぶが出来るくらい聞かされた。それに嫌気がさした俺は無事引きニートになってしまった。
そして今画面の奥にいる、とある配信者。『四宮すず』のYauTubeLiveを観ている。
この子に出会ったのは仕事をやめて1ヶ月の事だった。その日も面接から帰ってきた俺は何もすることなくベッドに横たわっていた。親が飯を作るまで寝よう。そう思い、ウトウトしていると・・・。
『ピコン!』
スマホが鳴った。メッセージアプリ『LEEN』だ。
友達から連絡が来ないで有名な俺だ。どうせ妹だろう。と思いそのまま放置した。
しかし10秒後。
『ピコン!』
まただ。
「もうなんだよ、うっせえな。」
重い瞼を開きながら見てみると、高校時代の友人だった。
「なんだ?3年もたったってのに・・・。」
友人からはこうメッセージが来ていた。
『よう!久しぶり!高校以来だな!お前YauTubeって知ってるか?最近人気の動画アプリなんだけどさ!お前に見てもらいたい配信者がいるんだよ!』
いきなりのメッセージで驚いていたが、高校時代の友人からメッセージがきたという時点で俺は喜んでたのかもしれない。だけど、このメッセージがきっかけで俺の人生はメチャクチャになる。
久しぶりの友人からのメッセージに俺はウキウキでメッセージを返した。
『おう!久しぶり!YauTube?そんなもんがあるんだな。んで誰だよその配信者って?』
久しぶりの会話。楽しい。そう思って画面を見つめていると・・・。
『四宮すずっていうんだけどさ!その子が可愛いんだよ!物静かで大人しそうなんだけど、笑い声とか、叫び声が凄くいいのよ!お前にも是非見てもらいたくてさ。』
へぇ。こいつがそこまで言うってことはほんとに可愛いんだろうな。
『お前がそこまで言うって相当なんだな。分かった!今度見てみるよ。』
『お!まじ?今度感想聞かせてくれ!!』
そんな会話をその日は夜中までやっていた。
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【次の日】
『あ、あれ?』
どうやら寝落ちしてしまったらしい。
今日は特にすることも無いし昨日あいつが言ってた『四宮すず』っていう配信者みてみるか。
重い腰をあげて椅子の前に座る。
「YauTube・・・。これか。ホントにあるんだな。」
無事インストールを完了しアプリを開く。そこにはいろんな『YauTuber』がいた。とにかく俺は四宮すずのことを知りたかったからほかの奴らなんかに目もくれず検索ボタンを押した。
「四宮すずっと。」
検索したらホントにいた。チャンネル登録者数は1999人だった。いわゆる無名と言われる部類だった。
とりあえずチャンネル登録しておいた。久しぶりの友人からのメッセージだ。会話できるように毎回配信を見よう。
そのままアプリを閉じ、俺はお菓子を買いにコンビニへ出かけた。
〜10分後〜
コンビニから帰ってきてアプリを開くと、四宮すずがLive配信をしていた。
「おいおいまじか。」
早速さっき買ってきたポテチを広げ椅子に座る。
「みんな〜!こんすず〜!」
これが彼女のあいさつなのか。確かに大人しそう見た目だかだが声は明るい。
「今日は!Psychic toneっていうゲームをやっていくよ!」
と、今日の内容はゲーム配信だった。俺はあまりゲームが好きじゃない。ブラウザバックするか・・・。あいつには悪いけど・・・。
「それじゃ今日もありがとね〜!!おつすず〜!!」
「え?」
ありえない。今の時間は・・・。23時!?
おかしい。おれはコンビニから帰ってきたばっかりだぞ?確か18時には帰ってきたはず・・・。なのになんで・・・。
「夢中になって見てたってことか?」
後日、友人にこのことを話すと
「あーそれな。俺もなったんだよ。別に俺もゲーム好きじゃないんだけど、気づいたら夜中でさ、そっからすげーハマったんだよね。」
どうやら彼女には人を惹きつける能力かなんかがあるらしい。
次の配信も、その次の配信も気づいたら時間は夜中になっていた。それが何度も続いてるうちに俺はファンになってしまった。
彼女のTmitterには必ず返信するし、メンバーシップにも加入しているくらいハマっている。
そして現在に至る。
「今日もすずたんの配信みるぞぉー!」
四宮すずにハマってから3ヶ月が経過していた。彼女の登録者は今や13万人だ。
「みんな〜こんすず〜!」
今日も始まった。楽しい楽しい生配信の始まりだ。
「じゃあ今日もこのくらいで!また遊びに来てね!おつすず〜!」
はぁ。有意義な時間だった。俺もすずたんと学校生活を共にしたいな。
我ながらキモイ発言だと思う。だけどそのくらいすずたんを愛しているのだ。
さて、今日も気持ちよく寝れるぞー。
そう思い俺はベッドで寝た・・・。はずだったんだ。
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【次の日】
「・・・いちゃん!・・・にいちゃん!」
「お兄ちゃん!!!」
「ん??あぁ、もう朝か。よく寝た。」
目の前に妹がいた。だが格好がおかしい。
「お前、コスプレイヤーにでもなったのか?」
「は?何言ってんの?〇ね!」
何故かブレザーを着た妹に叱られた。
「栞〜!栞〜!」
母さんの声だ。
「早くしないと学校に遅刻するわよ〜!!!」
「もうそんな時間か。早く学校にいかな・・・ん????」
「学校?今学校って言ったか?」
何かの間違いか?夢だと思い、頬をつねる。痛い。
夢ではないということか。
何が何だか分からないまま俺は制服に着替え。学校へ向かった。