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雲居藩妖怪抄  作者: 川端柳
第一幕――○○(????)
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第一幕-〈余談〉

 夜半。牢屋には捕らえられた罪人たちが寝息を立てていた。


 大きな牢には破落戸共が一緒くたに放り込まれている。中には殺しをして捕まった者もいるが関係ない。罪の重い軽いで牢が変わることはそうそうないのだ。違いは男女と武士かどうかである。




 だが、辻斬りであるこの男、柊木(ひいらぎ)大輔(だいすけ)のいる牢には他に誰もいなかった。彼を恨むものがわざと罪を犯して牢に入り奴を殺す、と言うことがないようにと奉行所が行った措置である。


 柊木が行った辻斬りには裏があり、黒幕がいるのではないか、と奉行所は考えていた。それ故に、彼が殺されるのは避けたいところなのである。





 柊木が目を覚ますと、まだ牢は闇の中。体を起こして見上げた格子の高窓からは月が煌々としている。


 ふと、闇の中に気配を感じてそちらを見れば、光る目が二つ浮かんでいた。


風魔(ふうま)か?」


 柊木がそう声をかければ二つの目は近づいてきて、月光の下に姿を表す。それはつい昨晩まで柊木と共にいた鎌鼬だった。


「心配しなくてもお前の裏にいたお人の名前は死んでも言いやしねぇよ」


 手をひらひらと振って軽い調子で言った。風魔と呼ばれた鎌鼬は両手の鎌をゆったりと構えながら、音も立てずに柊木に近づいてくる。その目は鋭く、獲物を狩るときのそれだった。


「上の判断か?」


 手を下げ、一転して真面目な口調で尋ねれば、風魔は一鳴きして応える。それは肯定の意味を表しているのだろう。柊木は目を閉じ、そうか、と頭を少し下げる。



「後生だ。殺るなら楽に逝かせてくれ。どうせ死ぬなら苦しまずに逝きてぇってもんよ」


 そう言う彼の口角は上がっていた。


 風魔はもう一度鳴くと、勢いよく柊木に迫る。鋭い風の切る音が近付いてくる。風魔が纏った風の余波が頬を撫でた。


 柊木の喉に何かが当たるような感触がする。



「さらばだ、大輔」


 地を這うような低い声が柊木の耳に届き、脳にそれが伝達される。首の肉を何かが撫でていく感覚。柊木の感覚はそこで終わった。





 力の抜けた柊木の体は座った形のまま前のめりに倒れた。水気の混ざった音を立て、頭が床にぶつかる。傷の周辺に僅かに血溜まりが広がるが、直ぐに血だまりの動きは止まった。


 風魔は己の鎌についた血を舐めとる。月の光を返す鎌がきれいになると、一気に高窓まで飛んだ。




 出ていく直前に冊子に止まり、柊木だった体を見下ろす。






「残念だ。お前はいい器だったのだがな」





 風魔は枠を蹴り、闇の中へと姿を消した。











 * * *


 【第一幕――猫又  了】


お読みいただきありがとうございました。


この余談をもって、漸く第一幕が幕引きとなりました。

次の章、もとい次幕もこれまでと同じペースで更新していこうと思います。


さて先日、ユニークアクセス数が500人を突破致しました。

いつもお読みいただき本当にありがとうございます。心より感謝申し上げます。

これからも精進して参りますので、何卒宜しくお願い致します。

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