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戦場の奇跡  作者:
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18/41

採寸と対峙

 王都を少し散策して家に戻ると、いつの間に連絡が行ったのか、シャーリット様がメイドさんと一緒にニコニコ微笑みながら、メジャーを持って待っていた。

 あの、シャーリット様、メイドさんたち? 何でそんなにニコニコと微笑んでいらっしゃるのです? その手にあるメジャーが、何となく恐怖を誘うんですが、気のせいですか?


「お帰りなさい、ウィルフィリア、シルフィ、ギル。さ、二人はこっちへいらっしゃい。新しいドレスを作るんでしょう? 採寸しなくっちゃね、ほら、きっちり測って可愛いドレスを作りましょうね」

「いえ、あの………」

「そうですね。お母様、もう採寸の準備は出来ているのでしょう?」

「もちろんよ」


 ちょ、なんかきっちり根回しされてる! シルフィ様、何でこのシャーリット様とメイドさんたちを見て、にこやかに反応できるの!?


「さ、行きましょうね、ウィルフィリア、シルフィ」

「そうですね。お姉様、参りましょう」


 シルフィ様、手をしっかりと掴んで引き摺らないでください! シャーリット様、いろんな意味で幸せそうな笑みを浮かべないでください!

 シャーリット様、その笑顔が怖いんですよぅ! 怖いですから! ほんっとうに、怖いんですよ!


「怖がらなくていいのよ、ウィルフィリア。じっとしてればすぐに採寸は終わるわ」

「いえ、そうではなく……」


 怖いのは採寸ではなく、シャーリット様、あなたご自身です。


「さあ、お二人とも脱いでくださいね」

「え、いや、ちょっと待って……」


 ちょっと待ってください。最後まで言い切れず、抵抗も許されずにシャーリット様に着ていた服を脱がされ、下着姿にされてしまった。……は、恥ずかしい。


「恥ずかしがる必要はありませんよ。私も同じです」

「シ、シルフィ様……」

「お・ね・え・さ・ま?」

「シルフィ」

「それでいいのです」


 先生! 先生がここにいます!! 厳しい教師がここにいますよぉ!!


「さあ、ウィルフィリア様、シルフィ様、サイズをお測りしましょうね」


 って、メイドさんたち! そんな場所触らないでください! あ、ちょ、セクハラでしょうそれ!


「動かないでください。正確に測れませんから」

「いや、でもっ!」

「いいから動かないでくださいね。奥様、申し訳ございませんが、ウィルフィリア様が動けないよう、押さえていただけますか?」

「あら、いいわよ。ウィルフィリア、動いちゃダメよ?」

「シャーリット様!」

「お母様」

「うっ! お、お母様……」


 うう、シャーリット様、押さえないでください! ちょ、手が胸に触れてます! また、またですか、これええぇぇぇぇえ!!


「動いちゃダメよー?」

「お、お母様! 手! 手が!!」

「手がどうかした?」

「手が、胸に行ってます! お願いですからやめてくださいいいぃ!」

「いーや。こういうときに娘の成長を見なくてどうするの」

「お願いですから離してくださいー!」


 うわあん、シャーリット様、胸揉んでますから! 女同士って言っても、これはちょっと、セクハラの域ですからっ!


「お姉様のほうはまだ終わらないんですね」

「あら、シルフィ。もう終わったの?」

「はい、何の滞りもなく。お姉様は、苦労してらっしゃいますね」

「ウィルフィリアは動いちゃうからね。シルフィも手伝って」


 んげ! シルフィ様まで私を押さえる人間にっ! も、もう早く終わらせる方法を選んでやる! 必死で、耐え抜く!!


「あら、急に動かなくなったわね」

「こちらとしては測りやすくていいですね。ウィルフィリア様、このままジッとしていてくださいね」


 が、頑張ります!!



