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第十一話 七つのヴェールの踊りを踊る女

 お久しぶりです。オクトです。


 さっそくですが前回の続きをお話ししましょう。


 怒涛の様に押し寄せる私の不幸話はまだ続きます。

 ええ、そうです……また私に不幸が降りかかってくるのです。


 しかも身内に敵がいると気づくにはまだまだ先の事でしたから、色々と無駄に神経をすり減らした事件といえます。

 ええ、本当にいろいろと神経がすり減りました……

 はぁ……まあ、もういいです。そういう星の元に生まれた、と諦めていますので……


 では気を取り直して話しを戻しましょう。


 前回、夜中にノイエの街に入り無理やり宿に泊まったのですが、予定通りに進めるには少々時間が足りませんでした。

 ウィンザー家のギルの行った蛮行の報告などもありますし、そもそもまだ子供であるカノン様とローレインも睡眠時間が少なかったので、一日休みを取ってから旅を再開しようと言う事になりました。


 それならば、という事でいつもは素通りしているノイエの街を散策をしていた時でした。





※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





「ここはおじい様に会うために良く通った街だけど、良く考えるとまったく知らない街よね」


「見て回るにはいい機会かもしれませんね」


 カノンが嬉しそうに軽くスキップしながら街の中を歩く。

 私の傍には従者見習いのローレインが、遠慮しがちについてくる。

 マチはウィンザー家に渡した予備の車輪の補充と、馬車の整備の為にここにはいない。


「ローレイン、いずれ分かると思いますから言いますけど、アンティフォナ家は武に長けた人しか従者にはなれません。ただ貴女の筋肉の付き方などを考慮すると、武の才能があるとマチが言うので従者になる事は許しました。が、当然貴女も同じように鍛錬をする事になります。きついと思いますが、覚悟はいいですね?」


「はい、それは重々承知しています!」


 いい返事が返ってくる。

 まあアンティフォナ家を知らない人は少ないはずだ。


 国が対応するような戦乱の種を、辺境伯が抑え込んでいるという事実は、国中に知られている事だ。

 もしアンティフォナ領が陥落するような事になれば、この国から平和という言葉が消える事になるだろう。

 そんな重要な位置にいるのがアンティフォナ家だ。


「あと、私達はカノン様の護衛と言っていますが、守るのは世間体ですからね。この国で一番強い方は、大旦那様のヴァイス様ですが、そこまでは及ばないとはいえかなりの強さをカノン様も持っていますから、それを鑑みて守る様にしてください」


「はい、わかりました……ですが本当にそんなに強いのですか? 確かに昨日縛られていた縄をブチブチと千切ってましたけど……」


 スキップしているカノンを見ながら言い淀む。

 たしかにカノンの姿を見て、強いと言われても想像できないのは仕方が無い。

 まだまだ少女といえる見た目だからだ。


「……カノン様の武器はハルバードです」


「ハルバードというのは……槍に斧が付いた、あの……重そうな武器ですよね?」


「そうです。それを普通にあのあどけない姿で振り回すのです。それはもう……色々と破壊力はすさまじいですよ。まあ辺境に付けば、カノン様のストレス解消に大旦那様が付き合いますから、その姿を見学出来ると思いますよ」


