第10話 俺達の冒険はこれからだ!・・・的な話
ギルドでおっさんに絡まれた飛鳥達。果たして無事なのか!相手のおっさんが!
「おかしいじゃねぇか。お前等がどこの誰様かは知らねぇが、なんで登録した時点でランクDから始まるんだよ。俺でさえFからのスタートだったのによぉ。」
ボサボサ赤髪のおっさんがそんなことを言ってきた。まぁ自分はFから始めてるのに見た目大したことなさそうな若造が2つも上のDから始まると聞けば納得できないんだろう。
「さっき、この娘が言ってたの聞いてなかったのか?この国の王様がそう言う触れを出したって。文句があるなら王様に言ってくれよ。」
おお、うちの脳筋(親友)が正論吐いてる!明日は嵐か!?
(・・・なんか今バカにされたような気が・・・。)
気にするな(きっと)気のせいだ。
「なんだと?てめぇみてぇなヤツが俺より上だとでも言いてぇのか?2年前まで活躍してたかどうか知らねぇが、そんなひょろいヤツがランクDの依頼をこなせるわけがねぇ!」
「なぁリディアちゃん。この2年の間になんや変わった事とかオモロイ事とかあった?」
・・・見ず知らずのおっさんにそんな事言われる筋合いはねぇな!・・・
「え・・・あ・・・はい、そうですねぇ。2年前に皆様クラスの冒険者の方々が姿を消してから、魔獣の被害が増えたりしましたね。」
・・・んだと!おもしれぇ事言うじゃねぇか。ならてめぇの力試してやるよ!表に出やがれ!・・・
「ん?でも俺らが来えへん様になっても他にも冒険者居ったやろ?其れで問題増えたん?」
・・・上等だ!おっさんこそ後悔すんなよ!・・・
「他の冒険者の方々も尽力されては居たんですが・・・上位ランクの皆様が居なくなったので、ハイクラスの魔獣等の討伐が進まなくなってしまったんですよ。ランクSを持つ冒険者様はまだ世界全体を見ても、5人も居ませんし。」
・・・はっ!てめぇこそしっかりと教育してやるよ!・・・
「ふむ。・・・他には何かあるかい?」
・・・おい・・・
「後は素材の供給不足により様々な品物の品質が若干下がったりしていますね。良い素材のとれる場所にはハイクラスの魔獣の生息エリアが多くあるので。」
・・・こら・・・お前等・・・
「そこにも僕たちが居なくなった弊害が出ているという事か。まぁかつての冒険者達が戻ってきたからすぐに改善されるだろう。」
・・・お前等!・・・
「そう願います。私個人では、皆様がいらした時に販売されていた様々な料理を食べられなくなったのが非常に、ひじょ~に!残念です。」
・・・プルプル・・・
「まぁまた誰かが売り出し始めるやろ。皆、探求心旺盛やから。」
・・・お前等!無視するんじゃねぇ~!」
「とても楽しみです!・・・きゃぁ!」
いきなりグランツが叫びだした。ほら、お前のせいでリディアちゃんや他の人が吃驚してるじゃないか。
「俺にこのおっさんの相手押し付けて、ナニ和やかに談笑してやがるんでしょうか!?」
「情報収集だ。ただ談笑していたわけじゃない。」
「せやで。それに類友(脳筋)同士なんやウマが合いそうやったからな。んで?話終わったか?」
「類友ってなんだよ!類友って!」
「読んで字の如くやん。」
「似た者同士とも言うな。」
その俺達のやり取りを唖然とした表情で見ている赤髪のおっさん。
「ほんで?表に出て勝負でもするんとちゃうんか?はよ終わらせて来ぃや。」
「ちゃんと聞こえてたんじゃねぇか!だいた「細かいことをグダグダと・・・。いい加減にしないと・・・モギるよ?」ゴメンナサイ!」
「あ~、なんだ・・・。お前も大変そうだな・・・。」
カゲミツの言葉を聞いて若干顔をヒキツらせながら、おっさんがグランツの方を向いて言い放った。同情を瞳に浮かべて。
「ヤメテ!ソンナメデミナイデ!」
少し壊れ気味のグランツとそれをなま暖かい目で見つめるサイハ、カゲミツであった。
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「そうか、アンタたちが2年前に姿を消したっていう冒険者達か。俺はガラド、登録して1年ちょっとの戦士だ。よろしくな!それと絡んじまって悪かったな。」
おっさん改めガラドは見た目よりも結構気さくなおっさんだった。今日は朝からギルドに見たこともない奴が大挙して押し寄せ、そのどれもがEやDからスタートと聞いて不満に思っていたらしく、其れが遂に俺達の番で爆発したらしい。今は少しバツが悪そうに頬をポリポリと掻いている。
「まぁ気にしなや。確かに見た目アンタの方が強そうやからな、しゃ~ないやろ。それに俺らは2年のブランク有るし。」
そう言うとあからさまにホッとした表情になるおっさん。まぁ下手をしたら王の命令に異議を唱えたようになるからな。
「それはそうと・・・。」
ちらっと後ろを見ると未だにブツブツ呟くグランツの姿。いい加減うっとうしくなってきたな。カゲミツと視線を交わすと、頷き合った。
「いい加減に戻ってこい。」ゴスッ!「ブツブツ・・・んがっ!俺はどこ!?ここは「ベタなネタはもうええ。」ガスッ!おぶっ!痛ぇよ!コンチクショウ!」
「ほ・・・程々にしといてやれよ?」
グランツに助けを出すおっさん。その顔は見事にヒキツっていた。さっきまで一触即発状態だったのに、同情が上回ったようだ。
「まぁこいつはこれが日常やから気にせんとって。改めて自己紹介しよか。俺はサイハ。さっきおっちゃんが言うてた通り、2年前まで主にこの街で活動してた冒険者や。まぁ言うても戦闘系やなく生産系やけどな。」
「僕はカゲミツ。同じく2年前に活動していた冒険者だ。主に魔術を探求している。そしてコレが・・・。」
と後ろを指さした。
「コレ言うな!俺はグランツ!見ての通りの「脳筋だ。」そうそうって誰がだ!両手剣使いだ!よろしくな!おっさん!」
「・・・強く生きろよ・・・。」
「ヤメテ!「もうええ。」了解しました!」
「ふふっ!仲がいいのですね!それが”マンザイ”ですか?」
「そうや。」「そうだ。」「いや!違うよね!?俺がイジられてるだけだよね!?」
「そんなことより、再登録も済んだ事やしなんか依頼受けよか。」
「そうだな」「またスルー!?まぁいいや、賛成~!討伐系受けようぜ!」
「ほんならボード確認しよか。あ、おっちゃんまたな。」
「あぁまたな、何かあったら相談に乗るぜ。」
「そん時は頼むわ。」
そう言っておっさんは仲間らしきグループに戻っていった。俺達は立ち上がり依頼ボードへ向かう。
ついに・・・ついに!冒険の第1歩を踏み出そうとしていた!
第10話お届けします。
本当は25日にクリスマス話を書こうと思ったのですが、全く思いつけなかったので通常話にしました。