第11話 初依頼を受けよう!・・・的な話
新年1本目の投稿です。
クエストボードの前はやはり混雑していた。俺達プレイヤーと、この世界の冒険者達が入り交じっている。
明らかに登録したての駆け出しから、熟練の雰囲気を醸し出す者達まで雑多な印象だ。あの集団の中にいくのは面倒だ、そう判断してリディアちゃんの方へ戻る。
「リディアちゃん、今手ぇあいてる?」
「今は少し落ち着きましたから大丈夫ですよ?どうかされましたか?」
「いや、俺らちょっと初依頼でも受けようかと思たんやけど、ボード前が混雑してて探すの面倒やからなんか良さげな依頼見繕ってもらお思てな。かまへんかな?」
「あぁ、今日は復帰された方や新規登録者の方が沢山いらっしゃいますからね。わかりました!種類やランクはどんな物にしますか?」
ギルドでの仕事の受け方は大まかに分けて2つ。
1つ目はクエストボードを確認して、自分が受けたいクエストを選び受付で受諾登録をすると、依頼開始となる。コレにはもう1つの選択方法があり、ボードを見なくても受付で見繕って貰うことができる。受けたいクエストの種類とランクを告げると、受付がそのパーティー(またはソロ)に合ったクエストを教えてくれる。告げられた中から選択し、受諾登録すればOKだ。もう1つは出て来たときに話そう。
「やっぱり初依頼は討伐系でドカン!と行こうぜ!折角DなんだからランクDの受けようぜ!」
「僕も討伐系がいいな。まずは攻撃魔術の確認がしたい。ランクは任せる。」
「物騒な奴らやなぁ。・・・ほんなら・・・リディアちゃん。討伐系と採取系のランクEのをいくつか見繕って。あ、それとあんまし遠出せんで済む奴でお願いするわ。」
「討伐系、採取系のランクEですね!少々お待ち下さい!」
リディアちゃんが確認に入ったのを見てグランツが、不服そうに言ってきた。
「なんでEなんだよ。折角の復帰後の初依頼なんだぜ?景気付けに派手に行こうぜ!」
「採取系も受けるのか?」
と、カゲミツも少し首を傾げている。
「おう、ランクEにしたんは最終確認やな。チュートリアルで有る程度動くんは判ってるけど、あれはタイマンやったしな。場所も見晴らしのええとこやったから奇襲とかの警戒要らんかったやろ?でも此処での戦闘は見晴らしの悪い場所とか、足場が悪かったりとか色々条件変わってくるやろ?いざその時になって、強敵相手で思た通りに動けんかったら話にならんやろ?そやから前もって確認しとくんや。採取も受けるんは、まぁこれは俺の確認が多分に有るわな。素材集めてさっさと生産に入りたいやん?」
「へぇ~。色々考えるんだなぁ。「お前と違てな。」喧しいわ!」
「了解した。僕の武器なんかも新しく作って貰いたいからな。」
そんな事を話し合っていると、クエストのピックアップが終了したリディアちゃんが話しかけてきた。
「お待たせしました!討伐系、採取系、ランクEで皆様におすすめするのはこの辺りです!」
そう言って見せてくれたのは・・・
討伐系:グランウルフ、ゴブリン、マッドラット、ホーンラビット、クロウ、ビッグモールの6つ
グランウルフはランクFでの討伐対象のウルフより1段上の強さを持つ赤茶色の体毛を持つ狼種で、常に4頭以上で行動している。
ゴブリンは定番の魔物だが、他のRPG程の雑魚ではない。常に5体程度で行動し、冒険者のパーティーの様に役割を分担している。その連携はD以上のパーティーならさほど問題なく対処できるレベルだが、EやFのパーティーには厄介なものとなる。性格は強者には臆病だが、弱者には残忍。
マッドラットは地鼠が魔物化したもので、体長70cmほどの大きさ。さほど好戦的ではないが、空腹や身の危険を感じると凶暴になり、集団で襲いかかってくる。攻撃力は低いが、素早く集団で襲いかかってくるためになかなか侮れない。その前歯に病原菌を持ち、運が悪ければ病気や毒などのバッドステータスを喰らう為、治療薬や治癒呪文も準備しておきたい相手だ。
