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何か葉っぱとは異なる感触が指先に当たる。取り上げようと体を動かした時、何かに足を取られ、伊織はその場へ前のめりに転ぶように膝をついた。
ぬかるみに足を滑らせたのとは、違う。意識を足へと集中させれば、左足に何かが纏わりついている感覚がある。立ち上がろうとするもその何かに足を取られ、上手く動かすことが叶わない。罠にかかった獣のように足を前後左右に動かしてみるが、絡みついた物は一向に外れない。仕方無く脇差を抜き、足の周囲に刀を振ってみる。刃に紐状のものが当たり、斬ったりする感覚が手に伝わる。再び足を動かしてみれば、然程の不自由なく動かすことができるようになっており、ようやく解放されたようであった。
腰を地面に落ちつけたまま、躓く前に掴んだ物を確認する。手の中にある布切れは、どうやら脚絆であった。ところどころ破れ、土にまみれ、屑と呼べるほどに汚れきっている。落し物かと思い、土を掃う。砂汚れの下はほとんどが元の布と色とは別の色に染まっていた。
黒くくすむ、赤みがかった染み。見覚えのある色。
脚絆は血に染まっていた。
この脚絆の持ち主は、何者かに害されたのかもしれない。何日にも戻っていないことを踏まえれば、この脚絆の持ち主の命は、既にないだろう。
脚絆を観察していると、それに何かが絡まっているのが見えた。細い糸のようなものが、きらきらと木漏れ日の光を反射している。糸を脚絆から抜き取り、日の光にかざしてみると、透明な蜘蛛の糸だということは分かった。何日もの間野に晒されていれば、蜘蛛の糸が絡まることもあるだろう。
そう結論付け、ひとまず脚絆を袖の中に入れる。自分の足元を見ているが、何が絡まったのか目で見ただけでは分からない。足に手を沿わせてみると、何か手に貼りつくような、絡まったような感触があった。
手を確認すれば、蜘蛛の糸。伊織は思わず息を飲んだ。
死んだと思われる人物の持ち物に蜘蛛の糸が絡まっており、自分の足にもまた蜘蛛の糸が絡まっていた。これが無関係とは考えにくい。はっと顔を上げ周囲に目を凝らせば、木々を覆うように、全体像が見えないほどの大きな蜘蛛の巣が張り巡らされていた。
この山は危険だ。
そう直感した伊織は、傍らに置いていた脇差を引っ掴み、慌てて立ち上がった。蜘蛛の巣に背を向け、二人のどちらから先に合流するか逡巡する。急いで下山しなければ、自分たちの命も危うい。
「あぁ。愚かな人間が、また巣にかかりよった」
何の前触れもなく、背後から囁きと共に嗤い声が聞こえた。ぞくり、と肌が粟立つように震え、これまで以上の寒気を感じる。背中を冷たい汗が伝ってゆく。驚きのあまり身が固くなる。首元にひんやりと冷たく硬い物が触れた。
お読みいただきありがとうございます。
クリスマスが近くなりますと、ついクリスマスソングばかりをエンドレスで聞きたくなります。
皆さまの好きなクリスマスソングは何でしょうか。
自分が最近聞いているのは、長年好きなグループの最新アルバムにのみ入っているクリスマスソングです。
さて、話は変わりますが、気がつけば総合アクセス数が6000を超えておりました。
偏にお読みいただいております皆さまのお蔭です。心より感謝申し上げます。
今後とも、何卒よろしく申し上げます。




