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episode29 混沌種③

短めなので早めに投稿しました。

○《 四十二階層 大部屋 》ロゼリア=フロース=パーピリオー


 事態の全てが把握出来ない。


 我々は《機魔鬼(キマイラ)》を倒す為にここ大部屋に入った。


 体力を温存し、作戦を練り、装備を集め、万全だった。


 なのに…。


 何故、何故、何故。


 何故、今、私たちは死にかけているんだ。


 目の前に現れた《竜》と《(びゃく)》。


 足掻いた。時間を稼げばいいとそう思って。


 震える足を押さえ込んで、すぐに下の階層に逃げられると思って。


 だけど下の階層に続く扉は開かなかった。


「逃げろレオッ!!」


 一人で《闢》に突撃したマスターが軽々と吹き飛ばされる。

 《闢》はそのまま暴れ周り、入ってきた入り口の扉を崩し、天井の一部を崩落させて埋める。


 退路は絶たれた。


 奴らは私たちを全滅させる気だ…。


 戦闘経験なんて関係ない。赤子でもこの状況を見れば一瞬で分かる。


 絶対に勝てない。例え天地がひっくり返っても…どれだけ足掻いても勝てやしない。


「ぁ……」


 口から小さく声が漏れる。


 周囲にいる仲間達の恐怖が私にも伝わり、私の中の恐怖も仲間に広がり、恐怖が膨れ上がっていく。


 多くの戦場で武功を上げた戦乙女が聞いて呆れる。


 過去の仲間が今の私を見たら口汚く罵るだろうか…あぁ、罵られてもいい。もう一度会いたかった。


 私は膝から崩れ落ちる。


 細剣が手から零れ落ち、目の前が滲んでいく。


 笑っている。絶望が。


 抗うことすら諦めた私を嘲笑っている。


 惨めで、憐れで、情けない、どうしようもない私を笑う。


「……はひっ」 


 今まで出したことの無い無様な笑い声が自分の喉から発せられる。


 奥歯はガチガチとうるさく鳴り響き、舌が上顎に張り付く。


 もう駄目だ…。



○《 四十二階層 大部屋 》アギリ=カエルレウム


 折れてしまった。


 ポッキリと。いや、粉々に砕かれた。


 ボク達の希望が。


 このギルドはレオを大黒柱として機能している。


 そのレオが倒れた。あっさりと、簡単に。


 ただ《闢》が体を振るっただけでレオは…。


 大黒柱であるレオが意識を失っている今、その役目を代われるのはボクだけだ。励まそうと震える唇を動かす。


「…きら…ゃ………ぁ…」


 「諦めるな」。「まだまだ、ここからだ」。「下を向くな」。どれだけ激励の言葉を出そうとしても口が開かない。

 口から出るのは蚊の鳴くようなか細い声ばかり。


 相杖を握り手が震える。


 あぁ、ボクはなんて無力なんだろう。


 今更嘆いても遅い。


 遅いが、嘆かずにはいられない。


 こんなことなら…もしも…例えば…。過去を引きずるような思考ばかり浮かぶ。


 ボクはもう生きることを本能で諦めているんだ。


 だけど…だけど…。


 もし、希望があるのなら…。


 ボクは…ボク達は欲している。




   ─────《英雄を》─────



 絶望を跳ね除け、ボク達に希望を与え、救ってくれる。


 そんな存在を。


 ボクの目は自然とレオの方へ向けられる。


 血を流し、地面に突っ伏す彼に視線を。


 動いてくれ。君が一言、一言何か言ってくれればボク達はまだやれる。


 お願いだボクの英雄。


 立ってくれ。


『uuuuuuuurrrrrrRRRR』


 そんな時、壁を突き破り、一つの影が現れた。


 ゆらりゆらりと(うごめ)く影。


 第三の『混沌種』。


 違う。


 ボクはレオ(英雄)を欲している。


 決してお前じゃない。




 ───────絶望が笑う





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