閑話 準備は大事だよね?
ギルドへ向かう前の準備の様子です。
~ギルドに向かう前~
「早速ギルドに行こうぜ!」
「そうだな、そろそろ混雑も少しは解消されているだろうし。」
2人はそう言った。早くギルドへ向かい冒険を始めたいようだ。しかし
「あ、俺ちょっと寄りたいところ有るんやけど。早よ登録したいんやったらここでいったん別行動するか?」
「「寄りたいところ?」」
2人が見事にハモった。あ、カゲミツがそこはかとなく嫌そうな顔をした。
「おう。」
「どこ行くんだ?」
とのグランツの問いに
「工房。」
~~~~~
「は~!これがお前が貰った工房か!スゲェな!」
「確かに。これは凄いな。」
そのまま別れる事無く3人で職人街に有る特典で貰った生産工房へ向かった。そこへ着くなりのグランツの台詞だ。だが、これは確かに驚きの声を上げるのもわかる。
「貰た俺もビックリやわ。βの時も工房持てたけど、こんな規模や無かったからなぁ。」
β時代に貢献したからって、まさかこんな規模の工房を貰えるとは思わなかった。扉を開け、中へと入る。まずそこが店舗に使うらしきスペースになっていて、カウンターや飾り台などが設置されている。通りへ向かう壁はガラスのような透明なもので出来ていて、外から中の商品を有る程度確認できるようになってる。
「この状態で店も出来るんか。棚なんかもあるし至れり尽くせりやなぁ。」
カウンターの奥の扉を抜けると、そこは廊下になっており左右正面と3つの扉があった。向かって右側の扉を開けて中を確認すると、武具等を置いておく棚が付いていた。どうやらここは製品を置いておく倉庫のようだ。ここも結構な広さがある。倉庫を出て、店舗から向かって左側の扉を開けると工房が広がっていた。
「すげぇ!これぞまさしく工房!って感じだな!かっけぇ~!」
「あぁ、ここを見ていると職人が作業をしているシーンが思い浮かんでくる。」
扉を抜けて直ぐ左側に作業台。正面少し行ったところに中規模の”炉”があった。その周りに金床や水槽の様なモノなどの鍛冶に使う設備が1式揃っている。右奥には木工用らしき作業台があり、その奥にある扉の中は素材用の倉庫になっていた。すでに銅や青銅、鉄や鋼のインゴットがそれなりの数揃っており、直ぐにでも作業が出来そうだ。
「まさかここまでとは思わんかったなぁ。こりゃありがたいわ。」
そこで、ふと疑問に思ったことがあった。
「トロワ、ちょっとええかな?」
『モチロンなのですよ!』
そう言いながら、トロワが姿を現した。
「うお!なんだそりゃ!かわいいじゃねぇか!」
「解説用のAIか?」
それを見た2人が驚きの声を上げた。
「ん?専属AIのトロワや。」
『初めまして!グランツ様!カゲミツ様!私はサイハ様の専属AIで”トロワ”と命名していただきました!よろしくお願いします!』
「お・・・おう!よろしくな!」「・・・あぁ、その娘がさっき言っていた専属か。」
「そういうこっちゃ。」
『あ!現在全プレイヤー様の中で、専属が付いているのは7名になりますね!皆様キャラクタークリエイト時にAIに名前を付けてくださった方達です!でも、専属がいることによってゲームの進行に有利になるようなことは特に有りませんので!』
「俺以外にも6人もおるとは思わんかったわ。・・・6人?まさか・・・。」
『はい!おそらくサイハ様が思い浮かべた6名の方々ですよ!』
「なぁ、サイハ入れて7人って事は、もしかして”七舞衆”か?」
『その通りなのです!』
「あ~、その7人なら納得だ。女性が4人も居るしな。」
「俺も何となくなっとくや。まさかアイツ等もそんな趣味有ったとは思わんかったけど。・・・まぁその辺はええとしてちょっと質問有るんやけど。」
『モチロンです!答えることが許されていないことなどもありますが、何でも聞いてください!』
両拳を握りしめ、フンスと鼻息も荒く答えるトロワのテンションに若干驚きながら疑問に思ったことを質問した。
「お、おう。この工房って”中級”やんな?ってことは”上級”も有るって事やろ?」
『はい!その通りです!”初級”から”中級”にランクアップするにはそれなりに掛かりますが、お金が有れば出来ます。でも”中級”から”上級”にするには、お金以外にも条件があるのですがそれはお教えできません。』
「ん、そのあたりは今はええわ。これランクアップしたら広さとか変わんの?」
『はい!”上級”は今の規模の倍程度に広くなると思ってもらって構いません!』
それを聞いて「これでも十分広いのにこの倍!?なにその勝ち組感!?」とグランツが叫んだ。自分も思ったが軽くイラッと来たので、
「いきなりやかましいわ。」ドゴンッ!
と軽く、ツッコミを入れておいた。何故かピクピクしながら器用な体勢で地面とキスをしているグランツの幻が見えた気がしたが、幻なので気にしなかった。
「でもこれどうやって広げるんや?両側にはもう建物有るし。」
『あ!外観は変わらずに内装だけ広くなります!扉の内側は別の空間になってると思ってください!』
「ほほぅ。」
流石ゲームなだけはあって、そのあたりはファンタジー万歳な仕様のようだ。まぁ、増築するために両サイドの立ち退きが必要とかだとろくな事にならないもんな。
『あと生産設備ですが、今はサイハ様が取られている【鍛冶】【木工】の設備だけですが、他の生産スキルを取られると対応した設備を設置することが出来ます!追加の際にはお金が必要になりますが、長い目で見れば設備を借りるよりお得になると思います!』
「ほぅほぅ。」
工房を持たない生産職のプレイヤー達は、それぞれの生産スキルにあわせて施設を借りて生産することになる。それにはそれほど高額ではないが、借りる度にお金を払う必要がありなかなかの出費になる。しかも時間制限があるので、低レベルの生産者だとなかなか生産を試すのも大変になる。仲のいい工房持ちの生産職がいれば無料で作業場を貸して貰える可能性はあるが、そちらは当然所有者が優先になるし作業施設のランクが合わなければ使えない(例えば、”上級”持ちは”中級”も”初級”も使えるが、”初級”は”初級”まで、”中級”は”中級”までしか使えない)と言うこともあって、結局はお金を払って街にある設備を借りることになる。
「ほかの生産スキル取ってから考えるわ。聞きたいことはこれくらいやな、ありがとなトロワ。助かったわ。」
『いえしょんな!私はお仕事をしているだけなので御礼なんて要らないでしゅじょ!?』
何故か若干顔を赤くして、ワタワタしている。見事な噛みっぷりだ。ほほえましく見ていると、その視線に気が付いたのか
『しょ!しょれでわまた何かありましたらお呼びくだしゃい!』
言いながら姿を消した。最後まで噛み噛みだった。
~~~~~後半へ続く
本来サポートAIは特定のプレイヤーの専属になることは予定されていませんでした。キャラクリ時に面白がって名前を付けたプレイヤーが居たが7名と少なかったためそれぞれの専属になることが決定しました。
サポートAIには特に個性という物はなかったのですが、それぞれ名前を与えられた瞬間に個性が生まれ始め、平等なサポートが出来なくなる可能性があると判断された為でもあります。それによって、とくに有利不利は発生しません。