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雲居藩妖怪抄  作者: 川端柳
第一幕――○○(????)
18/267

5-(1)

 辻斬り捕縛から一夜明け、奉行である鷹匠から休みを貰った伊織は着流し姿で縁側に横になっていた。未だ肌寒い風の中、柔らかな日差しはぼんやりとする彼を眠りへと誘う。ゆっくりと船を漕ぐが、眠りに落ちそうになる度に頬づく手から頭が落ち、現実へ戻されることを繰り返していた。


 すゞは家の中の雑巾掛けをし、佐吉は庭を竹箒で掃いている。




「旦那様、邪魔です」


 伊織が何度目かの船を漕ぎ始めた時、頭上から声がかけられる。まどろむ目で見上げればそう離れていない距離にすゞの顔があった。その目は冷ややかなものである。手元に目を移せば、雑巾に両の手が添えられていった。


「あぁ、すまんな」


 伊織は大きな欠伸を一つすると縁側に接する部屋に移動した。彼がいたところが雑巾で拭かれていく。部屋の中からまたぼんやりと日だまりを眺めていると、今度は座敷箒を手にすゞが横切った。


 居所を失った伊織は縁側から裏庭に降りると、面倒臭そうに井戸の水を手桶に汲む。七分目まで入れ、畑の野菜が残っているところに撒いていく。


「そろそろ種を買ってこないとな」


 水撒きを終えた伊織はそうひとりごち、畑の隅にまだ水の入っている桶を置く。







 それをそのままに彼が家の中に戻ろうと沓脱石に足をかけたとき、玄関の方から声がかかった。次いで景気の良いすゞの声が聞こえてくる。


 伊織は来客の声に聞き覚えがあった。と言うよりは、聞き馴染みがあった。伊織は草履を脱ぎ、玄関に向かう。


「少々お待ちください」


 柱から覗き見れば、すゞが伊織を呼びに来ようとしているところだった。


「必要ない。兵衛、庭に回れ」


 衝立の奥から声をかければ、来客・三石(みついし)兵衛(ひょうえ)は分かったと言って庭に回った。


「茶を頼む」




 伊織はそれだけすゞに声をかけると、自身も庭に面する縁側に向かう。縁側には既に兵衛が腰を下ろしていた。


「休みの俺に何の用だ。下らないことだったら追い返すぞ」


 伊織も兵衛の隣に腰を下ろす。兵衛の表情を盗み見れば至極真剣な顔をしていた。


「知るのは早い方が良いと思ってな」


 兵衛が言葉を切った時、丁度すゞが茶を運んできた。彼女は何も言わずに二人の間にお茶を並べる。












「今朝方、あの辻斬りが牢で死んでいるのが見つかった」

お読みいただきありがとうございました。


作品に現実の季節が追いついてきましたね。

最近の急な気温の変化に、自分は体調を崩してしまいました。皆さまもお気をつけください。


自分の中で想定しているメインキャラの一人である三石兵衛さん。「みいし」とも読めますが、アニメヲタクの皆さまなら間違いなく読んで下さると思います。ですが一応念を押しておきます。あくまで「みついし」です。

しかし、今後彼が活躍するかは、今のところ未定です。


11/11 作者コメントを一部修正致しました。

月に変わってファンの皆様にお仕置きされるところでした。心よりお詫び申し上げます。

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