ゲームと、母親と、冒険の始まり
感想くれたら嬉しいな!!
小学五年生の頃、俺の回りではテレビゲームが流行り始めた。
家は貧乏でお金がなくて、ゲームを買う余裕など無かった。
俺自信、欲しいと親に伝えたことはない。
誕生日が来た、慎ましく開かれるわが家の誕生パーティー、
母の手作りのケーキ、甘い香り、形は少し歪だけど、
俺は好きだった。
いつも誕生日は、プレゼント無いのに、今日はカラフルなリボンに包まれた、箱があることを俺は知っていた。
母は隠しているつもりらしいが、いつもより楽しそうに、
ニコニコしている姿を見れば誰でも隠しているとわかっただろう。
「俺君、誕生日おめでとう」
母はプレゼントを渡してくれた。
「開けて良い?」
「良いわよ」
中身は家庭用ゲーム機だった。
学校の皆が楽しそうに話している姿を見て羨ましいと思っていたが、こんな高い物を買って、家の金銭事情が逆に気になった。
「嬉しいけど、家のお金大丈夫なの」
「大丈夫よ、子供はそんな事考えなくて良いの」
「わかった、ありがとうお母さん、
やってみて良い?」
「良いわよ」
初めて家でした、ゲームは面白くて、気付けば寝る時間になっていた。
「今日は買った初めての日だったから、許したけど、
あんまやり過ぎちゃダメよ」
「わかった、お母さん」
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俺は完全にゲーマーになっていた。
クリアすることに執念を燃やし、ゲームをやり続けた。
母に注意されないと、止めることは無かった。
ある日、ゲームを続けていたら、深夜になっていた。
いつもなら、母の夕飯の呼びかけで止めるのだが、
呼び掛けが無かったから、やり続けてしまった。
台所に向かうと、母が倒れていた。
揺すっても反応がなく、いつ倒れたかもわからない。
泣きながら救急車を呼んだ。
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「お母さんは、亡くなりました」
医者は端的に俺に言った、
脳梗塞……発見が早かったら助かる可能性があったらしい。
家に帰って母に買ってもらった、ゲームを見つめる。
こんなものがあるから、気づけなかったんだ。
俺はゲーム機を壊すため持ち上げたが、
母がくれた初めてのプレゼントを壊すことは出来なかった。
初めてのプレゼント、
嬉しそうに渡してくれた母親の表情が、頭をよぎる。
ゲームをやり過ぎると叱るけど、夢中になってゲームする俺を嬉しそうに見つめていた。
俺が顔を母に向けると、表情をヒュッと変えて、
切りの良いところでやめなさいよ、と少し怒るのだ。
ゲームのせいで、母親が倒れたことに気づけなかった、
だけど、壊すには思い出が詰まりすぎていた。
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月日が流れ、俺は社会人になった。
ゲームはやっていない、
やりたい気持ちもあったが、
壊したい気持ちもあった。
休日
ふと、母が買ってくれたゲームが、目に入り、
起動することにした。
懐かしい、冒険の中盤で終わったんだった。
ゲームを進める、俺は子供の頃に戻ったような気分になった。
想像かもしれない、都合の良い妄想かもしれない、
ゲームをしていると、隣で母親が見ているような感覚になった。
一時間ほどすると、そろそろやめなさいと、後ろから声が聞こえた気がした。
振り返っても、もちろん誰もいない。
俺はゲームの仲間の名前を、お母さんに変えて、
また、明日から冒険を始めることにした。