第7話 チュートリアル的な話
某運営
「さて、03・・・いや、今はトロワだったね。調子はどうかしら?」
『はい!すべて問題有りません!』
「そう、専属AIがんばってね?」
『はい!サイハさまのお手伝いがんばります!』
『それではチュートリアルを始めますが・・・サイハさまはβテスト経験者ですので、チュートリアルはスキップすることが出来ますがどうしますか?』
「ちゃんとやるよ。βから2ヶ月ほど経つしなぁ、感覚忘れてるかも知れんから。」
『了解しました!それではチュートリアルを開始します!先ずはステータス画面の開閉ですね!”ステータス”と発声するか頭の中に思い浮かべて下さい!』
「ん。”ステータス”。」
目の前の空間にステータス画面が浮かび上がった。キャラクターネーム、性別、HP等の情報が表示されている。
NAME:サイハ・♂
JOB:
TITLE:
HP:50
MP:50
SP:50
STR:10
INT:10
DEX:10
AGI:10
MID:10
STM:10
LUK:10
BP:15 SKP:5
と、綺麗な数字が並んでいる。β開始時と同じ数値だな。違いはBPとSKPがあの時より少し多い。最初は確かBP10のSKP2だったはず。
『問題なく開けたようですね!閉じるときも同じようにすればいいです!』
「なぁ。βの時とBP、SKPが増えてるみたいなんやけど。」
『テスターの皆さまへの特典の1つですね!BP+5、SKP+3されています!』
「あぁそうなんや、了解了解。(”ステータス”クローズ)」
頭の中でクローズを唱え、ステータス画面を閉じる。
『次はインベントリを開いてみて下さい!やり方は同じです!』
「”持ち物”」
目の前に自分のインベントリの中身が表示される。キャラクリで選んだ武器と最下級POTx5と最下級MPOTx5が、間違いなく入っている。他にはβ参加記念特典だと思われる”EXP増加薬”x3、”染料”5色それぞれ5個等が入っていた。
『あとはクエストアイテムや貴重品等も、パネルを操作するか発声、頭の中で念じれば切り替わります!閉じ方も同じですね!』
「ん、問題ないわ。」
パネルを操作してインベントリを閉じる。
『次にスキル画面ですね!開閉は同じくです!』
「(”スキル”)」
次は発声ではなく思考でオープンしてみた。こちらも問題なくできるようだ。
目の前の取得済みスキルに引き継いだ【採取】【採掘】【鍛冶】【鑑定】【木工】【策敵】の6つがメインスキルに入っていた。
「クローズ」
発声でスキル画面を閉じた。すべて問題なく開閉できることを確認した。
『ステータス等の確認は問題ないようなので、次は武器の装備です!”インベントリ”を開いて武器をタッチするか、”武器装備”と発声か思考で装備されます!』
「("武器装備")」
左の腰に刀が装備された。鞘から引き抜いてみたが、なにやら模擬刀の様に見える。あまり切れ味は良くなさそうだ。刀を鞘に戻す。
『問題なさそうですね!特別な理由がない限り街中等の戦闘禁止区域内で武器を構えたりすると、衛兵を呼ばれたりして処罰される可能性があるので気をつけて下さいね!』
「ん、了解や。それもβの時にはなかったなぁ。」
『はい!正式公開によりこちらは導入されました!βテスト時のレポートに”街中なんかの戦闘禁止区域で武器を振り回す奴が居て鬱陶しい”といった御意見が多く寄せられていましたので導入となりました!プレイヤーの方がNPCと呼ぶこの世界の住人にもAIが採用されていることはご存じだと思いますが、この公開に当たりましてそれらが強化されています!なので、街の住人などにむやみに危害を加えたりすると大変なことになりますよ!最悪この世界に居られなくなるかもしれません!』
「まぁ俺はそんなことせぇへんやろからその辺りは大丈夫やろ。でも気ぃはつけるわ。」
『はい!では次は戦闘練習です!先ずは、通常攻撃と物理系アーツをこの案山子で練習してみて下さい!納得されればお声を掛けていただければ次に進みます!』