「お疲れ様でした。オルシュを用意しましたよ、どうぞ」


 採寸が終わってリビングのソファーに埋もれていると、メイドさんがそう言ってテーブルにオルシュを置いた。オルの果実をミルクで割ったオルシュは、オルガと並んで子供向けなのだが、うん、子供扱いだよね。まぁ、事実未成年だからそれでいいのか?

 ………結論付ける、美味しいからそれでよし。オルシュは癒される感じがするなー。


「それにしても、ウィルフィリアは痩せすぎね。もう少し食べなさい」

「いえ、あれで限界です」

「ダメよ。もう少し食べなくちゃ、病気も善くならないわ」

「十分食べてますから。ここのご飯、美味しいですし」


 だから、それ以上に食べるように言わないでもらえますか? 今、十分に食べてますから。この家の食事、病院のご飯と比べるとよっぽど美味しいから、そのときよりはかなりいっぱい食べてますよ?

 ついでだから言いますが、ここに来て、体重も増えましたよ? ……まあ、食っちゃ寝の生活だったしね。病院いるころから、立派に食べて寝ての生活だったんだしさ。おかげで筋力も落ちたけどね。


「あれでは食べてるとは言わないわ。ねぇ、シルフィ?」

「そうですよ。もっと食べなきゃ、元気になれません!」

「いえ、食べてますから」


 ホント十分に食べてますから、これ以上食べさせようとしないでください。とりあえず今は、オルシュ美味しい。んまんま。


「お? ウィルフィリア、シルフィ、それ、何だ? オルガ……にしては白いな。オルシュか?」

「ギルお兄様! ふふ、内緒です。当ててみてください」

「うーん、ま、オルシュだろうな」

「随分あっさりと当てられてしまいましたね、シルフィ?」

「お姉様、敬語!」

「ああ、そうだったそうだった。これでいいです?」

「だから、敬語はやめてください!」


 ああ、やっぱりどこかで敬語になってしまいますね。シルフィ様、少しくらいは容赦してくださいね。


「俺にはオルトをもらえるか?」

「はい、少々お待ちください」


 そう思っていると、いつの間にかギル様がメイドさんにオルトを、水で割ったオルの果実ジュースを、オルトを頼んでいた。


「ウィルフィリア様、シルフィ様もお代わりは如何ですか?」

「あ、欲しい!」

「はい、少々お待ちください、シルフィ様。ウィルフィリア様は如何ですか?」

「あ、まだあるからいい……」


 ですと、続けて敬語にはしない。敬語にしたら、その瞬間にメイドさんたちの誰か、若しくは、シルフィ様、ギル様、シャーリット様からの注意が走る。


「せめて、もう一杯くらいお飲みください。そのくらいの栄養をおとりになられてください」

「いや、でもこれ以上飲んだら、ご飯食べられなさそうだし」

「このくらいでしたら大丈夫ですよ。そう仰るのでしたら、飲まれた後、シルフィ様と一緒にお散歩でもしていらしたら如何です?」

「そうしましょう!」


 うぉぅ! シルフィ様の反応が怖い!! シルフィ様が乗り気すぎる!!


「そうしましょうお姉様! 是非、お散歩をしてお腹を空かせましょう!」

「いえ、そのくらいなら……」


 飲まなくてもいいんですが……。って、メイドさん、いつの間に私のカップにオルトを追加してるんですか!! 飲みませんよ!? いやだから、飲みませんってば!


「飲んでくださいね」

「飲みなさいね」

「飲むんだよ、ウィルフィリア?」


 え!? ちょ、何でメイドさんのみならず、シャーリット様とギル様も!?


「ほら、飲みなさい」


 ちょ、目の前で飲めと言わんばかりのその目はやめてください!

 ……………はい、勝てません。渋々ながら、カップに入れられたオルトを一気に口に含み、飲み込んだ。

 うえ、お腹いっぱい。

どこからどう見ても

セクハラなお話でした。


母、独走。


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