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雲居藩妖怪抄  作者: 川端柳
第一幕――○○(????)
10/280

3-(1)

 あとに残ったのは伊織と辻斬りの男、そして辻斬りに殺された男の遺骸だけとなった。伊織は懐紙を取り出し、刀の血を拭う。脂で曇ってはいるものの、曲がってはいない。赤くなった懐紙をその場に捨て、刀を鞘に納めた。


 辻斬りの男に気を払いながら、遺体に近づきしゃがみこむ。辻斬りの男は諦めたのか、大人しいものである。



 提灯を先程自分で投げ捨てた為に、光源は月からの灯りしかない。月が雲から顔を出すのに合わせ、目を凝らしながら横たわる遺骸を観察する。遺骸は背後と正面から袈裟斬りに斬られていた。刀を抜こうとしたのか、右手は柄に添えられたまま体の下敷きになっている。反撃する間もなく殺されたのが察せられた。身なりは悪くはない。腰には刀の他に脇差も差してある。武士の身分で、藩にお役目を戴いている者なのだということは分かった。


 伊織は倒れている男の体の左側を起こし、なんとか腰の刀を抜く。胴の下敷きになっていた右手をからの上まであげ、その刀を無理矢理掌に握ぎらせた。そのまま体を元のようにうつ伏せに戻した。これで見た目は、刀を抜いて振りかぶった所を斬られたように見えるだろう。





 足音と共に通りの方から提灯の明かりが近づき、伊織たちのいる開けた場所が明るくなる。襷をかけた与力や同心、目明したちが駆けつけてきた。大人しくしている男を目明しや同心たちが取り押さえて、しっかりと縄を打ちなおす。その間、男は一切の抵抗を見せることは無かった。


「花菱、どういうことか説明いたせ」


 地べたに座り込んでいた伊織に与力の州浜(すはま)左門(さもん)が近づき尋ねた。伊織は乱れている呼吸を整える。


「自分が来た時には既にこの男の息はなく、そちらの男がそばに立っておりました。血に濡れた刀を持っていた為、辻斬りか否か問うたところ、そうだと申した故、捕らえました次第でございます」


「成程、ご苦労であった」


 州浜は同心たちに指示をだし、辻斬りの男を奉行所へ連れて行かせ、死んでいる男は廃屋にあった戸板に乗せ、同じく奉行所へ運ばせた。伊織も同僚に肩を借りながら、その場を引き上げた。







 伊織は奉行所に戻ると、まず傷の手当てをしてもらった。しかし手当てするのは医者ではなく、同僚である同心の男。しかも他の同心たちが見ている中で、である。ほどほどに手当てをしてもらったところでそれ以上の手当てを断り、伊織はすぐに身なりを整えて部屋を出た。


 雲居藩奉行所の奉行、鷹匠(たかじょう)孝之介(こうのすけ)の部屋へ行き、事の次第を報告する。鷹匠は伊織の話を黙って聞き、労いとして特別給金と傷が治るまで養生するようにと休暇を貰った。




 奉行の部屋を出た伊織は、与力と同心のいる広間には行かず、詮議所へ向かう。同僚が手当の時に州浜が伊織を呼んでいることを伝えていたのである。

お読みいただきありがとうございました。


本当は、20日更新したかったのですが、23:45頃に更新していない事を思い出し、慌てて更新しています。

基本、十日毎に更新しようと考えていたのですが、こんなにも早く崩れるとは。


新キャラが二人出てきましたが、内一人が台詞も無く退場していきました。

次はいつ出てくるのでしょうね、鷹匠さん。

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