「そ、そうですか……」


 ローレインが苦笑いを見せながら答える。

 変にローレインがカノンを守ろうとすると、盾になるしかやりようがない。

 しかし、そうなると逆にカノンの動きによりローレインが怪我をして、それに対してカノンが気に病むという変な構図になりかねない。


 たしかにわがままを簡単に口にするが、人が傷つくことを良しとはしない。

 なんだかんだ言いながら、従者に甘いのがカノンだ。

 護衛というより側付きのような形が望ましい。



 街の中心地でもある広場に着くと、屋台などが立ち並んでいる。

 人通りも異常に多く、街の規模からするとかなり多い。

 中央には舞台が設置してあり、そこでは音楽が奏でられその舞台で薄着の踊り子が踊っている。


「オクト、あれは何?」


「……あれは歌劇「サロメ」ですね。どうやらお祭り中のようですね」


 伝わってくる曲を聴き、舞台の内容を見てそう答える。

 普通は劇場などでやるものだが、お祭りならありなのかもしれない。

 そして丁度、サロメの【7つのヴェールの踊り】の部分を踊り子が踊っている。


 サロメ役の女性は薄い透き通る布を羽織っており、透き通った布の向こうには肌が見える。

 肌着しか着ていないのか体の肌が良く見え、それを見ている男性達を魅了している。

 そんな女性の姿は黒髪黒目の妖艶な女性だ。


「オクトと同じ黒髪だね」


「そうですね……」


 この国では黒髪は珍しい。

 同じように東方出身かもしれない。

 カノンとローレインと共に、その舞台を見ていると、サロメ役の黒髪の女性とちらちらと目が合う。

 もしかしたら、あちらも黒髪の私を意識しているのかもしれない。


 やがてサロメ役の女性が、ヴェールを外し、妖艶に輝く肢体を見ている者達に魅せつける。

 待ってました! という男性陣の声が聞こえてきそうなほど沸き上がる観客達。

 きっと歌劇の内容はそっちのけで、これが目的なのかもしれない。



 歌劇「サロメ」は、陶酔と官能のオペラだ。


 王エロドが全王である兄を殺し、その妃を奪う。

 だが、妃の娘である王女サロメもまた美しく、その魅惑の肢体に邪な目を向けてしまう。


 そんな王エロドの目に耐えられなかったサロメは、宴の席を外れ、預言者ヨカナーン(洗礼者ヨハネ)が閉じ込められている井戸に向かう。

 預言者ヨカナーンはその言動により、妃に疎まれ閉じ込められ、さらに王により会う事は禁じられていた。だが見張り番をサロメは誘惑して二人は出会ってしまう。


 サロメはヨカナーンに魅了されるが、ヨカナーンはそんなサロメを呪われた生い立ちをなじり、拒絶する。

 それでもサロメは諦めず、口づけをすると誓う。


 その後宴に戻ったサロメに王エロドは踊りをしつこく要求し、踊れば何でも好きなものをほうびにとらせると約束する。


 そして踊るのが「七つのヴェールの踊り」だ。


 その踊りの返礼に要求したのが預言者ヨカナーンの首である。

 王エロドは預言者の力を恐れ断っていたが、折れないサロメに結局従いヨカナーンの首をサロメに差し出す。


 サロメは、銀の皿に乗せられて運ばれてきたヨカナーンの唇に口づけし恋を語る。


 それを見た王エロドは、サロメの恋の狂気に触れ、サロメを処刑する。



 物凄く過激な内容だ。

 正直に言うなれば、その倒錯した愛の内容がお祭りの雰囲気に合わない気がする、が、目玉である「七つのヴェールの踊り」だけ見れば男性陣は盛り上がると言える。


 カノンにはまだ早いかもしれない、などと考えカノンを見ると真剣な顔をして舞台を見ている。

 なにか嫌な予感がする……


 やがて歌劇も終わり、舞台から人が履ける。

 そして広場に設置されている屋台に人が群がる。

 一時休憩なのか、


「あれは何?」


「屋台ですね。そういえば王都では下町以外に屋台はありませんから、カノン様は初めてですか……」


「ええ~! 屋台を知らない……そんな事ってあるんですか?」


 ローレインが驚くが、令嬢が下町を歩くなんてことはほぼ無い。

 辛うじて馬車で通過する時に窓から見るくらいだろう。


「屋台? 見る限りだと食事を路上で売ってるって事?」


「そうです~。普段食べるものと同じものですが、こういうお祭り時に歩きながら食べると何故か美味しく感じるんです」


「へぇ……」


 ローレインが庶民的な事を言うので、それに惹かれたカノンがにんまりと笑う。

 後で叱らないといけないだろう……迂闊な事言うな、と……


「買うのは了承しますが、歩き食いに関しては了承しかねます」


「え~! なんでよ」


 口を尖らせてカノンが非難してくるが、さすがに歩き食いは了承出来ない、マナーの問題だ。


「そんな事する令嬢がどこにいますか?」


 私の言葉にハッとしたローレインが口元に手を添える。

 分かってくれて嬉しいが、等の本人は納得できないという顔だ。


「はぁ……仕方が無いですね。あちらのお店を借りて昼食にいたしましょう。屋台の食べ物については、わ た し が買ってまいります」


 ローレインに任せると、カノンが裏で多く頼みかねないので、その思惑を潰す。

 どうやら予想が当たっていたようで、ちょっと渋い顔をする。


「じゃあ、あれとこれと……それをお願い」


 まったく逡巡せずに、私に買わせるものを決めていく、話している間に目ざとく見ていたようだ。

 ちょっと甘くしすぎかもしれない。

 だがしかし、カノンの笑顔を見ていると、まあいいかという気持ちも膨らんでくる。


「ではローレイン、お店の人に話をして席を確保して待っていてください。一目につかない席を交渉して確保するのですよ」


「はい、わかりました」


 カノンをローレインに任せこの場から移動させる。

 さすがに見学程度ならいいが、カノンに屋台がある場所を練り歩かせ、品定めさせるわけにはいかない。

 そんな場を見られ、噂が広がり他の貴族に知られればどうなるか、考えるまでも無い。


 屋台に向かい、カノンに指定された品物を買いながら、ローレインの事を考える。


 ある意味ローレインが従者兼歌の指導役になってくれたのは僥倖だと言える。

 お陰で色々と私とマチに恩恵がある。


 カノンの歌の指導なんて、かなりありがたい。

 私達は歌は歌えるが、教えるだけの知識が無いし何よりカノンに教えるのは難しい。


 そもそも王都の屋敷にいるカノンの講師達は、歌だけはカノンに教える意味が無いと諦められている。

 カノンも当初は音楽に興味が無かったので、専属講師もいないし、両親も音痴と知っているので、追加で雇う事もしていない。

 そのお陰で私達従者がなんとなくで教えているので、上達しないのも当然かもしれない。


 今回の辺境への旅も、私とマチの二人しか従者が居ない、まあお忍びなので仕方が無い。 

 そこにローレインが加われば、ある程度カノンの事をローレインに押し付け……もとい、任せて、多少は私達も羽を伸ばせるというものだ。

 もともとの従者同士なら、誰がカノンの世話をするか牽制の仕合いで色々と疲れるので、それをしないで押し付け……もとい、任せられるローレインの存在は助かるといえる。

 