ホーンラビットは体長60cm程度のウサギで、その名の通り額に1本の角を持っている。性格は非常に好戦的で、近くで戦っているとかなりの確率でリンクする。動きも素早く、その脚力と角を使った跳躍突進はこのランク帯の冒険者が身に着けるレザーアーマーならたやすく貫通される威力がある。ただし、其れほどの硬度を誇る角だけに素材としてはなかなか優秀で、武器や主に矢の素材として中級クラスの冒険者達までには重宝されるため、それなりの実力を持つ冒険者達にとっては美味しい魔物でもある。
クロウは真っ黒な羽毛を持つカラスで、体長は80cm程。性格はやや好戦的で、主に空からの奇襲を得意としている。光る物が好きで、宝石や貨幣などを巣に溜める習性がある。知能はそれなりに高く、倒さなくても運が良ければ巣に溜めこんでいる物を貰えたり、冒険の仲間になってくれるかもしれない。
ビッグモールはそのままモグラが大きくなり、魔物化したものだ。体長70cm程で、人を襲うことは滅多にないが畑の作物を荒し回る為、農業従事者には非常に嫌われている。性格は比較的おとなしいが、行動が行動だけに優先討伐対象となっている。主に地中を移動し、積極的に攻撃してこないため地味に戦い難い魔物でもある。その爪は、武具などの素材に活用されている。
「6種類か、これ期限はどんな感じ?」
「そうですね、ビッグモールはこれ以上農作物の被害が広がらないようにしたいですから7日以内に6体討伐になっていますね。他の5種は常時討伐対象ですので特に期限は有りません。基本はどれも10体で、それ以上だと追加報酬が出ます」
「なるほど。」
採取系:チコリ草、キリクの実、サギリ草、サギリ草の根、鉄鉱石の5つ
チコリ草はいわゆる薬草で、傷薬やポーションの素材になる。
キリクの実は抗麻痺薬の素材だ。
サギリ草は解毒薬の素材になる。
サギリ草の根も解毒薬の素材にもなるが、解熱薬の素材にもなるし逆に毒薬の素材にもなる、扱いが少々難しい素材だ。
鉄鉱石はそのまま鉄の素材。
「こちらの中ではサギリ草とサギリ草の根は是非とも受けてほしいところですね。」
と、是非にと薦める依頼があるようだ。珍しいな。俺だけではなくカゲミツもそう思ったらしく、「それはどうしてですか?」と訪ねている。
説明されたところによると、プレイヤーが居なくなってからも他の冒険者達がそれらの採取をしていたらしいが、あまり取り扱い方が良くなかったようで持ち込まれる根の大半が薬に出来ないような状態だったらしく、薬の供給が明らかに不足しているとのこと。なので積極的に根の採取をお願いしているとのこと。
「ふ~ん、了解や。サギリ草と根は受けるわ。鉄鉱石もやっとこか。あとはちょっと離れてる感じやから見つかったら事後受諾にするわ。」
「判りました。討伐依頼の方はどうしますか?」
「どないする?」
2人に聞いたら「全部受けようぜ!」とグランツ。「全部でいいんじゃないか?どれもさほど遠出しなくても良い距離に居たはずだし。」とカゲミツも同意した。
「んじゃ討伐は全部受けるわ。あ、そういえば。ビッグモールはどこのんでもええん?」
「はい。依頼受付を受理しました!ビッグモールは南門から出て街道を西に進んだ先にあるラッカさんの農場からの依頼ですのでそちらでの討伐をお願いします。」
「了解や。ほんなら行ってくるわ。」
「はい!がんばってきてくださいね~!」
と、リディアちゃんが笑顔で手を振りながら送り出してくれた。
「さてと、持ちもんの確認出来てるし早速行こか。」
「ああ。」「おっしゃ!初依頼だ!狩りまくるぜ~!」
ギルドを出て、持ち物を確認した3人は、早速依頼を達成するべく南門へ向かった。先ずは、期限のあるラッカさんの農場でビッグモール討伐だ。
期待していた脳筋同士の大立ち回りもなく淡々と話が進んでいく!