第13話 討伐完了!野菜って美味しいよね?的な話
モグラ討伐スタートです!
【走査】に反応したモノは全部で7つ。1つ消えて残りは6つだ。
「グランツ、足下突き刺しぃ。」
「了解だ!」
ドンッ!「グピッ!?」
足下に迫った反応に向けて、両手剣を全力で突き刺したグランツ。それで喰らったビッグモールのHPが3割ほど消えていた。やはり脳筋の両手剣の威力は恐ろしいモノがある。
「ソイツは任したで?カゲミツ、左から3番目の穴や。」
「あぁ、《フリージングブリット》!」ドンッ!
穴から飛び出した瞬間にカゲミツの放った呪文の直撃を受けて凍り付いた。それを確認し、次の呪文を開放した。
「追撃いくよ《アースナックル》!」ゴガッ!
凍り付いたビッグモールを、下から盛り上がった地面が見事なアッパーカットで空中に打ち上げた。
「トドメ行くよ《フレイムブリット》!」ボゴッ!
「・・・!」
悲鳴を上げる暇もなく、カゲミツが相手をした魔獣は見事な3連コンボにより消滅した。
「流石だな!なら俺も負けてられねぇよなぁ!」ボゴォ!
叫びながらグランツは、地面に突き刺した両手剣を釣り竿の如く振り上げた。当然突き刺されたビッグモール諸ともだ。
ブンッ!と振り上げた勢いで剣から開放されて上空に放り投げられるビッグモール。それの落下にあわせて、追撃をたたき込む。
「コイツでどうだ!《クロススラッシュ》!」ザザンッ!
落下の衝撃と併せて逃げ場のない状態でたたき込まれた攻撃により、ビッグモールは消え去った。
「おっしゃぁ!見たか!」「ふむ、こんなモノだろう。」
と、2人がサイハの方を向いてみたモノは
「これで仕舞いや。」「グキュゥ!」「グキャゥ!」
苦無付きロープで釣り上げられ、トドメを刺される2体のビッグモールだった。
「(O_O)」「・・・・・。」
「ふぅ、危なかったわ・・・って。2人ともどないしたん?特にグランツなんか旨そうな大福やと思てカジったら、食品サンプルやったみたいな顔して。」
「それはおまえ等のいたずらでそうなったんだろうが!そんなことはほっといて!なんで俺らが1体倒してる間に2体も倒してんだよ!?」
「?襲ってきたから対処しただけやん。そんなんよりまだ終わってないんやからな?気ぃ抜きなや。」
話している間に近づいていた1体が、グランツの足下から襲いかかった!
「しまっ!?」「問題ない。《フレイムブリット》!」ドンッ!「グキュ!」
「おまっ!危ないだろうが!俺に当たったらどうするんだよ!?」
「・・・?」「心底「それに何か問題が?」って顔してるんじゃねぇ!」
唱えていた呪文を迷うことなくグランツの足下に打ち込むカゲミツ。そのまま慌てて地面に逃れようとするビッグモール。しかし
「当然、逃がすわけ有らへんわなぁ。」
苦無ロープを打ち込み、逃走を阻止する。
「グランツ、トドメ任したで。」
そう言いながら、グランツの上に放り投げる。
「任せてくれ!喰らいやがれ!《ギロチンスラッシャー》!」
「グキュゥ~・・・」
最後の1匹も無事に討伐できた。どうやら、もう1つ有った反応はすでに探知圏外に逃れたようだ。これでビッグモールの討伐数は6。本当に今回だけで完了してしまった。
〈只今の経験で、Lvが1上がりました!SP2、SKP1入手しました!〉
「流石に格上の奴だな。今回の戦闘だけで8つも上がってる。」
「スキルも幾つか取得可能なの増えてるみたいだな!」
そう話していると、外が静かになったことに気が付いたのか、ラッカさんが扉の中から顔を覗かせた。
「お・・・終わったのかい?」
「無事にここに来てた6匹のビッグモールは討伐できましたわ。」
「こ・・・こんなに短時間で奴らを倒したのかい!?しかも6匹も!?」
「まぁ、旨い具合に役割分担できたしそれで何とかなったんですわ。」
「は~・・・冒険者ってのはやっぱり凄いねぇ・・・。」