 品物を買い、カノン達が待っている店へと向かおうとすると、妙な視線を感じそちらに目を向ける。


 するとそこには、舞台で踊っていたサロメ役の黒髪の女性がこちらを見つめながら立っていた。


 舞台に立っていた時と同じような格好。

 少し変わった形のヴェールを被り、肌がかなり見える服装に、腕には太めのバングル、足首にもアンクレット、さらに首にはチョーカー、それぞれに何故か鈴が付けてある。

 歩くと音が鳴りそうだが、鈴の音は聞こえなかった。


 広場から少し離れた場所で人通りも少ないが、いないわけではない。

 かなり、いや、特に男性の目を確実に惹きそうな恰好をしている、しかし誰もその女性に気付かないかのように目線を向けずに通り過ぎる。

 まるで存在しないかのように……


「何か用でしょうか?」


「ええ……貴女、東洋出身なの?」


「生まれも育ちもこの国ですが、母方が東から来たと聞いていますね」


 同郷の者を見て話しに来たのかと思い、普通に対応するが、どうも目にこもった熱のようなものを感じる。


「私の名前はエウテ」


「……オクトと申します」


 妙な目線が気になるが、怪しいと思いながらも同郷の者という親近感からなのか答えてしまう。

 私が名前を告げると、こちらに聞こえないように、私の名前を口にする。


 それと同時に異様に長いヴェールを脱ぎ、手に取りまるで踊るような動きで、こちらを斬るかのように腕を振ってくる。

 ただの布だというのに、そのヴェールは空気の抵抗を無視した速度で迫ってくる。

 危機感を覚え上体を逸らして躱すが、こちらの服にヴェールが当たり、その部分が少しだけ斬れる。

 やはり刃が仕込んであるのかと、エウテから少し距離を取る。


「さすがアンティフォナの従者ね……」


 そう言いながら舌なめずりして、熱の籠った目で私を見つめてくる。

 まるで獲物を狙う猫のようだ。


「ウィンザー家から雇われましたか?」


 タイミングから見てそれしか考えられない。

 そうなるとカノンにも刺客がという思考がよぎる。


「さあどうかしら……ね!」


 こちらがカノンに気を移し、この場から逃げようとしたのを感じたのか、踊る様に間合いを詰め、ヴェールを使って攻撃してくる。

 刃が仕込んであるのは確かだろうが、見るだけではどのような構造をしているのか分からない、だがヴェールが刃物のようになっているのは理解できるので、この場から逃げられるように避ける。


