シルフィの愛する姉観察日記
短いです。
某月某日。ギルお兄様と一緒に、ウィルフィリアお姉様が屋敷へ戻っていらした。初めてお会いしたお姉様。お姉様の髪の色は、私たちのソレと同じで、瞳の色は分からないが、恐らく同じだと想う。
ただ、今はそんなこと想っている余裕は無い。お姉様がご病気だということはお兄様たちから伺っていたのだが、ここまでひどいとは思っていなかった。
弱々しい呼吸と、少し青白く感じる顔色。本当に、大丈夫なのか。心配になるくらい、今のお姉様は、見ているだけで、私まで辛くなりそうだった。
そんな中、私はお姉様の今までの境遇等を話され、絶対に無理はさせないように、と命じられた。
むう、分かっていますよ! 私だって、初めてお会いするお姉様に嫌われたくはありません。
………まぁ、確かに小さい頃は、ギルお兄様にたくさん迷惑をかけていたようですが、今はもうかけません! だから、お姉様にも淑女らしく接します!
そう、決意を新たにして、お姉様がお起きになられるのを待っていたのだが、お姉様は、お姉様ではなかった。お姉様は、あくまでも自分は庶民だと言い張り、姉だとは認めてくれなかった。
お姉様は、確かにシルフィのお姉様なのに。それなのに、認めてもらえなかった。それが悲しくて、その日、部屋に引きこもってひっそり泣いていたのは、私とメイドたちの秘密である。
ただし、後日、お兄様たちには知られた。ので、お父様たちには黙っていてもらえるよう、懇願した。
うう、お姉様、お願いですから、シルフィを受け入れてください。私は、ずっとお姉様に会える日を楽しみに待っていたんです。
だから、だから。
シルフィを、拒絶しないでください。
シルフィの、愛するお姉様。
大好きです。私の、私の大事なお姉様。
やっと、戻ってきてくださった。やっと、やっと。
お姉様。お姉様。お姉様。
狂ったように何度もお姉様と呼んでも、お姉様は私たちを拒絶するようなお言葉しか発せられない。
どれだけお姉様を欲しても、お姉様は、それに気づいてくださらない。
お姉様。
愛してます。だから。
だから、私たちを受け入れてください。
お姉様が帰ってこられて、部屋でこっそりと泣く回数が増えた。
メイドたちの手伝いを断ったお風呂の中で。ベッドで一人、声を殺して。
何度も。何度も。
どれだけ泣いても、お姉様は私たちを受け入れようともしてくださらない。
どうすれば、受け入れてもらえるのだろう。
どうすれば、お姉様に甘えても大丈夫になるのだろう。
教えてください、お姉様。
何が、お姉様をそんなに頑固にさせるのですか?
何が、お姉様に現実を認めさせないのですか?
―――お姉様は、正真正銘、このアルガディア大公爵家の人間なのに。
今日も、お姉様に会いに行く。
今日も、掠れるほどにお姉様を呼ぶ。
お姉様が、私たちを受け入れてくださるまで、ずっと。
お姉様、愛しています。
シルフィは、ウィルフィリアお姉様を、心から。
―――――――愛して、います。
もちろん、シルフィの愛は百合です!!
はい、嘘です。純粋な家族愛ですよ、うん。