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雲居藩妖怪抄  作者: 川端柳
第三幕――○○○(????)
80/280

19-(4)

 後ろにいると、言ってやりたい。


 そう思いつつも、その義理は無い、と考えを切り捨てた。






「お話し中、失礼いたします」


 話が一段落したところで、廊下からすゞの声が届いた。伊織が諾の返事をすると、静々と入ってきた。


 上座を見て、伊織が座っていることに一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに素面に戻し、土御門と伊織の前に湯飲みを置く。土御門の前に置くとき、すゞの体が強張り、かたかたと茶托と湯飲みが小さな音をたてる。


 出された湯飲みに口をつけた伊織は、茶がぬるくなっていることに気がついた。すゞはそれだけの間、廊下で話のきりが付くのを待っていた、ということなのだろう。ただ聞き耳をたてていただけ、とも言えなくもない。だが、それだけこの家にとって翁の話は衝撃で、重大案件になりうるということがいえるだろう。


 ちらりと土御門をみれば、自身の目の前に置かれた湯飲みを睨みつけていた。なかなか手を出さず、すゞを見ては湯飲みを見る、といった謎の行動を繰り返している。


「嫌なら飲まなくていいぞ」


 棘のある言葉で伊織が煽れば、反発するように土御門は口をつけた。飲むというよりも舐めると言った方が近いかもしれない。


 その様子を窺い見ていたすゞは表情に影を落としながら、壁際に控えてる鬼たちにも茶を出していく。鬼たちは目の前に置かれた湯飲みを見て、目を瞬かせた。


「そいつらに出さなくても良いのだが」


 土御門が聞こえるように独りごつ。すゞはびくりと肩を震わせ、ちらりと彼の方へと視線を動かした。土御門の白い背中しか見ることは叶わず、どんな表情を知れいるのか彼女には分からない。だが、その先にいる伊織の顔は見え、目が合う。彼は黙って一度頷いただけだったが、すゞは自分の行動を肯定されたことに安堵し、茶を下げることなく部屋を出ていこうとした。




 彼女が敷居を跨ごうとしていた正にその時、土御門の鋭い声に制止される。足が半分廊下に出ているまま、動きを止めた。


「猫又、あなたも残れ。あなたにも関わりのある話だ」


 すゞは恐る恐る振り返り、伊織の表情からどうするべきか窺おうとしたが、その前に土御門に急かされ、渋々部屋の中へと戻る。


 隅に座ろうとしたが、そこには翁の姿があり、目を見開く。声を上げそうになるすゞに翁は口の前に人差し指を立て、黙っているように示した。すゞは慌てて出かかっていた声を飲み込み、翁の横に腰を下ろて漸く落ち着いた。


 翁はそれでいいと言いたげに頷いて見せるが、すゞは落ち着かないのか何度も翁を見てしまう。本当に大丈夫なのか、と。それでもいることを気付かれてはいけないと、顔を他所に向けるが、どうやっても不自然になってしまう。


 そんな彼女の気持ちが少なからず分かってしまうだけに、伊織は憐みの視線を向けていた。

お読みいただきありがとうございます。


長い休みの間、自分は結局大して執筆は進みませんでした。

皆様は、有意義な休みをお過ごしでしたでしょうか。


本来でしたら学生の皆様は長い長い夏休みに入っていたことでしょう。

今年は40日、なんて長い日は取れない、とニュースで見かけました。

東京や大阪では第一波と言われる四月頃を越える感染者が報告されるようになりました。

見えない足音は確実に迫ってきている、と言うことでしょうか。


気をつけましょう、と言った言葉は各所で言い尽くされている気がします。

皆様が健康で、また10日後にこの小説を読みに訪れいただけることを願っております。

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