表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雲居藩妖怪抄  作者: 川端柳
第三幕――○○○(????)
56/296

14-(1)

 河濃山で行方不明者が出るようになったのは、春になり、山に人が入るようになってからのことであった。冬の間の出入りは把握できてはいないが、少なくとも前年の秋にこのような噂はなかった。


 最初に異変に気がついたのは、山の麓にある村の猟師の妻であった。猟師が山に入ったまま何日も帰ってこなかったとのことである。山の向こうへ下りる訳はない。行き方知れずになった猟師は銃を持って山に入るようになって何十年の人物だ。山で迷うことなどありえない。銃の腕前も相当なもので、一人で熊撃ちをするような男である。獣に負けたということも考えにくい。


 奥方の話に村の人々も頷き、猟師を探しに仲間の猟師数名が山に入った。しかし、帰ってくる者は、誰もいなかった。


 こうなってくると、いよいよ怪しくなってくる。


 関に詰める藩士に名主が訴えを上げると、珍しくその訴えは城にまで上がった。街道を歩く人間が峠越えをしている時に河濃山へ迷い込むことはしばしばあることである。それは武士も例外ではない。河濃山への人の出入りは殊の外多いのだ。


 藩としては幕府直参の武士にまで累が及ぶことを恐れた、ということである。訴えを受けた藩士が軽く調べたところでは、既に十人を超える人間の行方が分からなくなっているらしいが、本当はもっと多いと考えられた。


 藩のお偉方はすぐに解決せねばならない、と思う一方で、己等が危険に身を置くのは避けたい。そういった思いは誰もが同じであろう。上の者から命が下され、それが更に下の者へ下されるのをくり返し、結果として奉行所にその命が下された、という訳である。


 そもそも藩内の、特に城の外の揉め事厄介事を解決するのは奉行所の役割だ。仕方がないと言えば仕方のない話であった。そのお鉢が回ってきたのも必然と言えるだろう。命じられた以上、断ることなどできはしない。






「此度はとりあえず河濃山の状況を把握し、報告をするまでがお役目だ」


 北の街道までの舟の上で九曜が一通り説明しながら、眉間の皺を深くする。


「奉行が仰るには、危険が少ないと分かれば上の人間がすぐに動くだろう、とのことだ。手柄が欲しいのは誰もが同じ。その時我らの苦労がねぎらわれることは少ないだろう、と。上の人間にとって我らは使い捨ての駒でしかないらしい」


 吐き捨てるように告げられた言葉に、黙って話を聞いていた伊織と、共に舟に乗っている同心の櫛松帯刀は、驚きのあまり身を引く。突然二人が動いた為、船が不安定に揺れて波をたてる。船頭に、気ぃつけろっ、と怒鳴りつけられた。


「奉行は身を危険に晒してすまない、と謝っておられた。また、本当に命の危険を感じた時は何が何でも逃げろ。手柄を横取りしようとする奴等の為に命を粗末にするような真似はするな、と我らを心配なさっておられた」


 本当に申し訳なさそうにする鷹匠の姿を九曜は思い出す。この人の為に何が何でも帰って見せよう、と心中で決意を新たにした。






 命の危機、と聞き伊織は思わず櫛松へ目を向ける。櫛松は視線に気付くと、へらっ、と複雑な笑みを浮かべて見せた。


 危険があるなら、腕の立たないこの人を何故選んだんだ。


 伊織は九曜の人選に心の底から呆れかえる。とは言え、今更彼だけ追い返すことはできない。何も言わず深くため息をつくことしか、伊織にはできなかった。

お読みいただきありがとうございます。


本日、職場の元先輩の結婚式があり、北陸まで職場の先輩たちと行ってきました。

海沿いの民宿に一泊しましたが、良い宿でした。

昔、一人旅をした時に民宿へ泊ったのですが、随分と埃っぽかった記憶があります。

宿というところは、本当に善し悪しの差が大きい気がします。


と、打っていたら、日付を超えていました。

なので、昨日になってしました。

今年もあと一ヵ月。体調不良が今年中に治ることを祈るばかりです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