トロワがそう言うと、目の前に2メートル弱の案山子が現れた。
「よっしゃ、ほんなら始めるか。」
刀を抜き、右足を1歩踏み込み目の前の案山子に右袈裟斬りを仕掛け、左足を1歩踏み込みながら刀を廻し、逆袈裟に斬る。そのまま左足を1歩引き刀の物理系アーツ”一閃”を唐竹割りに打ち込む。
残心の後元の位置に戻り、再び構える。案山子の首筋を右手だけで刀を振り抜き、刀を廻して逆袈裟に跳ね上げそのまま首筋に”横一閃”を叩き込む。右足を軸にして回転しながら左肘を案山子の顔に打ち込み両手で持った刀を青眼に構えて暫し残心。後ろから『お~!凄いのです!』とトロワの興奮した声が聞こえた。
再び元の位置に戻り、刀を鞘に収め右手を刀の柄に軽く置き、左手で鞘を掴む。そして鞘走らせた抜き打ちを案山子の首筋に叩き込む。いわゆる”居合い抜き”だがアーツではないので特に威力は変わらない。
〔今の経験によりスキル【刀】を修得しました。〕
このチュートリアルでは、最初に選んだ武器のスキルを修得することが出来るようになっている。基本武器スキルは修得したい武器を使い続ければ手に入れることが出来るが初期装備に選んだ武器はそれ以降の物よりも修得しやすくなっている。
「これでええわ。」
刀を鞘に戻しながら、トロワに終了を告げる。
『了解です!サイハさま凄かったです!それにとても綺麗でした!』
少し興奮気味にトロワが応える。
「ありがと。そんなん言われたら照れるやん。」
『また観たいです!では次の練習に移ります!次は案山子ではなく攻撃してくる魔物を相手にして、回避や防御の練習をして下さい!練習に満足行きましたら私に終了を告げるか、そのまま倒して下さい!其れほど強い相手ではないので数回攻撃を当てれば倒せるはずです!』
「了解や。」
『其れでは行きます!』
トロワが言った直後目の前に光が集まり人型を形作っていく。光が収まった後そこに立っていたのは。
1m近い棍棒を持ち、身長2mを優に越える・・・オーガが居た。
「これがそんなに強ないとはなかなか剛毅なことやなぁ」
『え!?なんでオーガが!?ここで相手をするのはゴブリンの筈なのに!?』
何やらイレギュラーが発生したらしく、トロワがパニックになりながらもどこかに連絡を取っている。恐らく運営か何かだろう。
オーガはそこから動くことなく静かに佇んでいる。只立っているだけだというのに、言い表せないようなプレッシャーを感じる。間違っても其れほど強くない相手ではない。こんな所に出てきてはいけないランクの魔物だ。その目線が何かを探すように左右に動き。・・・あ、眼があった。
『ツヨキタマシイモツ人ノ子ヨ。』
「おおぅ、あんた喋れるんかい。ってことはまさかユニークか?」
通常の魔獣はもとより、魔物も人の言葉は喋れない。しかし、ユニークと呼ばれる(いわゆる”名持ち”)魔獣や魔物は言葉や念話の違いはあれど、人と意志疎通を図るものが居る。
『我ガ名ハ〈ガンガディ〉。ザデ族ノセンシダ。オマエノ名ハ?』
「俺はサイハや。んでガンガディ言うたな?その戦士が俺みたいな駆け出しにも成ってないような奴に何のようや?押し売りやったらいらんで?」
『サイハ、良キ名ダ。サイハヨ、我トタタカッテクレ。』
「押し売りはいらん言うてるのに、戦いの押し売りかいな。正直御免被りたいんやけど逃げられそうにないなぁ。しゃ~ないか、出来る限りの全力で行かせてもらうわ。」
『感謝スル。デハ・・・行クゾ!』
「トロワ、離れとき。」
『あ、はい!サイハさま!がんばって下さい!今連絡したので直ぐに対処されると思います!』
「まぁ死なん程度にがんばるわ。」
今、イレギュラーすぎる闘いが火蓋を切った!
第7話です。
チュートリアル中のイレギュラーです。良くありますね?(ねぇよ!)実際にはまぁ体験したくないシチュエーションですが。
これからもいろいろなユニーク(いわゆるネームドモンスターってやつですね)が登場します。お楽しみに。