第21話 お約束?・・・的な話
お約束の展開に!
『貴方ですね?我が子等を殺している人の子は。』
「異議あり。」
目の前の存在が何者かは判らないが(何となく判るけど)誤解は解いておかないとどう考えても面倒なことになる。
『異議とは?』
「アンタが何者か知らへんけど、その言い方やとコッチがアンタの子ぉとやらを殺して回ってるように聞こえるんでな。ソコはしっかりと訂正させてもらうわ。」
『違うとでも言うのですか?』
威圧感が更に上がった。どうやらご立腹のようだ。さっきよりも更に怒りの感情が増している。しかし、言うことはちゃんと言っておかないとな。
「殺したんは事実や、其れは否定せぇへんよ。でも前提が違うな。」
『前提?』
「そや、俺は襲われたから迎撃しただけや。無抵抗で殺される趣味は無いんでな。コッチから手ぇ出したんは1回も無いで?それがホンマかどうかは、俺をここに連れてきた奴に聞けばええやろ。森に入ってすぐ辺りからずっと監視してたみたいやし。」
『あの人の子が言っていることは事実ですか?』
振り返って、後ろに下がった案内役に確認している。恐らくあいつが嘘の報告をすることはないだろう。何となくだけど。
『ウヮフ』
『・・・そうですか。』
確認が済んだらしい。どうやら真実を伝えてくれたようだ、明らかに怒りが消え威圧感が下がった。よかったよかった。
『どうやら貴方の言葉は真実のようですね。申し訳在りませんでした。』
そう言って頭を下げてきた。自分の非をアッサリと認めるとか凄いな。
「かめへんよ、自分からでないとは言え結構な数殺したんはホンマやねんから、アンタの怒りは在る程度正当なもんや。」
俺の言葉に軽く首を横に振る。
『いえ、弱い者が強い者に倒されるのは自然の摂理。貴方の力を見誤り倒された子等は自業自得と言うもの。摂理に従った貴方に怒りを向けるのは愚かなことです。』
弱肉強食が自然の摂理。それに従った存在に怒りを向けるのは愚かなこと。それが自然と共に生きる者たちの当然の考え方なのだろう。
「ほんならその謝罪、受け取っとくわ。」
『有り難うございます。』
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『そうですか。素材の採取に森に入ったのですか。』
なにやら先ほどとは比べようもないほどフレンドリーに話しかけてくるフェンリルさん。なぜ名前が判ったかって?さっきの謝罪の後に互いに自己紹介をしたからさ。その姿を見て、なんとな~く見当をつけてたけど実際に名前を聞いたとき「あぁやっぱり」と思ってしまった事は内緒だ。
名前は〈白狼フェンリル〉と言うらしい。ちなみに♀だそうだ。ここら一帯の狼系統を率いているらしい。率いると言っても統率して何かをするとかではなく、言ってみれば相談役のような感じらしい。
「依頼にもあるし、自分でも何か作るときのために確保しとこう思てな。」
素材採取しているときに襲われたから迎撃したのだと説明する。目の前で仲間が倒されても向かってくるので大変だったとも。
「討伐依頼も受けてるけどこっちはついでやな。偶に街道に出てくるグランウルフに旅人なんかが襲われたりしたらしくてな。」
『そうなのですか。あまり森から出ないようにとは言っているのですが。』
「絶対的な命令言うわけや在らへんやろ?そら従わん奴もおるやろ。」
『確かにそうですね。我は統率していると言っても君臨しているわけではなくその役目を与えられているにすぎませんから。』
「役割を与えられてる?ってことは、アンタの上に支配者が居る言うわけか。」
初耳名ことがいろいろ出てくるな。ほかのゲームなんかだとフェンリルって狼種の頂点に君臨する神みたいな扱いが多いのに、《Diva》では違うらしい
『はい。其れがどのような存在なのかを教えることはできませんが。』
「ふ~ん。」
そりゃそうだろうな。今の話でも十分大変な謎に踏み込んだ内容だろう。これ以上は完全にこの世界の根幹に関わる事柄だろうな。冒険を進めていけばその内徐々に明かされていくような、トップシークレットと言ってもいいことだろう。
『・・・。』
「どないしたん?」
少し思考に耽っている間にフェンリルさんもなにやら考え込んでいるようだ。何となく嫌な予感がしてくるような・・・
『サイハと言いましたね?』
「それでおおてるよ。」
これは・・・
『申し訳在りませんが、1度我と戦ってくれませんか?』
「なんでやねん。」
予感的中・・・
フェンリルさん(♀)の登場です