まさか、冒険者が来てすぐに討伐完了するとは思っても見なかったのだろう、とても驚いている。
「自分らはこれが仕事の一つやからねぇ。俺らはラッカさん達農家の人みたいに作物育てられんし、どんな分野でも専門の人間がやるのが一番って事やね。」
「ちがいない!あたし達は作物を育てて生きてるし、あんた達は魔獣の討伐や珍しい素材の採取なんかをして生きてるんだ。あたし達が冒険者の真似事をして、無理に魔獣を討伐する必要はないんだ。」
「そう言うこっちゃ。あ、これ討伐証明部位やから確認して。」
そう言ってインベントリからビッグモールの討伐証明部位である少し色の違う爪を出して、ラッカさんに見せる。魔獣によって証明部位は違い、ビッグモールは左手の中指の爪がそれに当たる。何故かビッグモールの左手の中指の爪は他の爪に比べて3割ほど長く、色も若干赤みがかっている。この特徴を持つのはビッグモールだけなので、これが討伐証明になる。
「・・・ん!確かに6本の爪を確認したよ!依頼受領書を出しておくれ!」
「ほい。」
クエストを受けると、依頼受領書が渡される。討伐や素材採取、配達などで依頼先で仕事をする場合、仕事が終わったことを依頼主に確認してもらう必要がある。今回のように依頼先での討伐などでは、討伐している場面を依頼者に見ていてもらうか、討伐証明部位を見せて確認してもらう方法がある。それらを確認し、依頼が完了したことを納得すれば依頼受領書に確認のサインをしてくれる。それをギルドの受付に提出すれば、依頼完了として報酬をもらえると言う流れである。
「・・・よし!これであたしの出した依頼は完了だよ!改めてありがとね!こんなに短時間で解決するんなら、もっと早くに依頼出しとけば良かったよ!そうだ!ちょいと待ってておくれ!」
言うなり、こちらの返事も聞かず小屋の中に入っていった。
「元気な人だよなぁ。」
「元気に振る舞っていたが、気落ちしていたようだからそれが戻ったようでなによりだ。」
「そうなのか?来たときから元気だったじゃん。」
「・・・はぁ・・・。」
カゲミツがグランツの方を向いて、あからさまに溜息を付いた。
「なんだ「おまたせ!」バンッ!ほげぇ!」「あぁ!ごめんよ!?」
そこに再びはぜろ!とばかりに行き追いよく開かれた扉にグランツが吹っ飛ばされた。慌てて駆け寄るラッカさん。
「鉄板やなぁ。」「コントも面白いな。」
そんなシーンを、なま暖かい目で見守る2人であった。
~~~~~
吹っ飛んだ脳筋の介抱をして、ラッカさんが俺たちの前にかごを突きだしてきた。
「こんなモノしかないけど、御礼に受け取っておくれ!」
「これは、豪華な盛り合わせだ。」
それは、色とりどりの野菜の盛り合わせだった。
「ほんまにええん?」
「もちろんだよ!うちは農家で野菜しかないけどね。」
「いやいや、十分なご馳走やん。ほんならありがたく頂戴しますわ。でも畑こんな状態やから大変ちゃいますん?」
「また作り直すさ。でもビッグモールの被害を受けた場所は悪いことだけじゃないんだよ。確かに今作ってる作物は被害に遭うけど、作り直しがしやすいのさ。地面を掘り起こされて柔らかくなってるし、何故かその後植えた作物の成育がよくなるのさ!」
「へぇ、そんな事あるんだ。」
「あぁ、これからがあたし達農家の腕の見せ所さ!」
「頑張ってくれよな!」
いつの間にか復活したグランツがそばに来ていた。
「ああ!」
「ほんじゃ、そろそろおいとましよか。」
「そうだな。」「おう!」
「また来ておくれよ!リディアにもよろしく!」
「またな~!」
そうして1つ目の討伐依頼を終了させた3人はギルドへ向けて歩きだした。
はい!と言うわけでビッグモール討伐をサックリ終わらせた3人です。
ついでにおいしい野菜も貰いました。野菜の価格が高騰している昨今、羨ましい限りです。