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雲居藩妖怪抄  作者: 川端柳
第二幕――○○(??????)
22/280

6-(1)

 辻斬り事件が落ち着き、世間ではもう噂されることはなくなった。奉行所の中でも辻斬りに関する事務的な処理も全て片付いた。





 太陽は日を追うごとに長くなっていく。暖かな陽気も続く。梅の蕾も膨らみ、いくつか花開いている。


 二月も半分が終わったこの日、伊織はいつものように佐吉を連れて奉行所へと向かっていた。


 どこからか猫の鳴き声が聞こえてきて、伊織たちは足を止める。その声はどこか鋭さを含んでいた。


「流石に喧しいな」


「まぁ、春ですから」


 鳴き声のした方に向けていた視線を戻し、足を進めた。





 奉行所に着き、佐吉から荷物を受けとると、佐吉は帰っていく。


 御用部屋に入れば申し送りを始めるところだった。伊織は一番下座の火鉢の近くに腰を下ろす。湯飲みに注いだ白湯を啜りながら夜番の話を聞いた。それが終われば夜番の人たちは帰り支度を始め、日番の人たちは仕事支度を始める。



 伊織は湯飲みを空にすると部屋を出ていく。それに気がついた兵衛が慌ててその後を追った。


「見廻りか? どうせだから、一緒に廻ろうぜ」


「断る。どうせ北の街道沿いの舟宿に行くつもりだろ」


「でかい声で言うなよ」


 兵衛は口の前で人差し指を立て、しぃ、と牽制する。慌ててあたりを見るが聞いていた人はおらず肩を撫で下ろす。


 奉行所の門を出て、一つ目の角を曲がったところで、声を潜め、分かってるじゃねぇか、と伊織の肩を引き寄せた。伊織は深いため息をつく。つくづく下らない、と言うように。


「朝っぱらから行くところじゃねぇだろ。お前は猫でもねぇのに盛りやがって。いや、年中盛っているお前と一緒にしたら猫に悪いな」


「ひでぇ言いようだな」


 兵衛の声はもう元の声量に戻っていた。口許はにやにやと笑っている。


「ともかく断る。そんなに行きたいなら一人で行け」


「付き合い悪いなぁ。なら、今度夜にならどうだ? きくが会いたがってるってよ」


「んな常套句真に受けるかよ。まぁ、夜なら付き合ってやるよ」


「よし! 約束だからな」


 兵衛は伊織の背中を勢いよく叩くと、笑いながら別れた。


 至極機嫌の良さそうな背中を眺めながら伊織はまたため息をつく。


「あいつ、許嫁はいいのかよ」


 身を固めれば女遊びも収まるだろう、なんて思いながら自分の見廻りの場所へ向かった。






 彼がこの日見回りを任されたのは城下町。店が軒を連ね、江戸の町とまでは言わないが、それなりの賑いを見せている。まだ朝方にも関わらず店には暖簾がかかり、早くも客が入っていた。

お読みいただきありがとうございました。


作中は二月中旬まで一気に時計の針が進みました。

今回も章タイトルはクイズのようになっています。よろしければ予想してみてください。


さて、現実では本当にもういくつ寝るとお正月です。正月に凧上げも独楽回しも自分はしたこと有りませんが、皆様は経験ありますでしょうか?

お正月と言えば『初天神』なんて有名な落語がありますね。新年のお笑い番組で一席かけてもらえないかな、なんて思ってみたり…。

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