 それと同時に、勿体ないが左手に持っている紙袋から串焼きを一本取り出し、エウテに投げつけるが綺麗に受け止められた。

 隙を作れず逃げる事は出来なかった。


「あら、勿体無い事をするわね」


 そう言いながら、まるで演技のような動きで串焼きを口元に運び、男を挑発するように食す。動きがいちいち妖艶だ。

 なんとなく感に触り、逃げる事を止め攻めに転ずる。


 袖に隠してある針を右手で投げると同時に間合いを詰める。

 動きを読むための牽制だが、予想に反してヴェールを使って針を止められた、どうやらヴェール全てが特殊な糸で作られているみたいだ。


 それでも左手は串焼き、右手は針を止める為に動かした、予想通りでは無いが隙はある。

 流れのままに蹴りを入れる。が、後方に跳躍して躱される。

 逃がすものかと追撃するが、先ほどとは違い避けに徹しているのか暖簾に腕押しの様に避けられる。


 踊るように避けるエウテに、もっと確実な隙は作れないかと考えながら追撃する。

 私の左手に持っている串焼きを入れている紙袋を思い出し、妙案が浮かぶ。


 攻撃でもなんでもない、ただ紙袋を軽くエウテに投げると、条件反射で受け止めようと手を出した。

 その隙を逃さず、右手で相手の首元に手刀を入れるが、エウテが避けられずに腕で受け止める。


 キンッ! という音が鳴り響く。

 こちらは腕の部分に鉄の芯が隠してあり、当たれば骨を折るくらいは出来る。

 が、どうやらバングルで受け止められたようだ。

 見た目は普通のバングルだが、緩衝材でも備えられているのか骨が折れた手ごたえは無い。


 その動きで流れが止まった瞬間に、周囲から拍手が聞こえる。


 なにごとかと思い周りを見ると、少し離れた場所に見物客がこちらを見て喝采を送ってくる。


「姉ちゃんたち凄いな!」


「こんな踊りみたことないわ!」


「武闘の舞踏?」


「なんだそのダジャレみたいなのわ!」


「いやいや真に迫ってて凄かったわ」


「さっきのサロメの人だよね! 握手してくれ!」


 思い思いの感想を言いながら、私達に近づいてくる。

 よく考えるとここは広場から少し離れた場所で、人も多い場所だった。

 そんな場所で立ち回ればこうなるのも頷ける。

 しかもエウテに乗せられて、踊るように戦っていた。


 喝采を受けたエウテが皆に向けて会釈をする。

 その姿はまるで舞台挨拶のようだった。


「はい、返すわね」


 やがて見物客の相手が終わると、私が隙を作る為に投げ渡した紙袋を返される。

 どうやら続きをやる気は無い様だ。


「私達の命を狙っているのじゃないのです?」


 タイミングといい、暗器使いといい、その妖艶な格好といい、どう考えても暗殺者と言える。

 そんな暗殺者が表の場所で立ち回り、姿を見せる意味が分からず思わず普通に聞いてしまった。


「ふふふ……それはどうかしら?」


 当然答えてもらえない。

 それにしてもその熱のこもった視線の意味が全く分からない。


「そもそも私の命を狙う意味も分かりません」


 そう言いながら目線をカノンがいる店先に向けると、ローレインとカノンがこちらを見ていた。

 きっと遅い私に業を煮やして出てきたのだろう。

 あちらに刺客は行ってないようで、ほっとする。


 だが、そうすると私がターゲット、という事になるが、あくまでも私はアンティフォナ家の従者だ。

 確かにギルを殴ったが、その返礼ならば私だけを狙うのは少し違う気がする。

 いまだに私の前に立っているエウテを見ながら考えこんでいると声をかけられる。


「ほらほらお嬢様が怒ってるわよ」


「え?」


 エウテがカノンの方を指差しそんな事を言うので、一瞬気を取られ目線をカノンに移した瞬間に間合いを詰められる。

