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序章。
クリス=ノートは堅実な青年だった。
だからこそ、彼は自身の通うフォレスト学院においても、魔法専門コースには進まず学業優先のコースを選んだのだ。
その理由はもちろん、安定した将来の為。
魔法が標準知識となっているこの世界で、それに特化した技術や能力、資格を持つ事は重要な意味合いを含んでおり、それ自体が就職に有利である事も事実である。
しかしノートはそれを選ばなかった。
魔法に興味が無かったからだ。
確実な道を、確実に進み、確実な会社に就職する。
それがノートの夢だった。
だから生まれつき、ありとあらゆる魔法を制約無しに無制限に使える能力を有する事も、ノートにとってはどうでもいい事だったのだ。