表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雲居藩妖怪抄  作者: 川端柳
第三幕――○○○(????)
81/267

20-(1)

 ちらりと肩越しに後ろを見て、彼女が座ったのを確認した土御門は居ずまいを正し、改めて伊織と向き合った。


「明日、改めてあの街道沿いの山へ行きます」


「勝手に行けばいいだろう」


「何を言っているのですか。あなたも来るのですよ? それから、その猫も」


「はぁ?」


 さも当たり前だと言わんばかりに言ってのける土御門に、伊織は思わず声を荒げる。



 冗談じゃない。どうして俺が。



 だが、土御門は伊織が声を荒げ驚いて見せたことへ、驚いている。どうやら彼の中では、伊織とすゞが来ないことの方がおかしいらしい。


「当然でしょう。この藩にいる間、あなたは私の面倒を見てくださるのでは?」


 素朴の疑問が如く投げかけられた言葉に、伊織は言葉を詰まらせる。確かに、奉行である鷹匠から土御門への助力を命じられていた。そのことを思い出し、伊織は仕方なく、分かった、と答える。すると土御門は嬉しそうに表情を緩ませた。


 彼の思い通りにことが進むのが癪で、水を差すように伊織が、しかし、と切り出した。


「百歩譲って俺はともかくとしても、すゞは何故(なにゆえ)だ。あいつはお役目に何の関りもないだろう」


 呆れや煩わしさといったものを含んだ言葉に、土御門は眉を顰め、すゞを振り返った。訝し気な視線にすゞは視線に息をのむ。


「あなたが主を務めるこの家に仕えるということは、あなたに式神として仕えているということではないのですか? まさかとは思いますが、何の縛りもなく、この家に置いているということですか?」


 部屋の温度がわずかに下がったように伊織は感じ、ぶるりと肩を震わせる。土御門は返事を待たず、懐に手を入れている。このままこの場ですゞを排するつもりであることを認めるように、鬼たちも半分腰を上げてている。



 疑わしきは罰せよ、ということか。



「どう言うかは知らないが、我らの関係をそう表すのなら、そうかもな」


 咄嗟に出た言葉は、はったりも同然。土御門の顔は伊織からは伺い見ることは叶はない。確認できる翁やすゞの方を見れば、目を見開いて固まったまま動かない。


 彼は体を戻して見せた表情は、笑顔だった。伊織の身構えていた体から思わず力が抜ける。


「やはり、そうでないかと思っていました。そうでなければこんなに堂々と、妖怪が家の中を動き回る筈がありません」


 土御門は一人で勝手に納得し、うんうん、と何度も頷いている。鬼たちも起こしていた体勢から座り直していた。



 どうやら難は逃れたようだ。



「では明日、そこの猫又も同行するということで」


「は?」

お読みいただきありがとうございます。


お盆休みになりましたが、帰省を諦め、現在一人でお盆を一人で過ごしております。

旅行や帰省は、移動する側も受け入れる側もリスクが大きい、のかもしれません。


正直、旅行したい願望がコロナ前よりあります。ステイホームにも良い加減飽きがきてきました。

伊織たちもここ一ヶ月ほど部屋から一歩も出ていません。作中では数十分ですが……。

そろそろ外出させなければ、彼らも皆さんも飽きてしまうかもしれません。

今暫くお待ちください。コロナ程待たせませんので、多分。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