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雲居藩妖怪抄  作者: 川端柳
第三幕――○○○(????)
73/280

18-(1)

 冬が終わったとはいえ、未だ春先。日が沈むのは早い。黄昏ていた空は藍を流したように濃い青が広がり、その深みを増し始めていた。行灯には火が灯され、室内をぼんやりと照らしている。


 相変わらず無断で家に上がり込むこの妖怪には、ほとほと呆れてしまう。そういう妖怪の質だとしても、だ。


 既に手酌で始めている翁の横に置かれた膳の前に伊織はどかりと腰を下ろした。膳の上に置いてあった湯飲みを手に取ると、翁の通い徳利をひったくる。何か言われる前にと並々酒を注ぐと、伊織は一気にそれを呷った。


「酷い有様じゃのぉ。見ているこっちが痛くなりそうじゃ。一体何があった」


「奉行所の仕事で、妖怪とやりあった。傷こそ多いが、治れば普段通りに戻れる。が、同僚はそうもいかない。もしかしたら、仕事を続けられんかもしれないだろうな」


「そんなにひどいのか?」


「腕をやられていた。それも、深くだ」


「それは、災難だったのぉ」


「あまり飲みすぎないでくださいませ。お体に障ります」


 空きっ腹に酒を飲み始めた伊織に、夕食を運んできたすゞが心配そうに声をかける。


「いらん世話だ」


 更に酒を流し込もうと湯飲みを呷るが、水滴しか落ちてこない。苛立ちながら酒を注ごうとして徳利を傾けるが、気づかぬ間に手の内からは無くなっている。驚いているところに、翁が横から器を満たした。


 傷の話をしたことで山でのことを思い返し、その流れから土御門の頭をよぎる。あの言動が、態度が癪に触って仕方がない。


「ったく」


「苛立っておるのは、他に訳がありそうじゃな」


 伊織が横目で睨みつければ、愉快気にからからと笑った。それが苛立つ伊織の神経を更に逆撫で舌打ちをさせる。


「今日やり合った妖怪、大蜘蛛なんだが、あわやというところで土御門とか言う奴に助けられた。そこまでは良かったんだが、その方の目的に手を貸さねばならなくなった」


「それはまた厄介な」


「それはまだ良い。仕事だからな。だがそいつ、人前で妖怪の話をするわ、俺が見えることを奉行の前で言ってしまうわ、挙句この家に来るとまで言い出してきやがった。断って置いて帰れば諦めるかと思えば、連れていた鬼どもに尾けさせるわ。本当に、何なんだあいつは!」


「お前さん、今日は厄日じゃのぉ」


「仕事じゃなけりゃ、誰があんな奴手伝うかよ」


 一気に呑み干され、空になった湯飲みは箱膳に音を立てて叩きつけられる。その音に隣にいた翁は肩をすくめた。


「あぁ、仕事行きたくねぇ」


 天井を仰いだ伊織は気の抜けた声で投げやりに吐き出す。翁も、湯飲みの音に驚いて部屋を覗いたすゞも、不思議そうに目を瞬かせた。

お読みいただきありがとうございます。


先日アマビエの話を致しましたが、最近妖怪に注目が集まっているようです。

自分はツイッターをやっている訳ではありませんが、職場の先輩にそういったSNSに聡い方がおり、そういったことを教えてくださいました。アマビエの次に来ているのは「ヨゲンノトリ」という妖怪だそうです。

職場の人にも自分が妖怪に詳しいことをしれれているのも、なんだか複雑な気がします。


ちなみにヨゲンノトリについてですが、残念なことに自分が手持ちの妖怪関係書籍に記載がありませんでしたので、これ以上書けることがありません。何方か詳しい書籍をご存知の方がいらっしゃいましたら、是非お教えいただければと思います。

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