表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雲居藩妖怪抄  作者: 川端柳
第三幕――○○○(????)
79/280

19-(3)

 陰陽頭(おんみょうのかみ)が部屋に入った時には既に菓子の影も形もなく、ぬらりひょんが茶を飲んでいるところだったそうだ。あまりに自然にいるものだから、陰陽頭も何の疑念も抱かなかったらしい。


「馳走になった」


 そう言い残し、ぬらりひょんは堂々と陰陽頭の横を通り過ぎ、部屋を出ていった。空になった皿と湯飲みを見つめ、陰陽頭はようやく事態を把握した。だが時既に遅く、陰陽寮中を探し回ったが、ぬらりひょんの姿はどこにもなくなっていたそうだ。


 そしてその日のうちに、ぬらりひょんの捜索が全陰陽師に言い渡されたのだった。





「つまるところ、陰陽頭の尻拭いをしに来たわけか」


「まぁ、そうなりますね」


「そんな陰陽師の恥みたいな話、俺にしてよかったのか?」


「確かに。良くないかもしれませんね」


 ははは、と軽く笑う土御門に、伊織は呆れて笑う気もおこらなかった。陰陽寮のお偉方はきっとこの男を持て余しているだろうことは、容易に想像がつく。


「今のは聞かなかったことにしてください」


「分かったよ」


 呑気な口調で頼まれ頷きはしたが、本当に隠す気があるのか、甚だ疑問なところではある。


 だが伊織の本心は、正直それどころではない。


 この家にはぬらりひょんがいる。しかも翁は京にいたと言っていた。どう考えても先程の話にいたぬらりひょんは、翁のことだろう。となれば、絶対に見つかる訳にはいかない。幸いにも未だ翁のことは気づかれてはいないようだ。



 このまま帰るまで見つからなければ。



 そう思ったとき、ふと目端で何かが動いたのが見えた気がした。伊織は気のせいだろうと思いつつも、部屋の隅に視線をやる。


 それを認めた時、息が止まるかと思った。


 いつからいたのか。鬼の座っているのと同じ壁の廊下側の部屋の隅に、事も無げに翁が座っていた。


「どうかなさいましたか?」


「いや」


 伊織は慌てて翁から目を逸らす。明らかに何かあった様子に土御門も振り返って、彼の見ていたところを見てみるが、誰もいない。首をかしげながら、伊織へ向かい直した。


 土御門が向かい直したので、翁は出ていったのか、と安心し、伊織は顔を正面に向け、再び表情が強張る。翁は変わらず部屋の隅に座っていた。出ていくつもりはないらしい。冷や汗をかきつつも、伊織は見えないふりをする他なかった。


「とりあえず、この藩に来た訳は分かっていただけましたでしょうか?」


「とりあえず、な」


「もし、ぬらりひょんを見かけましたら、教えてください」


「見かけたら、な」


 伊織の鸚鵡返しともとれる返事に、土御門は満足そうに頷いた。しかし、伊織はその後ろに堂々と座っている翁をちらりと見やりながら、内心ため息をついた。

お読みいただきありがとうございます。


あと数日のちに連休がありますね。

本来はオリンピックがあり、その開会式のための休みだったのですが、ただの連休になってしまいました。

この連休を有効に利用して何か書くなり、この作品の書き溜めなりできればいいのですが。

惰眠を貪って終わりそうな気が今からしています。


こうも外出が少ないと、元の生活に戻れるのか、ということの方がもっと不安です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