 まずいと目線をエウテに戻すが、すでに目の前にエウテの顔が迫っており、そのまま唇を奪われる。


 何が起きたのか理解できずに思考も行動も一瞬停止する。

 たぶん一秒も満たない瞬間に、何をされたか理解し、エウテを突き飛ばす。


「ふふっ、ご馳走様でした」


 そう言いながら鈴を鳴らし足早に去っていくエウテ。


「くぅ! 一体何なんですか!」


 唇を袖で脱ぎながら叫ぶが、周囲にいる男達が私を煽るように口笛を吹く。

 女性に至っては、「ありかも」なんて言葉を口にしている、ありなわけがない。


 好奇の視線に耐え切れず、エウテの後を追うように逃げる。


 カノンが待つ店とは逆方向に逃げ、回り込んでから人目を気にしながら店に急いで入る。

 店に入り、カノンのいる席に着くと開口一番に聞かれる。


「オクトは何で踊っていたの?」


 不満そうにカノンが問いただしてくる。

 やはり傍から見ると二人で踊っていたように見えたのだろう。

 そんな私を見ていると何故買い出しを放って踊っていたのだ、と怒っても仕方が無いが、それ以上に唇を奪われた私の怒りの方が強い。


「あのエウテという踊り子はヴェールに刃物を仕込んでいたのです。ですので……踊っていたのではなく戦っていたのです!」


「そ、そう……」


 私の気迫に気圧されたのかカノンが申し訳なさそうに答える。

 

「ウィンザー家の刺客かもと思いましたが、どうも違う気がします……そもそも私を狙う意味がわからない」


 エウテの行動の意味が分からず頭を悩ませていると、ローレインが代わりに答えてくれる。


「え~っと……それはオクトさんが好きだからじゃないでしょうか?」

 

「……え?」


「あの……キスされてましたし……」


「……見られてましたか……」


 ばつが悪いというのはこういう事かと、苦虫を噛み潰したかのような気持ちになる。

 そんな私の顔を見て、カノンが真顔で聞いてくる。


「オクト……あの女性と結婚するの?」


「しません!」


「でもキスしてたって……」


「したんじゃなくされたんです! あれは事故みたいなものです!」


 そう力強く宣言すると何を満足したのか、カノンが安心した顔になり、それ以上何も言わずに串焼きを手に取り観察しだす。

 串焼きを見ているとなんとなくエウテを思い出す。


「あの女……次会ったらただじゃおきません!」

 

 エウテに対して段々と腹が立ってきたのでそう独り言ちる。

 しかし憤っている私を完全に無視して、カノンが買ってきた屋台の串焼きをローレインに説明させながらパクパクと食していた。


 少しだけ寂しい気持ちが沸き上がり、気分が沈む。

 取りあえず昼食が終わったら宿に帰り、マチに襲撃を受けた事を相談しよう。


 そしてカノンの事を任せ、エウテを狩りに行こう、そう決めた。


「7つのヴェールの踊り」

「7つのヴェールの踊り」という名前は1891年にオスカー・ワイルドがフランス語で書き、1893年に英訳して翌年に英語版が発行された戯曲『サロメ』のト書き「サロメは7つのヴェールの踊りを踊る」(Salome dances the dance of the seven veils.)によるものである。このダンスはリヒャルト・シュトラウスのオペラ『サロメ』 にも組み込まれている。


2018年に公開された映画「累ーかさねー」内でも「7つのヴェールの踊り」を劇中劇で踊っています。



出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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