皇太子殿下の従者の苦悩
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未来の子供達のお話です。
まず第一弾、皇太子殿下ナーブルの従者視点より。
私が御仕えするのは、皇太子殿下であらせられるナーブル様。
見目麗しく、色彩は父君に似て髪の毛はオレンジが強い金髪で瞳はとても澄んだ蒼、母君である皇后様にとても似ていらっしゃるナーブル様は国民の人気も高く、特に女性のファンも多い。
微笑みは皇后様にそっくりで可愛らしく、また魔力もとても素晴らしく武術も幼いながらもぬきんでている。
だが、教育係に腹黒・・・とても知力に長けたルーカス宰相がついてしまったせいか、とてもイタズラ好きになられてしまった。
いや・・・子供なのだからこれが普通かもしれない。
だが、明らかに人が困った顔をするのがお好きな性格なのだ。
「どうしたの?フィルエル?」
そう声をかけられるのは、淡い蒼いドレスに身を包んだ皇后様そっくりの黒髪の幼女。
フィルエルの足にしがみ付き小首をかしげる姿は可愛いの一言に尽きる。
だがしかし、この幼女は皇太子殿下ナーブルだった。
「殿下・・・何故そのような格好をなされてるのですか?」
勉強の時間のため、迎えに来たフィルエルはナーブルの私室の扉の前で固まった。
「これ?可愛いでしょ?母上とおそろいなんだよ!」
きゃっきゃっと笑う姿は本当に可愛い。
そして髪の毛の色も瞳の色も、魔術で皇后ナミ様と同じ色彩にされてるせいで余計可愛さが倍増である。
「殿下。ドレスは女性がきるものであって、男性であらせられる殿下が着る者ではありません。」
そう諭すもナーブル様は不思議そうに見上げて言った。
「どうして?似合うのに着ちゃ駄目なの?みんな、可愛いっていってくれるよ?フィルエルは可愛いっていってくれないの?」
うるうるとした瞳で見つめられフィルエルはたじろいだ。
だが、ここで屈すればこの後はきっと陛下の執務室に行って陛下を困らせるに決まっている。
こういうことをするときは決まって皇后様と陛下が喧嘩なされたときなので、ナーブル様は皇后様の味方につき嫌がらせをしにいくのだ。
そして、それを止められなかった俺に陛下からチクチクと言われる。
「殿下、男が可愛いといわれて喜んではいけません。」
「どうして?」
可愛らしく小首をかしげる姿に、ほお擦りしたくなる衝動をおさえ、フィルエルは立ったまま見下ろす形で言った。
ここで目線を合わせてしゃがもうものなら、フィルエルに勝ち目が無いからだ。
「かっこいいならまだしも、可愛いと言われて喜ぶのは女性だけです。なよなよしい男は女性から嫌われますよ。」
「ぼく、皆が大好きっていってくれるよ?フィルエルより僕もてるもん!皆可愛いっていって抱っこしてくれるしチューもしてくれるもん」
このくっ・・・・いかん!大切な皇太子殿下だ、それにまだ子供!落ち着け俺!!
そう心の中で叫びながら、フィルエルは深呼吸一つしてから言った。
「今は良いかもしれませんが、大人になって後悔されるのは皇子ですよ。それこそ黒歴史の一つになりかねません。ですからおやめください。」
「黒歴史ってなぁに?」
「無かった事にしたい過去、無かった事にされた過去という意味です。」
「ふーん。パパに見せてくるー」
話に飽きたのか、ナーブルはフィルエルの足から離れて駆け出そうとするのをフィルエルは慌てて止めた。
「駄目です!!そのような格好で歩かれてはなりませんと、申し上げているんです!!」
じたばたと暴れるナーブルをフィルエルは抱え込んで止めた。
「前も歩いたもん!!」
頬をぷっくり膨らまして抗議する姿は可愛い。
だが、そんな姿に騙されるわけにはいかないのだ。
「前回は阻止出来なかっただけです!!陛下に叱られますよ!!」
「ママは喜んでくれたもん!!はなせー!!ママー!!」
ジタバタ暴れる皇子を抑えながら部屋に戻そうとすると後ろから声がかかった。
「なぁに?ナーブル」
振り返れば、皇后様が微笑まれながら立っていた。
「皇后様!!」
思わず手の力が緩んでしまうと、その間にナーブルはフィルエルの腕から抜け出し母親である皇后ナミの元に走り寄った。
ナーブルに仕えているといってもフィルエルの身分では直接皇后様と面と向って会話が許されていないため、急いで顔を下げた。
「ママ!!フィルエルが苛めます!!」
えーんと泣きながらナーブルは皇后に抱きついた。
抗議をしたい気持ちを押さえつけながらフィエルは冷や汗をかいた。
「あらあら、フィエルは苛めているのではなくて注意しているのよ。」
皇后様の言葉にホッとしながら、フィルエルは重要な事を忘れていた。
そもそも、皇太子殿下であるナーブルが女装する原因を。
「今度は見つからないようにパパのところに行きましょうね?」
その言葉にフィルエルはおもわず顔を上げてしまった。
「皇后様?!」
その声に、皇后様は驚きながらも次にはいたずらっ子のする笑みを返して歩き始めた。
「お、お待ちください!!皇后様!!皇子であるナーブル様にそのようなお姿は!!」
皇后様の戦闘侍女に行く手を阻まれながらフィルエルはなんとか止めようと声をかけると、皇后様は振り返った。
「似合うでしょ?」
まるで母と娘にしか見えない姿は、確かに可愛らしく思わず頷いてしまったフィルエルが、はっとしたときにはすでに先を歩かれていた。
「皇后様!!!私が陛下に叱られるのです!!おやめください!!」
バタバタと追いかけるフィルエルは、今日も愛くるしい皇子と皇后様を止める事ができなかった。
***
仕事がひと段落して休憩していると可愛らしい幼女が執務室に入ってきた。
「ぱぱー!!」
「?!ナーブル!!お前はまた女の子の服を着て!!」
「かわいい?ママとおそろいなのぉ!」
愛妻と同じ色彩に染めてしまうと、顔立ちがもともとそっくりなためもう娘にしか見えない息子に、可愛すぎてつい甘やかしてしまい、跡取りである息子の将来が心配になりつつもいつも強く注意できない事に苦悩するのはパパである皇帝ラルクであった。
ナーブルはよじよじと膝の上に上ると、可愛らしい顔と仕草で上目遣いで言った。
「ぱぱーだーいすき!!パパのおよめさんになれる?」
「ナ、ナーブル!お前は男な「パパはぼくのこと嫌いなの?」
愛妻を幼くした顔でうるうると瞳を潤ませた息子に、皇帝は叱ろうとしていた勢いを殺がれ思わず叫んだのは違う事。
「フィルエル!!なんで止めなかった!!」
「無理です!!陛下!!」