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雲居藩妖怪抄  作者: 川端柳
第一幕――○○(????)
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2-(1)

 すゞが花菱家に来て、一月半が経過した。一月も経たない内に辞めていく女中もいる中続いている方だと、伊織も佐吉も感心していた。


 近頃は少し仕事に馴れてきたのか、そつなくこなすようにはなってきた。例え伊織が仕事をとることがあろうとも、全く気にかける様子も無い。料理の味に彼が何か言えば、次の膳の時には何も言わずに修正してある。近頃は伊織はすゞに対し、何か注文を付けることはほとんどなくなっている。すゞは女中としての優れた実力を発揮していた。


 佐吉との仲も悪くは無い。伊織が家にいない間、仕事の合間に話をしたり、一緒にお茶を飲んだり事もある。


 だが伊織も佐吉も、すゞの過去についてはほとんど知らなかった。紀州の商屋で働いていたことくらいで、それ以外のことを聞いてはいないのだ。すゞが自ら話すようなこともなく、二人が尋ねることもない。その代りの様にすゞも二人の身の上話などについて深く尋ねることもしなかった。


 仲は悪くは無いが、家族同然と言うこともない。あくまで主人と使用人の距離感が保たれ続けていた。





 季節は冬。師走ももう終わりに差し掛かっている。


 伊織は朝げをとりながら何度もため息をついていた。


「どうかなさいましたか。何やらお疲れのご様子でございますね」


 すゞが伊織の顔を覗きこんで尋ねる。伊織はまた、ため息をついた。


「近頃藩内で辻斬りが横行し、すでに三件に及んでいる。下手人の正体も掴めず、奉行所一同難儀しているんだ」


 伊織は掌で目を覆い、俯いて何度目か分からない溜め息をつく。すゞは何と声をかけたら良いのか分からず、おろおろとしている。伊織はそれに、と忌々しげに続けた。


「俺も疲れが溜まっているのか、近頃良く分からんものを目にすることがある。さっさとこの件を片付けたいものだ」


 すゞは彼の言葉に思わず身を固くした。その動きが目端に写ったのか、伊織は顔を上げすゞを見る。


「どうかしたか」


「いえ。早く下手人が、捕まると良いですね」


 すゞの笑みはどこかひきつっている。伊織は首を傾げるが、深くは尋ねることはせず、朝げを掻き込んだ。


お読みいただきありがとうございました。


最近になって気が付いたのですが、我が家の夕飯の食卓では高確率で時代劇が流れています。

そして、再放送率が高かったです。

他のご家庭の食卓ではどんなテレビが流れているのか、気になる今日この頃です。


11/29 本文一部訂正いたしました。

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