第14話 喜 哀楽
今回は煙の妖精さん視点です。
でわ、第14話をどぞ!
僕はいじめられていた。
原因は分からない。
ある者は「女っぽいんだよ!気持ち悪い」と言う。
またある者は「てめぇを見てるとムカつくんだよ!」と言う。
じゃあ見なければいいじゃないか…。
そう思っても言えばまた殴られる。
僕は生きてる意味はあるのかな………。
僕は自殺した。
死は一種の『逃げ』だというが僕はそれでも別に良かった。
この空間から逃げられるのであれば。
いじめから逃げ出せるのであれば。
助けを求めても助からないと分かったのであれば。
結論から言うと僕は死ねなかった。
確かに自殺はした。
ビルの屋上から投身自殺をしたんだ。
助かる見込みなんてものはない。
即死だと思った。
走馬灯はあっても優しかっただろう両親の顔のみ。
両親は僕が生まれてすぐに他界した。
母さんは僕の命と引き換えに……。
父さんは病院に行く途中に交通事故で……。
ごめんなさい母さん、父さん。
僕には無理だったよ。
そこで僕の記憶は途切れた。
と思ったのに……。
気が付くと僕の前には角をはやした女性と男性。
肌の色は黒っぽく、目は女性のほうが赤色で男性のほうが空色だった。
よくアニメとかに出てくる魔族のようだった。
困惑した僕はここはどこか聞こうと思い声を発した。
しかし、出てきた声は…。
「おぎゃああ」
へっ!?
訳が分からない。
僕は耳を疑った。
でも聞き間違えじゃない。
僕は声を出したんだ。
でも出てきた声は赤ちゃんのような声のみ。
この時点で僕は転生したんだと分かったよ。
前世の記憶を持ったままでね。
僕は十五歳になった。
この世界じゃあこの年が成人らしい。
僕は村長に呼び出され、成人の儀式の説明を受けた。
僕たち魔族は人族と違って敵が多い。
それは過去に魔王と呼ばれる者が人族を含む他種族の者たちを奴隷扱いをしたことに起因する。
成人の儀式を通して一人前の魔族にするつもりなのだ。
成人の儀式の内容は一人で魔物を倒しに行くこと。
僕は普段から狩りに参加しており、容易いことだった。
数分で魔物を狩り、それを持って広場に戻った。
皆がさすがだと褒めてくれると思って。
前世と違い必要としてくれる人たちのことを想って。
なのに……。
悲劇はまた起こる。
戻ったらそこは火の海。
どこを見ても血の海。
そして高笑いをする人族の騎士。
それを見てからの記憶はない。
気が付いたら僕はここのカプセルの中にいた。
もう一度転生したのかもしれない。
その時はすでに体が魔族じゃなかった。
妖精のようだった。
羽もある。
手足もある。
顔もある。
でも、あるモノがなかった。
過去に転生したということは覚えているし、僕の家族を騎士に殺されたという記憶もある。
では何をなくしたかって?
人として、生物として大切な感情だよ。
恨みや怒りといった感情。
僕がどう怒ってどう行動したのかが分からなくなっている。
喜怒哀楽のうち怒が無くなった状態なんだ。
今の僕は。
だから「許せない」や「殺してやる」という想いは残っていても、行動に起こせないんだ。
ただその想いに比例して黒い靄が出てくる。
これが僕の怒りや憎しみなんじゃないか……。
僕は復讐するために力をつけ、怒りの感情を思い出す必要がある。
だからこのダンジョン計画には参加するつもりだ。
僕にはやらなきゃいけないことがある。
復讐と感謝。
僕が前前世で持てなかった想いだ。
これが僕の記憶。
そしてこれからやらなければならないこと。
僕の名前は有栖河晴樹。
皆よろしくね!
誤字脱字があればどんどんお願いします。
初めて復讐というものを書いてみました。
どうだったでしょうか。
前×3世ではありませんのであしからず。